第29話 「決戦は明日」

*二度目の恋 君に逢いたくて…第29話



「あんた…」
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「会いたかった…」



「帰って」
「ローリー…」
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「あんたとはもうとっくの昔に終わったはずよ。だから帰って」
「俺の話を聞いてくれ!
俺が悪かった…俺はお前と離れて初めて気がついたんだ…。俺はお前が…」



「聞きたくない。いいから帰って」
「俺は間違っていた!俺にとって、お前がどんなに大事な存在かやっと…」
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「聞きたくないって言ってるでしょ!」
「ローリー…俺達は今度こそやり直せるような気がするんだ…子供だって今度は必ず…」



「やめて!その話はしないで!」
「ローリー…」
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「どの面下げて私の前に現れたのよ!あの女はどうしたのよ!女の所に帰りなさいよ!」
「あの女とは別れた……。彼女の家を出て来たんだ…」



「そう。それでも私には関係ないわ」
「そんな事を言わないでくれ…。頼む…俺は…」
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「いいから帰って!」
「だけど俺は住むところもないんだ。今は友達の所を転々としてる。
それに…ありったけの金もあの女に渡して来たんだ…だから…」



「知らないわよ、そんな事。言っとくけどそのお金だって私から持って行ったお金でしょ?」
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「それを返してとは言わないわ。ただ、私の前から消えてくれればそれでいい」
「けど…俺はお前のためにすべてを…。だから俺にはいま行く所も金も…」



「いい加減にして!私はあなたのお財布じゃないのよ!?
いったい私からいくら持っていけば気が済むの?ふざけるのはよして!」
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「こ、今度こそちゃんと働く…。そうすれば金だってすぐに返せ…」
「いいえ、それはごめんだわ。お金だって貸すこともないから返す事もない。
分かったらもう出てって。警察を呼ぶわよ?!」



「ローリー…」
「本気よ」
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「分かった…。今日はとりあえず帰る…」
「とりあえずはなしよ。二度と来ないで」



カチャ…
「これだけは分かってくれ…。俺はお前とやり直したくてあの女と別れたんだ…」
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「私は頼んでないわ」



(バカな男…)
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昔、夢を追いかけながら二人、一緒に暮らしていた頃を思いだす。
私は画家。彼はミュージシャン。そして二人は夢を実現させ、幸せになるのだ。



二人は夢に向かって走っていた。文字通り、ただがむしゃらに走っていたのだ。
だが、それがどう間違ったのか、彼はいつの間にか酒に溺れていた。
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走る事に疲れ、夢に負けたのだ。
そうなると後は簡単だ。転がるように生活はメチャメチャになった。



気がつけば、彼は私を罵る事でうさを晴らしていた。
愛も優しさも、どこかへ吹っ飛んでしまったかのように彼は私を罵った。
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それでも、私は彼を愛していた。言い過ぎに気づき、謝る彼を何度も許した。
そして彼にしがみつき、夢を、希望を、愛を取り戻そうと必死だった。



物事には限界と言うものがある。私も限界に達していた。
だが、ピリオドを打ったのは私ではない、彼の方だ。
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彼は私を捨て、違う女に温もりを求めた。
私はボロボロになって捨てられたのだ。私の心と体に大きな爪後を残して。



あんな男に夢中になっていたのかと思うとヘドが出る。
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いったい、私はあの男のどこがよかったのだろうか。
顔がいいだけの負け犬の最低ヤローだ。



とは言え…やはりあんな姿は見たくはない…。
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本当に…どうしてあんな風になってしまったのか。
少なくとも、出会った頃はあんなんじゃなかった。



もちろん、バカな男に変わりはないが、それでももっと自信に溢れ、
恐いもの知らずで無鉄砲な男だった。例え、自分が悪くても決っして謝ったりしない。
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自分が正しいと、絶対の信頼があったのだ。彼に唯一の魅力があるとすればそこだろう。
もっとも、あの頃の私も救いようの無いバカだったから、それが魅力的だと感じていただけだ。




