第30話 「告白」

*二度目の恋 君に逢いたくて…第30話



翌日、美術学校(夕方)


「このみ、今日の授業はもう終わったでしょ?これから映画でも観に行かない?」
「ごめん、これから病院なの。亮さんも先に行ってるから」
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「病院?ああ…心臓病の。亮さん、家まで売るんだって?」
「あれ?知ってるの?」



「ゴルゴから聞いた。大変だね…」
「平気よ、貧乏は慣れてるし♪」
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「そっか…」



「そう言うローリーはなんか元気ないね?」
「そんな事ないよ…」
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「嘘。ローリーはすぐに顔に出るんだから。なんかあった?」
「なんかね…。あったと言えばあったけどさ…」



「なに?」
「ん…」
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「何よ?」
「沙織がね…」



「沙織ちゃんが?沙織ちゃんがどうしたの?」
「ゴルゴにたぶん…告白するんだと思う。今日…すると思うよ…」
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「嘘…」
「たぶんね…」



「あーあ!私も男でも作るかな!」
「でもゴルゴさんがうんって言うとは限らないじゃない…」
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「バカね~あんな可愛い沙織に言われたらゴルゴだって考えるって(笑)」
「そうかな…」



「そうよ。今はなんの感情もなくてもそのうち意識するだろうし。
そしたら男と女なんてあっと言う間よ」
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「だけどゴルゴさんはもうすぐ違う町に移るのよ?
そんなに簡単に沙織ちゃんとどうこうなんて…絶対にしないと思うけどな…」



「沙織がゴルゴについて行けば済む話じゃん。
今の沙織ならそれぐらいやるよ。あの子は案外、根性があるからね」
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「ローリー…おかしいよ…。どうしてローリーは自分も好きって言わないの?
ゴルゴさんに言ってみたらい…」



「言えない」
「なんで…だって…」
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どうしても!…いえないの…」
「ローリー…?」



「ごめん…。でも私はゴルゴにふさわしくないから…」
「でもそれはゴルゴさんが決める事で…」
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「子供…」
「え…」



「子供を中絶した事があるんだ…私…」
「嘘…」
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「ほんと…。それも二回も…」
「ローリー…」



「昔、めっちゃ惚れてた男がいてさ…。二人で夢を追いかけて必死に暮らしてた。
あの頃…私は彼のためならなんだって出来ると思った」
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「私は彼が好きで好きでね…。
どうしようもなく惚れてた…。んで、その男の子供が欲しくて作ったの…」



「だけど本当は育てられる状態なんかじゃなかった…。
彼がさ…中々うまくいかなくてどうしようもなく自暴自棄になっててね…」
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「私からも逃げ出そうとしてたの…。けど…
もしかしたら子供が出来れば立ち直ると思った。もう一度しっかりと立ち直って…」



「なんてね…ごめん…それは嘘…」
「嘘…?」
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「うん…本当は違うの…」
「違うって…?」



「本当は彼が離れて行くのが怖かった。私からどんどん離れて行くのが怖くて…だから…
子供をだしに使った。子供がいれば私を捨てないと思ったの…離れて行かないって…」
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「だけど失敗だった…。彼は子供が出来た事を知ると、すぐに家を出て行った…。
私を捨て、違う女に逃げたの…」
「そんな…」



「挙句の果て、置き土産に借金付でね。そんなんで育てられるはずもないじゃない…。
欲しかったけど…しょうがなく中絶した…」
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「もっと笑えるのは2回目の時も同じ事をしたの。そう、同じ男。
性懲りもなく戻って来た男とやりなおした」



「で…又同じ事をした。どうしても彼を手放したくなくて…同じ事をした。
けど二回目の時は中絶じゃなくて、流産したの」
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「彼がね…又出て行ったのよ。分かってた事なのにショックでね…
数日後に流産したの。赤ちゃんもこんな私の所へは来たくなかったんだろうね…」



「もちろんその事を彼にも伝えたわ。子供が流産したって。だから側にいてって。
でも彼は戻っても来なかったし、それどころか私から避けるように姿をくらましたわ」
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「で、やっと目が覚めたの…。覚めるのが遅いって言う話だよね…(笑)」



このみは、そう言いながら淋しそうに笑うローリーの辛さを思って抱きしめてあげたかった。
淡々と語る彼女の過去が、鮮やかに目に浮かぶようだ。
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どれ程の絶望を味わい、今に至ったのだろう。きっと彼女は、
泣きたい自分を叱り飛ばし、何事もなかったかのように前を向いたに違いない。



