第4話 「熱い男」

*二度目の恋 君に逢いたくて…第4話



このみ達と別れ、帰途についた亮。
久しぶりに彼女の顔を見て懐かしさが込み上げてきた。
サンセットバレーの潮風の匂いを、あの町独特の匂いを思い出していた。



(ホームシックか…)
20110216210305.jpg
(確かにそうかもな…)



彼女はクルクルとよく動く目を回しながら、サンセットバレーの思い出話をしていた。
なんだか以前よりも明るくなったように感じる。
20110217091313.jpg
そしてユーモアを交えて自分の今の大変さを語っていた。
アルバイトをしながらの美術学校への通学。コンテストに毎回応募しては落ちている事。



それらを面白おかしく言って聞かせた。だが、実際には大変だろう事は察しがつく。
それでも一生懸命暮らしている事に感心すると同時に自分のふがいなさに腹が立った。
20110217102900.jpg
彼女はすっかり失恋の痛手からは立ち直ったのだろうか?
ジーンの事は今では本当に何とも思っていないのだろうか?



少なくとも自分の時間はまだ止まったままだ。動き出せないでいる。
自分はこんなにも執念深い男だったのか?
20110216212204.jpg
彼女にリンダの事をまだ思っているのかと、冗談交じりで聞かれた時は、正直ギクリとした。



他の男の妻となってもなお、恋しさがつのる自分がいたからだ。
いや、手が届かない存在になったからこそ尚更なのかも知れない。
20110216213322.jpg
彼女がジーンの腕に抱かれ、自分には見せた事がないような顔を見せるのかと思うと
頭をブルブルと振るいたくなる。



だがそれももう終わりにしなければ。いつまでも立ち止まってる訳には行かない。
いま動き出さなければ一生抜け出せないだろう。
20110216213826.jpg
けれどそれが麗華との結婚と言う形なのだろうか?それが動き出すための一歩だと?
いや、そうではないと本能が告げている。



カチャ
20110216214512.jpg
「亮様、お電話が入っております」



「電話?」
「はい、麗華様からお電話です」
20110216214613.jpg
彼はこの家の執事、カイルだ。亮は彼にこの家の中の事はいっさい任せている。
余計な事は言わず、そして温かみのある男性だ。



「麗華から…」
「いかがなさいますか?こちらにまわしましょうか?」
20110216214712.jpg
「いや…俺は寝たと伝えてくれ…。明日、俺から電話するから…」
「かしこまりました」



「亮様、お疲れのようでございますね。今夜はもう休まれては?」
「ああ、ありがとう…これを飲んだら寝るよ。カイルももう寝てくれ」
20110216215036.jpg
「はい、ではおやすみなさいませ」
「おやすみ」



そう、はっきり彼女に伝えなければならない。結婚は出来ないと。
彼女が急に結婚を持ち出したのは何故だろうか?
20110216215157.jpg
大方、彼女の気まぐれだろう。彼女ならさもありなんだ。
そんな彼女の気まぐれに自分の人生を犠牲にする訳には行かない。



だが、麗華は容赦なくつついてくるだろう事は分かっていた。
彼女はそんなにスンナリ行くような女性ではないからだ。
20110216215420.jpg
そして、妊娠が嘘だと言う事も決して認めはしないだろう事も分かっていた…。



― このみの部屋 ―



(うわ~今日はビックリしたな~。まさか亮さんと会うとは思ってなかったもんね。
相変わらずカッコよかったな。前から素敵だったけどもっと素敵になってた)
20110216220232.jpg
(そう言えば新聞に載ってた亮さんの恋人、凄い美人だったよね。
まさしくセレブって感じ。すっごくお似合いの二人だった。美男美女のカップルってか?)



(でも亮さん、なんだか元気なかったな…。あの素敵な恋人とケンカでもしたとか?)
20110216220713.jpg
20110216221052.jpg
(ま、付き合ってればケンカぐらいするわよね)



「きっと結婚するんだろうな~。あーあ、みんな結婚しちゃって私はいつ出来るんだろう?
ってまだローリーがいるか。あ…また独り言を言ってる…」
20110216221601.jpg
「つい声を出しちゃうんだよな~。女が独り言を言うようになったら終りね」



「考えても仕方がない!寝よう、寝よう」
20110216231957.jpg
20110216222948.jpg
と、彼女はぶつぶつと独り言を言い、眠りについた。



その夜、彼女は懐かしい夢を見た。その夢は二年前の夏の終わりだった。
20110216221713.jpg
そう、亮の硬い胸に抱きしめられ…熱い口づけをしたあの夜の夢を…。