その男が今や私に懇願し、侘びまで入れている。よっぽど困っているのだろうか…?
いけない…。これが私の悪い癖だ。つい情にほだされそうになる。
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そんな事はもうやめると誓った。そう、あのろくでなしにそれを教えてもらったはずだ。
だから今度だって絶対に手は貸さない。間違っても。



― 翌日 ―



「亮さん、いつ引越しするんですか?」
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「ああ。家の買い手はすでに何件か申し込みがある。そんなにはかかんないだろう。
引越しはそれからだな。しばらくはホテル住まいでもいいし」



「え?もったいないですよ。私の家に来ればいいじゃないですか」
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「それも考えたんだけど…でもしばらくはマスコミもうるさいと思うんだ。
それが収まるまではホテルの方がいいと思って」



「マスコミ…?」
「ああ…。チームの解散は、この町にとっては大打撃だからな。マスコミが黙ってないだろう」
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「なら…」
「ん…?」



「なら早めにサンセットバレーに行くのはどうですか?ルビーちゃんの手術の時だけ来るとか…」
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「いや、監督が心配なんだ。なるべく最後までついててやりたい。
監督にマスコミの対応させるのも避けたいし…。ルビーの事があるから余計にさ…」
「そう…ですよね…」



このみはこの町をすぐにでも離れたかった。あの女がいる町にはいたくないからだ。
一刻も早く亮を連れてこの町を出たかった。
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連れて…?なぜ連れて行かなければと思うのだろうか?
あの女と会うだびにその思いは強くなる。あの冷酷な瞳が自分の神経を逆撫でする。



そして…
あの冷酷で美しい瞳が、すべてをさらって行きそうで恐かった…。
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やっと見つけた愛も幸せも…
丸ごと持って行かれそうな…そんな気がして…



「どうした?早くも心は故郷に飛んじまった?」
「ええ…ちょっとだけ…」
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「君の家って言うけど、君だって引越しするんだぜ?その準備を始めなきゃな」
「そうだった(笑)私ったら…すっかり忘れちゃった(笑)」



「向こうに行ったらどこに住む?二人でどこかに家を借りる?」
「いえ、私はとりあえず実家があるので」
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「そっか…」
「どうしたんですか…?」



「てっきり……俺とすぐに一緒に住んでくれるもんだと思ってたから…」
「え?」
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「遠まわしな言い方はしない。俺……淋しい…。君と一緒にいたい…」
「亮さん…」



「俺と一緒に住んでくれよ…」
「子供みたいですね…(笑)」
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「だって…」
「ぷっ!」



「じゃいいよ…別にすぐに住んでくれなくったって…。
その代わり君の両親の目の前でブッチュブッチュやっても怒るなよ…」
「げーーーーー!(笑)」
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「俺、マジでやっちゃうぜ?」
「やだ~~(笑)両親が卒倒しちゃいますよ!」



「花嫁修業にすぐに行きます」
「どこへ?」
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「亮さんの実家へ。お母様とお父様にもご挨拶したいし。
それで亮さんのご両親のお許しが出たらすぐにでも引っ越して行きますよ♪」
「俺がいますぐ許す」



「だから亮さんじゃなくて亮さんのご両親っ」
「そんなの、1秒もかかんないね。って言うか、挨拶に来たその場で住みなさいって言われるぜ?」
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「そうなんですか?(笑)」
「うん(笑)君を先に人質に取っておこうとするはず(笑)
でも俺としてはどこかに借りようとしてたんだけどな」



「それはダメです。もったいないので」
「出た…もったいない…」
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「一生出ます(笑)」
「はいはい(笑)」



「来週、監督が話があるって言うから病院に行くけど君も行く?」
「あ、行きます!ちょうどよかった!
ルビーちゃんにプレゼントがあるので行きたいと思ってたんです」
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「プレゼント?」
「この間、約束したんです。美味しいアイスをご馳走してくれたから、
そのお礼に絵本をプレゼントするって♪」



「悪いな」
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「いいえ♪ 私もルビーちゃんの喜ぶ顔が見たくて♪」