「今となってはどうしてあんなバカな真似をしたのかと思うよ…。
ただ彼との繋がりが欲しいがためにあんな真似を…」
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「私は男を繋ぐためだけに子供を利用した、そんな恥ずかしい女なんだ…。
だけどね…子供は出来る事なら生みたかった…。本当に生みたかったんだ…」



「不思議なんだけどさ…その後にも出会った男が何人かいたけれど、
私の過去を恥ずかしいと思った事なんて一度もなかったんだよね…」
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「だけどゴルゴには知られたくないの…。こんな私…絶対に嫌だ…。
だからゴルゴとは友達のままでいい。そしたら軽蔑されないですむから…」



「このみ…軽蔑していいよ…」
「ローリー…。しない…しないよ…。私はローリーを軽蔑したりなんかしない。
だって中絶したくてしたんじゃないもの…」
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「もちろん…それはそうだけどさ…だけど私のやった事は…」
「だったら軽蔑したりなんかしない」



「人は間違った事をするものよ…。それをローリーはちゃんと分かってる…。
ローリーは間違った事を間違いだったと分かってるんだもの…」
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「このみ…」
「もう間違わなければいい…。そうでしょ?」



「そうだとしても…ゴルゴとはありえない…。アイツは私が出会った男の中で、
一番まともな男なんだ。そんなゴルゴを私の複雑な人生に引きずり込みたくない」
「ローリー…」
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「もう行って。亮さんと約束してるんでしょ?」
「うん…」



「私は帰って絵でも描くよ。一応佳作取ったんだから次も頑張らなきゃね」
「ローリー…この話は又今度…」
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「もういいから行ってってば。亮さんが待ちくたびれちゃうよ?」
「分かった…」



「亮さんによろしくね!」
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何故あんなバカな事をしてしまったのだろうか。
若気の至りとは言え、私がやった事実は消えない。



もし…あの頃に戻れるのならば、絶対にあんな事はしないのに…。
こんな風に昔の事を思い出したのはあの男がまた現れたからだ…。
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私を散々苦しめ、何年もがんじがらめにした男…。
そして…忘れられなかったあの男が…。



― 同時刻 ―



「鈴之介さん、では行って来ます」
「ええ、頑張って下さい」
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「はい!」



一方、ゴルゴに愛の告白をしようと、出かけていく沙織。
鈴之介はそんな彼女の背中をじっと見つめていた。
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きっと彼女は彼に受け入れられるだろう。
これで心置きなくこの国を離れる事が出来る。



心置きなく…?それはもちろん嘘だ。
幼い頃から彼女が好きだった。彼女を見た瞬間に恋に落ちた。
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それは何年経っても少しも色褪せる事なく、今でも心のすべてを占めている。
この思いを、やがて微笑んで懐かしく思い出す時が来るのだろうか?



そして、いずれ新たな愛と出会い、彼女以外の女性を愛するようになるのだろうか?
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きっと答えはノーだ。
僕は一生、彼女を忘れる事など出来ないだろう。



あの愛らしい姿を、はにかみながら微笑む彼女を、どうして忘れる事など出来ようか。
脱力感と虚しさが胸を貫き、未練がましい自分が嫌になる。
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彼は諦めたようにため息をつき、面倒くさそうに家の中へと入っていった。



沙織は待ち合わせの場所にゴルゴの姿を見つけ、胸をドキドキさせていた。
やがて来る緊張の時はもうすぐだ。
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彼に自分の思いを告げると勇気づけたのはローリーのあの言葉だった。
そう、彼がこの町を出て行く。それを聞いた瞬間、胸がキュンと締め付けられた。



そして、決心したのだ。
もじもじしていても何も変わらない。勇気を出し、自分の思いを告げなくては。
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何よりも、鈴之介が応援してくれた。
沙織にとって、鈴之介が応援してくれた事はとても心強かった。



今となっては鈴之介は、昔よりも大きくて近い存在だ。
その彼がやがてこの国を離れるのかと思うと淋しくもあるが、彼には彼の人生がある。
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そして、私にも私の人生がある…。
彼女は新たな未来への扉を開こうと、一歩ずつ歩き始めた。



「あの…すみません、突然…」
「いや、全然構わないけど。でも話って何?
あ、もしかして鈴之介がなんか怒ってるせい?あいつ、この間から変なんだよな~」
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「鈴之介さん?いいえ…鈴之介さんの事ではありません…」
「そうなんだ…ふーん…」



「ま、いいや。とりあえず何か食わね?俺、腹減ってんのよ」
「あ…お腹がすいてるんですね。ではどこかへ…」
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「ここでもいい?そこで簡単なのが売ってるから」
「ええ、ではここで…」



ゴルゴは何の話かさっぱり分からなかったが、
とりあえずは鈴之介の事ではないとホッとしていた。
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それもそのはずだ。最近の鈴之介はどうもおかしい。
ゴルゴの顔を見ては訳の分からない事を言い、不機嫌に帰って行く。



(ああ…よかった…。てっきり鈴之介がなんか文句言ってるのかと思ったぜ…)
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(てか…じゃなんの話?)