― 翌朝 ―



「このみ♪」
20110215212619.jpg
「おはよう」



「ローリー、おはよう。ずいぶん早いじゃない?普段ならまだ寝てる時間でしょ?」
20110215213153.jpg
「私だってたまには早く起きる時もあるわよ」



「ね、夕べは素敵だったわね~♪」
「ほんと。貧乏な私達はあんな所には二度と行けないわね」
20110215213229.jpg
「違うわよ!亮さんの事を言ってるの!」
「亮さん?」



「素敵じゃない?大人の魅力って言うかさ…物静かでクールで…
あ~ん、あんな人から一度でいいから愛されてみたいわ」
20110215213300.jpg
「バカね~、亮さんには素敵な恋人がいるわよ?」



「もう!分かってるわよ!ちょっと夢を見ただけじゃないっ」
20110215213406.jpg
「無駄よ、無駄(笑)」



「このみったら…もう少し早く私に亮さんを紹介してくれたらよかったのにっ!
そしたら今頃は私が恋人だったかもしれないのよ?」
「それはそれは失礼しました(笑)」
20110215213446.jpg
「あ、バカにしてるでしょ?ね?ね?」
「してない(笑)」



「そうだ。亮さんが来週、食事をご馳走してくれるって。ローリーも一緒にって言ってたわよ」
「嘘!」
20110215213506.jpg
「行くでしょ?」
「絶対に行く!何があっても絶対に行くわよ!」



「ハっ…」
20110215213636.jpg
「もしやあの男も来るんじゃ…?」



「そう言えば洩れなく着いて来るって言ってたわね。でも来たっていいじゃない?
何か都合が悪いの?」と、ニヤリ
20110215213708.jpg
「…ちょっと!なんでニヤニヤしてんのよ?」
「別に(笑)」



「あんた、なんか変な勘違いしてんじゃないわよね?」
「変なって?(うぷぷぷっ)」
20110215213746.jpg
「何よ?てか、なにその意味深な笑い。気持ち悪いっつーの…」
「ローリー…本当はタイプでしょ?」



「は?」
20110215213829.jpg
「ローリーってああ言う男の子、好きよね。ナマイキそうでキャンキャンしてるような感じの男の子」



「やめてよ!あんなクソナマイキなガキなんて冗談じゃないわ!
私はね、亮さんのように大人の男性がいいの!二度とそんな事は言わないで!」
20110215213914.jpg
クスクス…♪
「だからなんなのよ、その笑い!」



(私がタイプ?このみったら…隆君に振られて頭がおかしくなったんじゃないの?)
20110215213952.jpg
(あんな眉毛が太いのなんて話にもならないっつーの)



「このみさん!ローリーさん!ちょっと来て下さい!」
20110215214011.jpg
「鈴之介さんが…鈴之介さんが!!!」



「はあ…はあ…ローリーさん…鈴之介さんが…」
「又なの…?ほっとけばいいのよ。すぐに甘やかすからつけあがるのよ」
20110215214048.jpg
「そんな事言わないでお願いします!助けて下さい!」



「鈴之介さんったら頭をがんがんイーゼルにぶつけてて…あれじゃどうにかなってしまうわ!
私がいくらやめてって言ってもやめないんです!ローリーさん!お願いします!」
20110215214224.jpg
「しょうがないな~」



鈴之介の部屋



「くっそ~~!!!僕には才能がないんだ!
こんなカラッポの頭なんか壊れてしまえばいいんだ~~!!!」ガンッ!
20110215214331.jpg
「僕は生きてる価値なんてない!僕は…僕は…うお~~!!!」ガンガンッ!



「こんな腕ももげてしまえばいい!こんな腕なんか…腕なんか~~!」
20110215214500.jpg
「キャ~鈴之介さん!お願い、やめて!」



熱い男、芦屋鈴之介
彼も同じアパートに住む住人であり、同じ美術学校の生徒でもある。
20110215214633.jpg
彼はこんな身なりをしているが、実は芦屋財閥の一人息子。
芦屋財閥と言えばこの町で知らない人はいないほど、指折りの資産家だ。
そう、あの麗華の家と一、二を争うほどの名家である。



彼は将来、家を継ぐことになってはいるが、その前にどうしてもやりたい事があった。
それは幼い頃からの夢、絵のコンクールで金賞を取る事だ。
20110215214750.jpg
両親から3年の猶予をもらい、このみ達と同じ美術学校へ入学した。
が、しかし…彼は時々こんな風におかしく?なる(笑)



そして彼女は鈴之介の許婚、伊集院沙織。
彼女も同じアパートの住人だ。
20110215214832.jpg
鈴之介の許婚と言うぐらいだ、もちろん彼女の家も大変なお金持ちである。
沙織は鈴之介を支えるために同じアパートにわざわざ引越して来た。



