第37話 「童心に帰りたい」

*二度目の恋 君に逢いたくて…第37話


-翌日-


ルビーの電話で心に疑問が生じ、眠れない夜を過ごしたこのみ。
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いや、ルビーの電話のせいではない、
それは監督と亮の話を立ち聞きしたあの日からすでに感じていた事だ。



このままでいいのだろうか。このまま亮と何事もなかったように結婚をし、
それで二人は幸せになれるのだろうか。
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あんなバカげた話は到底受け入れられないとは言え、
それでもルビーを犠牲にしてしまうと感じるのは拭いきれない。



だが、何もかも麗華の思い通りになるような事には絶対にしたくない。
したくないけれど……事はもう動いているように思える。
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何故なら、すでに亮との結婚を素直に喜べない自分がいる。
そしてある考えばかりが頭をよぎる。



私がこのまま……そう、一番いいのはこのまま私が諦めれば……
夕べと同じように、その事ばかりが頭に何度もよぎり、このみは目をギュッと閉じた。
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やがて彼女はそれを振り払うかのように大きく息を吸い、
携帯電話の短縮ボタンを押した。



「こんにちわ…このみです…」
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「よう♪ デートの誘い?それならすぐにでもOKだけど?」



「いえ…あの…亮さん…私、ルビーちゃんの所へ行きたいんですけど…時間あります?
よければ一緒に行ってもらえないかと思って…」
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「実は俺も君を誘おうと思ってた。向こうに行く前に一度、会いに行こうか?」
「分かった、じゃ週末にでも迎えに行く」



「ところで、引越しの準備は出来た?」
「そっか、じゃ後は行くだけだな…」
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「はい…後は行くだけです…」
「ええ…じゃその時に…」



カチ…
亮もこのみと同様、眠れない夜を過ごしていた。
だが、亮はこのみと別れようとは夢にも思ってはいない。
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亮の頭には麗華と結婚すると言う考えはみじんたりともないのだ。
むしろあんな残酷な話で監督を期待させたのかと思うと、麗華には心底腹が立つ。



そして自分にも腹が立っていた。
どうして麗華と関係を持ってしまったのか。
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元はと言えば、自分が麗華と関係を持ってしまった事から生じた事だ。
あんな冷酷極まりない女性と関係を持った自分が許せない。



もちろん、あの時の自分は淋しかったとか、どうかしてたとか、
そんな事が理由にならないのも分かっている。
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どんな理由があるにしろ、麗華の本質はすぐに気づいていたのだから…



亮は気持ちを切り替え、やらなければならない事に意識を集中した。
だが、それでもすべての心配事を心から追い払う事などはできやしない。
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そのせいだろうか、彼は重要な事を見逃していた。
そう、このみの心の不安を彼は見逃していたのだ。



彼女の沈みがちな声、会話中のため息、それらを亮は見逃していた。
そんな事は彼らしくない、普段の彼ならすぐに気づいたはずだ。
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悲しいかな…残念な事に、今の彼はそこまでは気が回らなかった…。


-アパート-


「あはははは!くだらないな~(笑)」
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「………」



「シルヴァー…仕事、まだ見つからないの?」
「あ…ああ…まだなんだ…ごめん…」
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「家は?家もまだ?」
「そうなんだ。中々いい物件が見つからないんだ。
時期が悪いのかも知れない。お前には迷惑ばかりかけて悪いと思ってる」



「いいけどさ…」
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彼女は日増しに我が物顔でソファーにくつろぐシルヴァーを見てイライラしていた。
もう同じ家の中にいるのさえ息がつまる。そろそろいい加減にして欲しい。



これじゃあ一緒に暮らしていた頃と何も変わらないじゃないか。
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あの、後悔しか残らなかった苦痛の日々と一緒だ…。
私はまたバカな事をしてしまったのだろうか。



とは言え…すでに受け入れてしまった事だ。いまシルヴァーを追い出せば、
彼は怒り狂って私を罵倒するだろう。あの頃と同じように。
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ローリーは彼の内面のモロさも知っていたが、同時に凶暴性も知っていた。
それを知っていたのに、つい情にほだされて甘い顔を見せてしまったのだ。



ああ…やはり私はどうしようもないバカだ…。
今はせめて、早く彼が仕事をみつけ、家を出て行ってくれるのを祈るばかりだ。
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なんだか何もかもがうまく行かない…



すべてにイラつき、仕事もやる気が起きなければ絵にも意欲が湧かない。
挙句の果て、生きていくのさえかったるくなる。
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ローリーは一刻も早くこの状況を脱出したかった。
だがそう思えば思うほど、気持ばかりがアセってイラつくの堂々巡りだ。



そして気がつけば、いつもゴルゴの事を考えている。
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あの時、シルヴァーと一緒に住んでると言った時のゴルゴの顔が
少しだけ曇ったのは気のせいだっただろうか…。