「あ~食った食った!あ、悪い。勝手にハンバーガー頼んじゃった。
やっぱお嬢様にハンバーガーは合わなかったかな?」
「い、いえ…」
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「なんか違うもんにする?それ、俺が食ってやっから」
「あの…ゴルゴさん…」



「大丈夫だって。俺、まだ食えるし」
「ゴルゴさん!」
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「あ?」



「あの…(ゴクリ…)」
「何?」
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「あの…と、突然ですが…ゴ、ゴルゴさんは今……その……お、お付き合いしてる方とか…
その…す、すすすす好きな方は…その…いら…いらっしゃい…」



「好きな女?」
「はい…」
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「ああ、いない」キッパリ
「あ…そ、そうですか…」



(と、とりあえずはよかったわ…。
さあ…次を言うのよ…。私はあなたが好きですって言うの…さあ…)
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「あの…ゴルゴさん。私の話と言うのは…」



「監督!」
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「亮…」



「ルビーの具合が良さそうですね。さっき見て来たら顔色がよかったので」
「ああ…今日はだいぶいい…」
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「よかった。
この間監督が元気がなかったので、ルビーの具合が悪いのかと思ってビビリましたよ(笑)」
「心配させて悪かった。大丈夫だ、最近は調子がいいんだ…」



「そうで無ければ困ります。移植まで頑張ってもらわないと(笑)」
「亮…その事なんだが…」
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「え?」
「今日、お前に来てもらったのはその事で話があったからなんだ…」



「移植の金の件ですか?その事ならもう話し合ったじゃないですか…」
「いや…ルビーに関する事だが金の事じゃないんだ…」
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「なんの事です?」
「ああ…」



「監督?」
「亮…すまない…」
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「え…?」
「お前には本当にすまないと思う…。だけどもうどうしようもないんだ…」



「監督…何を言ってるんですか…。さっきも言いましたが金の事なら…」
「違う、そうじゃない…そうじゃないんだ…」
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「何かあったんですか…?」
「本当にすまない…」



「謝られても何の事だか分かりませんよ…」
「俺は最低だ…。こんな事をお前に頼むなんて最低だと分かってる。
だけど!もう俺にはこれしか…」
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「さっきから何を…」
「亮…俺の頼みを聞いてくれ…」



「麗華さんと…あのお嬢様と結婚してくれないか…?」
「え?」
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「ルビーのために…お嬢様と…結婚してくれ…」
「結…婚…?」



「こんにちわ、ルビーちゃん♪ 遅くなってごめんね~」
「お姉ちゃんだ!」
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「約束のプレゼント持ってきたよ~」
「わ~ありがとう♪」



「それと、ジャ~ん!ケーキも持って来た♪ みんなで食べようか?」
「ほんと!嬉しい!ルビー、ケーキ大好き!」
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「よかった(笑)」
「やったー!」



「ママとパパは?」
「パパはね、さっき亮お兄ちゃんが来て探しに行ったよ。
ママは家にお着替えをしに行ったの。だからルビー、ママの分も食べちゃお~っと♪」
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「こらこら、おなか壊すわよ(笑)」
「平気だも~ん♪ ね、早く食べよう!ルビー、お兄ちゃんとパパを呼んで来るよ!」



「ううん、いいの。私が行くわ。ルビーちゃんはプレゼントを見てて♪」
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「うんっ!」



(かわいい(笑)喜んでくれてよかった♪)
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ローリーの告白に気が滅入っていたこのみだが、ルビーの笑顔で少しは癒された。
けれど、彼女を思うとやはり心は重い。



当たり前の事だが、私にも過去があるように、ローリーにも過去がある。
ローリーと知り合って長くなるのに、そんな過去の話をローリーに聞く事もなかった。
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ローリーは出会った時からどんな物事にもめげず、
どっしりと構えている強い女性のように思えた。