― 夕方 ―



「沙織!どうしたの?鈴之介に用なの?」
「ローリーさん、こんにちわ~♪
私、また鈴之介さんに例の練習に付き合っていただこうと思いまして」
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「ああ…あの(バカげた)練習ね…。でも鈴之介はいないよ。今日はバイトだから」



「あ…そう言えばそうでしたね…。私ったらうっかりしてました(笑)」
「私もバイトだから一緒に店に行く?」
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「いえ、ご迷惑になるといけないので。練習はまた明日にでもします」
「そっか…」



「沙織…」
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「はい…?」



「ゴルゴの事なんだけどさ…。アイツ…もうすぐこの町を離れるらしい…」
「え?」
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「ほら、チームが色々とあっただろ?だからゴルゴも違う町のチームに移籍するんだって…」
「移籍…?」



「うん…。詳しい事は私も聞いてないけどさ…。
たぶん…近いうちにアイツもこの町から出て行くと思うよ…」
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「ゴルゴさんがこの町から…?」
「あんたには知らせた方がいいと思って…」



「彼がこの町から…」
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「いなくなる…?」



「じゃ私は行くね」
「あ…はい…」
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「彼が……」



「アイツが…」
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「いなくなる…か…」



一方、最近どうも落ち着かないゴルゴ。
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その理由は分かってはいるが認めたくはない。
それは、この町を離れると決めてから特にひどくなった。



そして、今日もいつものように落ち着かない。
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「こんな番組しかやってねーし…」



「あーあ…暇だな…。…んだよ亮の奴…。最近ちっとも遊んでくんねーし…」
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「って…それどころじゃねーのは分かってるけどよ…。
って言うか、マジで家とか売っちゃうんだ?なんかスゲーな…」



「あーマジ暇…。飲みにでも行くかな…」
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「だよな…こう言うときはパ~っと飲みに行くのが一番いいよな…」



スクッ
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「そうだよな!暇だし。別に会いたいとかそんなんじゃねーよ?全然全然違うよ?」



「俺は純粋に酒を飲みたいだけさ♪ よ~し飲みにでも行こ~っと♪」
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と、何故か自分に言い訳をするゴルゴ。


そしてやって来たのは当然…


カランコロ~ン♪
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「いらっしゃいませ~」



「…ってあんた…何やってんの?」
「何って飲みに来たに決まってんだろ?」
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「はあ?」
「はあって何だよ…。飲みに来ちゃダメな訳?」



「別にいいけどさ…。言っとくけど今日はこのみはいないよ?」
「あ~なんだよ、残念だな~失敗失敗。
しょうがね~せっかく来たんだ、ついでに一杯飲んでいくわ。酒くれよ」
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「なんかムカつく言い方ね…。分かったわよ、何飲む?またあんたにお似合いの夜の銀狐?」
「あれやめた。そうだな…今日は…” 俺のハートを返せ ”にしてくれ」



「お前…なに、その目は?」
「別に…」
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「いいから持って来いよっ」
「かしこまりました…」



「ふんっ」
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(私のハートも返してよね…)



「え?ゴルゴさんが?」
「うん、一人で飲みに来てる」
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「そうですか…」
「なに?会いづらい?」



「まさか!そんな事はありません。
それにゴルゴさんには先日お会いしましたので(説教&鼻血を垂れましたので)」
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「沙織の気持ちを知ってから?へえ~知らなかった」
「なので僕は大丈夫です!紳士的な態度で接しますとも!」



ボソ…って言うか少しは怒った方がいいんじゃ…?
「さ、じゃ仕事をします」
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「じゃこのカクテル持ってって。” 俺のハートを返せ ”がゴルゴだから」
「分かりました」



そして鈴之介は酒を持っていく途中、周りをキョロキョロと見渡した。
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(大丈夫ですね…。今夜はゴルゴさんのお相手になるような女性はいない…)



「お待たせいたしました。 ” 彼女(沙織)のハートを返せ ” をお持ちいたしました」
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「え?彼女の?ちげーよ!俺が頼んだのは俺のハートを…」



