第33話 「止められない恋心」

*二度目の恋 君に逢いたくて…第33話



沙織が部屋から出て行って数時間、鈴之介はいまだ立ち上がれないでいた。
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頭がボ~っとし、腰も抜けたように力が入らない。
まるで、沙織に身も心もすべて持って行かれてしまったかのようだ。



いったい彼女は僕にどうして欲しいのだろうか。
それよりも、僕を何だと思っているのだろうか。さすがの鈴之介も心が萎える。
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あんな事をされたら僕だって男だ。
鼻血もわんさか出るし、頭もボ~っとするのも無理はないではないか。



そんな事をブツブツと言っているうち、鈴之介はなんだか腹が立ってきた。
沙織にではない、自分にだ。
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ゴルゴには気になる人がいるらしい。
それでもゴルゴが好きだと、泣き叫ぶ彼女を見ても諦め切れない自分に腹が立つ。



もうやめたい。彼女を心の中から閉め出したい。
そうすればこんなに苦しくなくなる。
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だったら今すぐ閉め出せばいい。今すぐに彼女を閉め出して楽になろう。
なんて…そんなに簡単に行くはずが無い事は彼自身が一番よく分かっていた。



しかし、それでもやらなければ。それにはどうすればいい?
そうだ…恋を忘れるには新しい恋が一番…。
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そんな事をどこかで聞いた事がある。
けど、どこで新しい恋をすればいいのか、まったく検討もつかない。



でも待てよ…まずは出会いが肝心ではないだろうか。
女性と出会い…交流を持つ。それが先決だ。
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それにはどうすれば…?
そう言えば…いつかゴルゴさんがどこかで女性と出会って…



ガバ!
(そうだ!あの時彼は、女性と出会っていかがわしい所へ行ったと言っていた。
どこで出会ったのだろう?公園?それとも図書館?)
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(いや、そうじゃない…もっと暗い場所のような気がする…。
そうか、クラブだ!夜の街に繰り出し、クラブに行けば僕にも出会いがあるかも?)



鈴之介は考えれば考えるほど、とってもバッチグーな事のように思えた。
これで何もかもが解決する。
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ゴルゴに気になる女性がいるとしても、彼は必ず、沙織に振り向く。
あの愛らしい彼女に振り向かない男なんて、この世にいるわけがない!



なら自分も新たな恋をし、彼女はゴルゴと…そう…それが一番いいじゃないか。
そう、今の状況から抜け出すにはこれしかないし、鼻血を止めるのもこれしかない!
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(よーし…僕もやるぞ!二人に負けてたまるもんか!週末はクラブへ繰り出すぞ!)
と、鈴之介は心に誓い、いつになく男らしい顔面でキリリと姿勢を正した。



― 数日後 ―



一方、沙織から告白されてから数日、ゴルゴはずっと真剣に悩んでいた。
もちろん、彼女に告白されて多少なりとも浮かれなかったと言ったら嘘になる。
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彼だって男だ。女性から好きだと言われたら嬉しくもなるしニヤけたくもなる。
だが、やはりいくら考えても答えは変わらなかった。



彼女は可愛いとは思うが、どうしてもローリーの乳には負けてしまう。
とすれば答えは一つだ。
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彼女にはちゃんと断らなくてはならない。
しかし…自分にこんな事がくるなんて。



自慢じゃないが女の子から告白されて断った事は一度もない。
それはどうかと思うし、本当に自慢じゃないが(笑)
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けれどどうやって断ったらいい?電話一つで断るわけにもいくまい。
ここはやはり、面と向かって断るしかないだろう。



ゴルゴは電話で沙織を呼び出し、男らしく、誠実に、やんわりと、爽やかに、
そしてなるべく傷つかないように断る作戦を実行しようとしていた。
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「ゴルゴさん!」



「お待たせしてごめんなさい…用意に手間取ってしまって…」
「いや、そんなに待ってないよ。こっちこそ呼び出してごめん…」
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「いえ…。あの…私にお話があると言う事ですが…どんな…」
「うん…」



沙織はゴルゴに聞くまでもなく、どうして呼び出されたかぐらいは本当は察していた。
彼が自分を呼び出すと言う理由は一つしかない。
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この間の返事にNOと言われるのかYESと言われるのか、そのどちらかだ。
けれどまだ心の準備が出来ていなかった。



「あのさ…この間の事なんだけどさ…」
「はい…」
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「ごめん…君の気持ちは嬉しかったけど……けど俺は…俺は君の気持ちは受け取れない…」



「でも本当に嬉しかった…。って言うか驚いたって言うか…」
「ローリーさんが気になるからですか?」
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「それも…ある…」
「そうですか…」