そして私は、そんなローリーをいつだって頼りにしていた。
強くて頼り甲斐がある女性。
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そんな風に勝手に思い込んだ自分が腹立たしい。
彼女の心の辛さも切なさも、私は少しだって気にした事があっただろうか。



このみはふと気づいた。私はちっとも変わっていない。
りンダに頼りっきりのあの頃と同じだ…と。
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リンダがローリーに代わっただけの事じゃないの?
この町に来て、一人で自立するなんて聞いて飽きれる。



このみはなんだか泣きたくなった。不甲斐ない自分に。麗華との訳が分からない不安に。
そして、ローリーの思いに胸がざわつく。
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やがて、このみは亮の顔を一刻も早く見ようと歩を早めた。



「あの…ゴルゴさん…私…話と言うのは…私はあなたの事が…」
「好きなやつか…」
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「え…」
「正直…好きかどうかはまだ分からないけど…けど…」



「けど気になる奴ならいる…。実はおれ自身、最近気づいたんだ…。
はは…あんなうるせー女…信じられんねーよ…」
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「気になる人…?」



「ローリー…うるせーだろ…?」
「ローリーさん…?」
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「うん。あんなにこうるさくてちっとも女らしくない…」



「だけど最近気になってしょうがないんだ。
好きとか惚れてるとか…まだはっきりした事は自分の中でも分かってないけど…」
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「けど…アイツが気になる…」



一瞬、彼が何を言ってるのか分からなかった。けれどローリーを気になると言う事は、
私は告白をする前に振られたと言う事なのだろうか。
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告白をするのも初めてならば、失恋するのも初めてだ。
失恋?私はもう失恋してしまったの?まだ何も伝えていないのに。



いいえ、私はまだ失恋なんかしてはいない。
だって彼は気になると言ってるだけで二人は恋人同士ではないのだから。
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そう、勝算は私にもあるはず。沙織は自分でもビックリする程冷静に考えていた。
そして、驚くほどの独占欲が沸いてくるのを感じていた。



「なんか飲む?買ってくるよ」
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「ゴルゴさん…」
「何がいい?」



ガタッ…
ゴルゴさん!
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「ん?」
「私…あなたに聞いてもらいたい事があります。今日はそのためにあなたを呼んだんです」



「ああ、そっか…そうだったよな…。じゃ飲み物買ってくっからそれから…」
「いいえ、今すぐに聞いて下さい」
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「今?あ…ああ…分かった…(なんだ…?)」



「ゴルゴさん…私…私にも気になる方がいらっしゃいます」
「気になる?って、鈴之介だろ?」
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「いいえ、違います…」
「違うって…それはマズイべ?だってお前らは結婚す…」



「鈴之介さんと私は結婚しません。彼とは結婚出来ないんです…。
なぜなら…私は彼以外の方に恋をしてしまったからです…」
「恋?ってあの恋?…や…それは…」
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「私は…今、私の目の前にいる方が好きなんです…」
「目の前?」



「ゴルゴさん…私はあなたに恋をしています…。私はあなたが好きです…」
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「え…」



「私はあなたとローリーさんが恋人同士ではないのなら諦めません。
私の初めての恋を簡単に諦めたくはありませんから…」
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「沙織…ちゃん…?」
「今日はどうしてもその事をあなたに伝えたかったのです。では私はこれで失礼します…」



「さようなら」
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「ちょ…沙織ちゃん!」



「って………あれ?…えーと…俺に…恋?沙織ちゃんが?」
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「うっそぉ…」



(ゴルゴは今頃、沙織の告白にビックリしてるかな?
俺ってモテるな~とかって照れ笑いでもしてるんだろうな…きっと…)
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ローリーはその光景を思い出し、クスリと笑った。



二人はお似合いのカップルになるだろう。
ゴルゴは沙織を守り、そして沙織はゴルゴの隣で笑う…。
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(それから二人は…二人は…)



あいつはいつか…私を抱いたように彼女を抱くのだろうか。
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あの硬い体で彼女を抱きしめ、茶目っ気たっぷりの瞳で見つめるのだろうか。



嫌だ…。ローリーはパニックに似たような症状に陥った。
淋しさと切なさが猛威となって襲ってくる。
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いますぐにゴルゴの元へと駆け寄り、他の女を抱かないでと叫びたい。
だが、そんな事は絶対に出来ないし、そんな権利も私にはない。



やがて、ローリーは空気を思いっきり吸い込んで自分を落ちつかせた。
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人を愛すると、こんな風に弱くなる自分が嫌だ。
早くいつもの自分に戻らなければ…。