「…って…鈴之介じゃんっ」
「こんばんわ」
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「お前何やってんの?」
「アルバイトです」



「いや…それは見りゃ分かるけどよ…。てか、お前はアルバイトする必要なんてねーだろ?」
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「いいえ、急遽、生じたんです」
「ふ~ん……。ま、金持ちの考える事なんて俺には分かんねーしな…」



「ゴルゴさんっ」
「何?」
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「分かってますね!?」
「何が?」



「いいですか?今夜はきらびやかな女性は一人もいらっしゃいませんよ?」
「は?」
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「こ、この間のような…その…ズキュンとか…ぬ、濡れ濡れとか…」
「ああ~ビンゴの話ね。ボソ…ずいぶん濡れ濡れにこだわるね?



「そう!そのビンゴの話です!いいですか?そのような女性とは決して…」
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「もうあんなビンゴ女とは俺もごめんだよ…」
「ですからですね、そのビンゴ…」



ズイッ
「ビンゴ?何の話?」
「え…」
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「ね、ゴルゴ、なんの話?ゲームの事言ってんの?」
「えーと…それはだな…」



「ローリーさん。僕がご説明いたしましょう。僕は詳しく知っています」
「あんたが?」
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「ええ。それはですね、ある場所にですね…その…さ、さわ…さわ…さわさわして…
あ!決して僕の事ではありませんよ?それは僕ではなく、この間ゴル…」
鈴之介!



「はい?」
「俺のハートを返せをおかわり」
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「あの…でもまだグラスに並々と…」
「いいから黙ってお仕事しなさい。分かりましたか?」



「えーと…でも僕はご説明を…」
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「いいから!ほら、あっちもこっちもそっちも呼んでるぞ」



(ったくよ…。余計な事言うなっつーの…)ぶつぶつ…
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(しかも未遂だぜ?やっちまったわけじゃあるめーし…)ぶつぶつ…



「なに?何かあるの?」
「いいや、なんも」
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「そう?…なんかあるような気がするんだけど…」
「なんもねーって!」



「いいからなんか食いもん持って来て。腹減った」
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「分かったわよ…」



「鈴之介、もう上がる時間だろ?いいよ、先に着替えて帰りな。私もすぐに上がるから」
「はい、さすがに疲れました。ではお先に失礼いたします」
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「お疲れ~」
「お疲れ様でした」



「あれ?帰るの?」
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「ええ、僕の仕事は終わりました」
「そっか。じゃな、お疲れ」



「あの…ゴルゴさん…」
「あ?」
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「その…さしでがましいようですが…」
「なに?」



「あの…ゴ、ゴルゴさんはその…さ、さお…さお…り…ゴニョ…さんの…事をどう思っ…
「なに?聞こえない」
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「ですからその…さ…さお…さお……」
「さお?さおって俺自身のさおの事?そりゃもう手に負えないぐらいビンビン」



「何の話です?」
「違うの?おめー意外とドスケベだから下ネタかと思ったぜ」
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「し、失礼な!ぼ、ぼぼぼぼ僕はド、ドスケベなんかではありませんっ」
「またまた~鈴之介君ったらぶっちゃって…」



「不愉快だ!僕は帰りますっ」
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「だからこの間からなに…」



「ったくよ…なんだよアイツ…最近おかしくね?」
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「きっと溜まり過ぎて頭が悶々としてんだな…。気の毒な奴…」



「………」←気の毒な奴
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「ぼ…僕は……ドスケベなんかじゃないっ!」



「あんた…まだいたの…?」
「むっ。いちゃ悪い?言っとくけど今度は金持ってるぜ」
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「はいはい、際ですか…」



「お腹いっぱいになった…?」
「あ?」
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「私もそろそろ上がりなんだ…。ついでにここで夕飯食べて行くから…。
な…何かおごってやろうか…?」
「何急に…」



「い、嫌なら別にいいよ…」
「俺がおごる」
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「え…」
「俺の分まで払ったらせっかく働いたバイト代が無くなるだろ?
俺がおごっちゃるから早く着替えて来いよ」



「うん…ありがとう…」
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(嫌に素直…)



今夜は喧嘩なんかしたくなかった。
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もうすぐいなくなるアイツと…喧嘩なんかしたくない…。



(てか…なんかこの店……あっつくねーか…?妙にほっぺが熱いぜ…)
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(俺…飲み過ぎ?)