彼の唇が一瞬ゆがみ、瞳に小さな炎を見たような気がした。
それはまるで嫉妬しているようにも見えた。
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あいつが嫉妬を…?まさか…
ローリーはその事ばかりを考えてしまうのだ。



酔った勢いでベットに転がり込んだ二人だけれど、
あの夜の熱く、我を忘れて情熱に身を任せた夜は素晴らしく最高だった。
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けれどあれが……あれが間違いの元だった。
あの夜があんなに最高でなければよかったのに…。



なまいきで、小憎らしい口とは裏腹な優しい愛撫。
自分の胸を愛しむようにすっぽりと包んでくれた大きな手。
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私がクライマックスに達する時の顔を、勝ち誇ったように見てたっけ…。
そしてその後、彼は嬉しそうに笑って私の胸に鼻をこすりつけて来た…。



ああ…あの時の子犬のような彼を忘れらない…。
あの…大好きなおやつを前に、嬉しそうに走って来るような子犬のような目…。
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あいつは守ってあげたくなるような…変な母性本能をくすぐられる…。



だけどいくらそう思っても、あいつはあの日、沙織とデートだと言った。
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シルヴァーとの事で、もしゴルゴが多少の嫉妬を感じたとしたらそれは、
一回でもベットを共にした相手への独占力からに過ぎないだろう。



それに、こんな私があいつとなんて…絶対に無理な事なんだし…
もうこれ以上、考えるのはやめなければ…やめなければならないのに…
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(まいったな…)


カタ…


「ローリーさん…」
「沙織…」
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「あの…ちょっといいですか?」
「うん…なに?」



「突然すみません…。
あの…ローリーさんにちょっとその…お尋ねしたい事がありまして…」
「尋ねたいこと?」
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「ええ…」
「なによ?」



「はい…。ローリーさんはその…今…お慕いしている男性などはその…」
「は?お慕いって…惚れてる男がいるかどうかって事?」
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「た、例えばシルヴァーさんとか…だ、だって一緒に暮らしているし、
それに以前は恋人同士だったとおっしゃっていたし…」



「沙織…」
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「だからそれはこの間も言ったけど…私とあいつはとっくに終わってるよ。
今は男と女の関係なんかじゃないし、これからもなろうとも思わない」



「そうですか…」
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私は彼女に何を言いに来たのだろう?何を聞きに来たのだろう?
沙織は自分にそう問いかけていた。



ゴルゴからあれから電話はない。もちろん、自分でもないだろうとは思っていたが…。
しかしそれでも、沙織は毎日電話の前でゴルゴからの連絡を待っていた。
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そして時間が経つにつれ、ある一つの疑問が浮かんで来たのだ。
それはあの日、ゴルゴが私とデートだと言った時のローリーの瞳だ。



ローリーの瞳に一瞬だけ悲しげな表情がよぎった事を思い出したのだ。
それはほんの一瞬の事だったが、確かにローリーは瞳を曇らせた。
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やがて二人の間に数秒、かすかに切ない時が流れたように感じた。
お互いを探るような瞳。二人にしか分からない空間。



あれは……あれはなんだっだのだろう…。
ゴルゴに気を取られてばかりいて、その事を頭の片隅に追いやっていた。
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だが、沙織はそれが一番肝心な事だと気づいたのだ。
だからそれを私はどうしても確かめたかった…。



私は、ローリーが彼に惹かれていないなどと、どうして決めつけてしまったのだろう。
もし…彼女も彼に惹かれているとしたら…?その事が頭から離れない。
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もしそうならば、私は完璧にスピンアウトだ。
そしてそうなったら私の恋は終わってしまう…。



あのがっしりとした固い胸も、からかうような茶目っ気たっぷりの瞳も、
永遠に私のものにはならない…。
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永遠に…



「座ったら?座ればいいじゃん」
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「あ…はい…」



「この間のデート…楽しかった?」
「え…」
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「あの日、ゴルゴとデートだったんだろ?」
「え、ええ…楽しかったです…」



「そっか…」
「ゴ、ゴルゴさんが面白い事ばかり言って笑わせてくれて…とても楽しかったです…」
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「よかったじゃん」
「ええ…」



「………」
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「彼が…」



「彼がまた会おうって言ってくれたんです…。また私と会いたいと…」
「ゴル…ゴが…?」
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「私……」



「彼にならすべてをあげてもいいと思っています。
いずれ近いうちに………身も心もすべてを彼にあげたいと…」
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「彼もそれを望んでいるようなので…私はなんの迷いもありません。だって私は…」



「彼を愛していますから」
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「それに、彼も私の事を…」



一瞬、ローリーは言葉が出なかった。
愛してる?彼もそれを望んでいる?
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ゴルゴが沙織に言ったの?愛してると?彼女を抱きたいと?
そう思ったとたん、ローリーの胃がよじれたようにギュッとなった。



そうか…あいつなら言うかも知れない。どうせチャラ男だ!あいつなら言うだろう。
それに、もしかしたら沙織との事を真剣に考えているのかも知れない。
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結婚と言う形を…。
彼にとって沙織と結婚する事は、プラスになれどマイナスになる事はないのだから。



だけどアイツが沙織を抱くなんて…
そして私の胸も愛でたように、彼女の胸も愛でるのだろうか…
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ああ…ムカツク…ああ…腹が立つ…ああ…あいつを殴りたい!