その時、後ろに人の気配を感じ、彼女は振り向いた。



「ローリー…」
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「あんた…」



「ローリー…頼む…俺の話を聞いてくれ…」
「シルヴァー…」
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「俺…淋しいんだ…。お前がいなくて淋しいんだ…。お前もそうだろ…?
俺がいなくて淋しかったろ?子供の事は悪かったと思ってる…。だけどあのと…」



「その話はやめてって言ってるでしょ!」
「俺…」
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「何よ!」
「後悔してる…。本当に後悔してるんだ、嘘じゃない。
俺にはお前しかいないって気づいたんだ。俺はお前を愛してる…」



愛してる…なんて…。あの頃、あんなに欲しかった言葉が色あせて見える。
今となってはもう、なんの意味もない。
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ローリーはなんだか笑いたくなった。
そして、涙が出そうになった。



彼を見ていると、今の自分を見ているようだったからだ。
弱くて愛に飢えてて淋しくて…情けない…。
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ああ…私とこいつは似た者同士だ…。



「入って…」
「ローリー…」
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「入んなよ…」
「いいのか…?」



「いいから入んなよ…」
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「ありがとう…」



その頃、鈴之介は絵の仕上げをしようと、キャンパスに向かっていた。
沙織への逸る気持ちを抑え、静かに呼吸を整える。
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だが、一向に気持ちが向かない。なんど瞳を閉じ、
気持ちを集中させようとしても浮かんで来るのはゴルゴと沙織の仲睦まじい光景ばがりだ。



この絵を仕上げ、それを最後に沙織の絵は描かないと決めていた。
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そしてこれできっぱりとけじめをつける…
それが男と言うものではないだろうか。



著作権者様から許可を得て、お借りしているBGMです。
よろしかったらお流し下さい。音量にご注意ください。






だけど…描けない…描けないんだ…。
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これを仕上げたら…あなたを忘れなくてはならないから…



「何を言ってるんですか…」
「頼む…無理は重々承知だ。だけどルビーを助けるにはこれしかないんだ…」
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「どう言う事なんですか…どうして俺と麗華が…」
「お嬢様が…お前と結婚出来るならルビーの移植をすぐにもやってくれると…。
もうルビーには時間がないんだ…頼む…ルビーを助けてくれ…」



「監督…冗談は…」
冗談じゃないんだ!
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「ただじっと移植を待ってたらルビーは間に合わない。一刻も早く移植しないと…。
頼む…もうお前だけが頼みの綱なんだ…ルビーを…ルビーを…」



俺が麗華と結婚?監督は何を言っているのだろう。
そんなバカげた話を真剣に言ってる事自体が信じられない。
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だが、もっと信じられないのは麗華だ。
監督をも引き込んでこんな話を持ち出すなんて。



「それは出来ません…。それにそんな事は犯罪ですよ…分かってるんですか?」
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「分かってるとも!そんな事は分かってるさ…。
だけどお前もいつか子供が出来れば分かる…俺の気持ちが…」
「監督…」



「ルビーをこのまま死なせたくない…。俺はルビーが助かるならなんだってする…
これが終わったら俺が責任を持ってすべてを償う…だから…」
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だから頼む!一生のお願いだ!あのお嬢様と…お嬢様と結婚してくれ…



「監督…」
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「亮……頼むよ…亮……ルビーを…ルビーを…」



(な…に…)
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(亮さんと麗華さんが結婚…?その代わりにルビーちゃんの心臓…?)



(そんな事…信じられない…)
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現実の事とは思えなかった。こんなバカな話が現実に存在するなんて。
こんな事はありえないしあまりにもヒド過ぎる。



こんな非現実的な事がまかり通る訳がない。
亮は物ではないのだ。
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彼は一人の人間だし、
取引材料に使われるような侮辱を黙って見過ごすなんて絶対にありえない。



だけど、麗華は頭がいいと彼女は思っていた。
亮の痛い所を衝く選択技に、監督を選んだのなら完璧だ。
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もちろん、亮はそれに従ったりなんかしない。
すぐに笑い飛ばして断るに決まっている。そう、絶対に断るはず。きっと…。



このみは不安そうに息を吸い込み、その場を立ち去った。
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やがて、彼女の頭の中で何かのパズルがハマった音を聞いた気がした。



麗華が作った複雑なパズルのピースが少しずつはまっていく。
カチリ…カチリ…と一寸の狂いもなく、そして確実に…完成に近づく…。
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警報にも似たキーンとする音が、彼女の頭の中で鳴り響いていた…。





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