「なあ、知ってる?亮が家とか全部売っちまうの」
「え?なんで?向こうの町に引っ越すから?」
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「それもあるんだろうけどさ…」
「なに?」



「監督の娘さんが心臓病なんだよ。んで移植が必要なんだけど、その費用を亮が負担するらしい」
「マジで…?って…家まで売ってって凄くない?」
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「すげーよな(笑)でも亮ならやると思ったぜ。
チームがこんな事になった時にそうするんだろうなとは思ってた」



「え?ちょっと待って…。じゃこのみと結婚どころじゃないんじゃないの?」
「それは大丈夫だよ。亮ならすぐに今以上に稼げるようになる。心配はいらないさ」
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「そっか…ああ…それを聞いて安心した…」
「なんで?」



「だってあの二人には早く結婚してもらいたいんだよね。
あの麗華って言う女がウザくてさ。超ふざけた女。何様って感じよ」
「お嬢様が?」
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「この間もこの店に来たんだよ。もちろんわざと来たんだと思うけど。
んでこのみに訳の分からない事言っちゃってさ…頭がテンパッてんじゃないの?」
「へえ~…あのお嬢様がね…」



「不気味な笑いを残して帰ってった。ムカつくったらないよ、まったく…」
「きっと亮との事が吹っ切れてないんだな…」
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「もう未練たらたら…。だから早いとこ亮さんとこのみに結婚してもらいたくてさ」
「大丈夫だよ、亮もかなり本気だし。どんな事があってもこのみちゃんを離しはしないって」



「あっ!それ俺が食おうと思ってとっておいたんだかんな!」
「ふんっ早いもん勝ちよ!」
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「じゃいいよ。俺はこれを食うから」
「ちょっと!それ私が一番好きなもんなのよ!口から出しなさいよ!」



「無理~」
「ちょっと~~!」
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「あっ、ここにも見~っけ♪」
「ダメ!ダメダメダメ!出せ!出してってば!」
と、低レベルな二人(笑)



一方、ゴルゴに沙織の事をどう思うか聞けないまま、帰途についた鈴之介。
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沙織の事が気になり、つい余計な事をしようとしたのだ。
だが、そんな事を聞く権利は自分にはない。



(こんな女々しい男だから僕はダメなんだ…)
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(だけど沙織さん…僕はあなたが心配なんです…。もしあなたが傷つくような事があったら僕は…)



「鈴之介さん…おかえりなさい…」
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「沙織さん!どうしたんですか、こんな遅くに?」



「鈴之介さんを待ってたんです…」
「待ってた?僕を…?」
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「はい…。ずっと待ってました…」



(ど、どうしたんだろう…心なしか頬まで染めて…)
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(はっ!も、もしや…ぼ、僕との事をもう一度考え直したりなんかしちゃって…)



「あの…」
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「は、はいっ」



「本当にありがとうございます…。色々と親身になってくれて…」
「いえ!ぼ…僕はそんな…」照れ…
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「鈴之介さんにお礼を言いたくって…。この数日間…色々と助かりました…」
「ほ、本当に僕は何も…」照れ…



「こんな事を言ったら鈴之介さんに失礼かも知れませんが…
私…前より鈴之介さんが近くなったような気がします」
「近く…?」
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「ええ…」
「い、いや~はは…そ、そう言われると僕もそうかな~なんて…あは…あははは!」



「おかげで勇気が沸いてきました…。私…明日言おうと思います…」
「え?」
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「ゴルゴさんに私の気持ちを伝えようと思いまして…」
「き、気持ちを?」