このアパートは左から、このみ、ローリー、鈴之助、沙織。
この4部屋が入っている。
20110216225850.jpg
そして沙織はせっせと鈴之介の世話をやいていた。



だが…鈴之介がこんな風になるとどうしていいか分からなくなり、
いつもこのみとローリーの手を借りては鈴之介をなだめている。
20110215214918.jpg
まあ、これはいつもの行事と言っていいだろう(笑)



「鈴之介!いい加減にしな!」
「ほっといて下さい、ローリーさん!」
20110215214949.jpg
「やめなって!ほんとうに頭がバカになるよ!」
「もう…いいんです…元々僕はバカなんですから…いいんです!」



バシッ!
バカ!
20110215215007.jpg
うっ



いい!?よく聞きな!あんたには誰にも真似出来ないような表現力がある!
「僕…僕に表現力が……」
20110215215057.jpg
そうさ!それは鈴之助の才能なんだよ!
それに…そんなあんたを支えてくれる沙織がいるじゃないか…。それを忘れたの?」
「沙織さん…」



「そうだよ。沙織のためにもあんたが頑張らないでどうすんのよ?
それとも絵なんかやめて家に帰る?今までつちかって来たものをすべて捨てて?」
20110215215143.jpg
「そりゃあんたの家は大金持ちさ。家に帰れば楽な人生が待っているだろうよ。
けど夢はどうすんだ?金賞を取る夢は?あんたにとって絵はそんなもんだったの!?」
「僕にとって絵は…絵は…」



「そうよ、鈴之介君…。鈴之介君にとって絵は大事な夢なんでしょ?
だから両親にたてついてまでもこの学校に来たんでしょ?」
「このみさん…」
20110215215250.jpg
「ローリーの言うとおり、鈴之介君には誰にも真似出来ないような表現力があるわ」
「僕には誰にも負けない…」



「それ……それが仕上がった絵ね?……凄い……その草…素敵…」
「え?」
20110215215406.jpg
「草…すっごく素敵…」



「花なんだけど…?」
20110215215502.jpg
「え?」



「あ、ああ…そうよ、花よ…花!
「ほんとに素敵…?」
20110215215544.jpg
「凄く素敵! この……くさ…じゃなくて…花!最高だわ!」
「どんな風に感じる…?」



「えーと…そうね…枯れてるっぽいから…水。そうよ!水をたくさんくれって泣いてるわ!
水をくれたら元気になって青々と立派に茂るぞ~~って感じ!」
「茂る…?」
20110215215634.jpg
「あ、違った…咲く、咲くよ!だって花だもんね!」



「このみ…それ以上言わない方が…。もっと苦しくなるよ…」
20110215215737.jpg
「やっぱり…?」



「このみさん!僕嬉しいよ!…そっか…そんな風に感じてくれたのか…。
それはまさしく僕の思惑通りだよ…。やっぱり僕には才能がある…特別な才能が…」
20110215220151.jpg
20110215220242.jpg
 「………」                             「………」



「沙織さん…」
「鈴之介さん…」
20110215220515.jpg
「ごめんよ…僕…僕…」
「いいのよ…いいの…」



「ほら…こんなにあんたを思ってくれる沙織のためにも頑張らなきゃ…。
沙織ぐらいだよ?そんなあんたの側にいてくれるのは。そうだよね?沙織?」
「はい…。ずっと側にいます…」
20110215220625.jpg
「グス…沙織さん…」
「だって…」



「そうしなさいって………お父様が…」
20110215220801.jpg
20110215220824.jpg
(親父に言われてかよっ)



「で、でもさ…いくらお父様に言われたからって…ねえ?
それだけでかいがいしくお料理を作ったりなんて出来ないじゃない?ね、沙織ちゃん?」
20110216224112.jpg
20110215221054.jpg
「はい…。鈴之介のさんのために一生懸命栄養のバランスを考えて作ってます…」
「わ~凄いじゃん! ヒュ~ヒュ~♪ローリー、羨ましい~♪ こりゃ愛だね、愛」



「だって…そうしなさいって………お母様が…」
20110216224332.jpg
20110215221005.jpg
「はは…」



「沙織さんっ…」「鈴之介さんっ」
20110215221156.jpg
20110215221214.jpg
「…もう行こっか、このみ…」                     「そうだね…」





続き、第5話へ 「胸の高鳴り(前編)」 
二度目の恋…タイトル一覧は 「こちら」   
ストーリー別一覧は       「こちら」

コメントの投稿

Secre

カテゴリ
最新記事
最新コメント
リンク
カウンター