「ラ…ラブラブっすね…」
ローリーはそう言いながら、からかうように高い声を出した。
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だが実のところ、声が裏返っていないだろうか?顔はしかめっ面をしていないだろうか?
それだけが気になって仕方がなかった。



どうやら最近のアパートの住人はそれぞれが悩み事の真っ只中だ。
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これが青春と言えばそれまでだが、
けれど青春とは、決して楽なものではないと改めて思う。



そしてここにも一人…
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悶々と悩んでいる青年が…



鈴之介はあの夜のさせ子との一夜の事をいまだに考えていた。
あの時の事を考えると、今でも顔から火が出るほど恥ずかしい。
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だがその一方で、女性からあんな風に求められた事に、
自分にも魅力があったのかと自信のようなものがふつふつと沸いて来ていた。



彼女と連絡を取って誘って見ようか。
今度はあんな場所ではなく、もっと健全な場所でデートでもしてみようか。
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そんな事ばかりが頭の中でぐるぐると回っていた。



だが残念な事に、電話に手を伸ばそうとしても体が動かなかった。
何故なら、自分を求める相手がさせ子ではなく、沙織だったらと…
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そう思わずにはいられなかったからだ。
こんな風に、ちっとも沙織の姿が頭から出て行かない。



ふと思いをはせると、沙織のはにかんだ笑顔ばかりがチラつく。
そしてさせ子のように、もし沙織があんな風な悩ましげな姿で現れたらと…
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そう思うと…



あ~ら不思議…
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何故かさせ子の顔が沙織の顔へ取ってかわる(笑)
そして鈴之介は足と足の間が熱くなり、いつものように鼻血となって情熱が溢れ出す。



「はっ!」
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ああ…またやってしまった…。
僕はどうしてしまったのだろう…。これでは単なる獣だ…(訂正←変態野郎だ)



ああ…僕は本当にどうにかなってしまいそうだ…
こんな事ではいけない。
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少し頭の中を整理して、健全な方向へと向かわなければならない。
そうだ…健全な方向へ…



「よい子のみんな~♪ 今日はお姉さんと一緒にお歌を唄いたいと思います♪
きっとみんなも知ってる歌だぞぉ~~♪」

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「さあ!テレビの前のみんなも一緒に!どんぐりころころを唄いましょう!
準備をして待っててね~♪」




「どんぐりころころか…そう言えば僕も小さい頃よく唄ったな…
子供は純真で汚れがなくていい。あの頃の僕も確かに純真だったはずなのに…」
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「そうだ、この子供達のように、僕も少し童心に帰って邪悪な心を清めなければ…
あんな場面ばかり思い浮かべてないで童心に…どうし……」



「鈴之介さん…うふふふ…」
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「鈴之介さんったら…うふふ…」



「え?」
「鈴之介さん…こっちよ…うふふふ…」
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「さ…さおり…さん…?」



ガタッ!
「さ、沙織さん!ど、どど…どうしたんですか!し、しし…しかもそんな格好で!」
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「いや?」
「い、いい…いやとかそう言う問題では!」



「そんな事より鈴之介さん、私と気持いい事しません?」
「え!?」
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「沙織…気持いい事したいな…。二人でいい気持になるの…」
「ふ…二人で…いい気持…?」



「そう…うふふ……いい気持…」
「そ…そそそそ…それは…どう言う…どう言う…」
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「早くベットへ来て…鈴之介さん…」
「で…でも…」



「ベットへ来て…鈴之介さん…ベットへ来て…鈴之介さん…いい気持よ…うふふふ…」
「いい気持ち……」
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「そう…いい気持ち…だ・か・ら…ねっ?」
「わか…分かりました…すぐにベットへ…ベットへ…ええ…行きます…行きます…
マッハでひとっ飛びで…ゴーゴー…飛べ…ゴーゴー…」



「よい子のみんな~準備は出来たかな~?集まって~~始まるよ~♪」
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「ほらほら、そこの僕も一緒に参加して、お姉さんと一緒に!サン、はい!」



「どんぐりころころ~♪」
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「いい気持…」



「お池にはまって」
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「いい気持…」



「どじょうが出て来て」
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「いい気持…」



「ぼっちゃん、一緒に」
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「いい気持ち~…」



「さあ、もう一度元気よく~!ぼっちゃん一緒に♪」
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「いい気持~…」



いい気持~…
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夢か幻か…それは誰にも分からない…。
Wow~!





続き、第38話へ 「突きつけられた現実」
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