「ええ。明日打ち明けますわ!」
「そ、そうですか…そそそそ…それはよかった!よかった!あはははは…!」
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「ありがとうございます!
私、さっそくゴルゴさんに電話します!終わるまで側にいて下さいますか?」
「え?…側にとは…」



「私、一人じゃ電話する勇気が出なくって!
鈴之介さんが側にいて下さると心強くて勇気がでますわ!」
「そ…そうですか…。ええ…側にいますよ…。喜んで…側にいます…」
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「嬉しい!では電話しますね!」
「ええ…」



ピッ
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(さあ…勇気を出して…)



ツルルル♪
ツルルル♪



「電話、鳴ってるよ。ほら、ブーブーうなってる。あんたのでしょ?」
「ほんとだ。お前耳いいな~。そう言うのなんて言うか知ってる?…ボソ…地獄耳…
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「いいから出なよ!」
「分かったよ!」



カチっ
「…あ…あの……ゴ…ゴルゴさん…ですか…さ、沙織です…。す、すみません…突然…」
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「あの…あの…」
ゴクリ…



「あの、ゴルゴさん!す、すみませんが明日…少し私に時間をいただけますか…?」
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「いえ!明日…直接会ってお話したいので…」
「はい…はい…。ええ…ええ…」



「………」
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「では…明日…」



ピッ
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(言った…。私…とうとう言ってしまったわ…)



「なんだ?」
「え?何がよ?」
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「今の電話、沙織ちゃんから。明日、時間くれって。なんか話があるらしい」
「沙織から…?へえ~…」



「俺…なんかしたっけ?そう言えばここんとこ鈴之介も変だったしな…。
間違ってあの娘のケツをペロっと触っちまったとか…?」
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(だからこの間からアイツが怒ってんのか?いや…でもそんな記憶はねーし…
もしそうなら俺の手が覚えてるはず。…いったいなんだ?)



「………」
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「………」




「鈴之介さん…。私…ドキドキして来ましたわ…」
「そうです…よね…」
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「本当にうまく行くでしょうか…」
「大丈夫ですよ…。きっと…大丈夫です…」



「あの…ぼ、僕はそろそろ絵の仕上げをしたいので、失礼します。
最近、アルバイトばかりしていて絵が全然進んでないんですよ(笑)」
「あ…ごめんなさい…。鈴之介さんだってお忙しいのに…」
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「いえ、いいんですよ(笑)明日、頑張って下さいね!」
「はい、ありがとうございます!」



「ではおやすみなさい、沙織さん」
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「おやすみなさい…」



(明日…)
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(明日…)



(明日…)
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いずれ、ゴルゴが沙織を見つめる時がやって来る。



そうしたら彼はあのくだらないお喋りでいつだって彼女を笑わすだろう。
そんな光景が目に浮かぶようだ。
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そして…見かけよりも力強いあの腕で彼女を抱き締めるのだ…。
その事を思うと、まるで心にポッカリと穴が開いたようで無性に淋しかった…。



(危ない危ない…。淋しくなるといっつもロクな事ないんだよね…。
つい誰かに寄りかかりたくなってくる…。そんな事考えちゃダメだ…)
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(私は淋しくない…淋しくない…)



ローリーは呪文のようにそれを唱えた。何もこんな淋しさはこれが始めてって訳じゃない。
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今までにも報われない恋はした事があるし、もっと辛い別れだってした事もある。
そう、過去に愛し合った恋人との別れの方がもっと辛かったはずだ。



そして私はそのたびに二人で撮った想い出の写真や、
彼の忘れていったTシャツを引きちぎりながらそれを乗り越えて来た。
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ましてやゴルゴとは付き合ってた訳でもないし愛し合った訳でもないのだから、
乗り越えなければならない程の辛さや淋しさなんて、感じる必要はないはずだ。



たかだかこいつと一回寝ただけ…。それだけよ…。
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だから淋しがる事なんてないのよ…ローリー…



彼女は自分自身をそうなだめ、すっかり味の分からなくなった料理を口に運んだ。
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続き、第30話へ 「告白」
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