「けど…」
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「まだ恋人ではないですよね?」


「え?」
「恋人ではないですよね?」
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「も…もちろん、まだ全然…全然…」



「なら私、平気です」
「は?」
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「全然平気です、私」
「平気って…何が…?」



「私、あなたが振り向いて下さるのをずっと待ってますので」
「待つって言われても…」
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「彼女と恋人同士ではないのなら私にもチャンスがあるって事です。
なので私はまだ諦めません」



「それとも今すぐにローリーさんに気持ちを打ち明けて恋人同士になるんですか?」
「いや…今すぐって訳じゃ…」
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「どうして今すぐではないのですか?
それに、ローリーさんの気持ちだってあなたにあるかどうか分かりませんよね?」
「そりゃーそうだけど…」



「あなたも今すぐに気持ちを彼女に言えないと言うことは、
それはまだゴルゴさんが彼女の事を好きかどうか分からないからなのでは?」
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「言うならば、まだ恋の途中と言う事です。確定ではありません」
「途中か…うまい事いうね…」
と、なんだか変な所に関心しているゴルゴ。



「そう、途中です。ゴルゴさん自身、まだ分からないとおっしゃっていましたし、
そう言う事ではないのですか?」
「それは…」
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「それとも、今すぐローリーさんの元へ駆け寄り、愛してる愛してる愛してる!
と、所構わず大声で連発できますか?」
「所構わず…連発…ですか…?」



「どうですか?!」
「所構わずはちょっと無理…」
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と、めちゃくちゃ強くなった沙織に押されっぱなしのゴルゴ(笑)



「私はなにも今すぐに私とお付き合いして下さいって言ってる訳ではないんです。
もう少し私を見て触って味わって下さいませんか?」
「はい?」
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「ですから見て触って味わうんです」
「見て…触って…味…わう…?」



「ええ、そうです!
私を試食すると言う事です!その上で断られるのでしたら私もキッパリ諦めます」
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ボソ…この娘…言ってる意味…分かってるんだろうか…」



「分かりましたか?」
「え?」
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「分かりましたね?」
「え…あ…はい…じゃなくて…いや…」



「では今週末にでもお食事に行きましょう」
「だからそれは…」
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「お食事だけです。それとも私とお食事するのも嫌なんですか?
お喋りするのも顔を見るのも同じ空気を吸うのも嫌なんですか!?」
「そんな事は…」



「ならお付き合いして下さい。楽しみにしていますので」
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「では週末に、ごきげんよう」
「ご…ごきげんよう…」




スタスタスタ
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「って…そうじゃねーし…。って言うか俺…何しに来たんだっけ?」



沙織は支離滅裂な事を言っているのは十分に分かっていた。
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だけどゴルゴにも言った通り、私をもっと見て欲しい。
それから答えを出してもいいではないか…。



彼女は初めての恋に必死だった。
ゴルゴにあんな事を言っても本当はギリギリのいっぱいいっぱいなのだ。
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きっとこの恋は報われないだろう…。
それでも、初めて感じた胸の高鳴りを、このトキメキを、忘れる事など出来ない…



「うっ…」
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彼をすぐにでも虜にさせる魔法があったらいいのに…。
彼をすぐにでも振り向かせる事の出来る恋薬があったらいいのに…。



「そうしたら……そうしたら……」
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沙織はそんな事を考えなら鼻をズルっとすすり、しょっぱい涙に顔をしかめた。



一方、このみとの結婚を急いだ亮。
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もう麗華に振り回されるのはうんざりだ。
あんな狂気じみた話なんて、考えるのもバカバカしい。



だが、麗華の本質を一番よく分かっているのも事実だった。
きっとあの話は本当だろう。麗華はやると言ったらやる、そんな女だ。
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けれど自分が結婚してしまえば済む事じゃないのか?
そうなれば麗華も諦めるし監督も目が覚めるだろう。



しかし問題はルビーだ。
早くドナーの順番が回ってくれればいいのだが…
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移植まではどれぐらい時間がかかるだろう。
それまで体力が持つだろうか…。



もし…間に合わなかったら…?
もし…間に合わなくてルビーが…
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まさか…そんな事にはならない…。
そんな事には絶対にならない…!



カチャ
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「ういーっス…お邪魔するよ~ん…」



ドサッ
「あーまいった…」
「ゴルゴ…なんだよ、いきなり…」
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「亮…俺…どうしよう…」
「何が?」



「マジでまいっちゃってんのよ…」
「だから何がだよ?」
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「こう…なんて言うの?俺の魅力が女を狂わせるって言うの?
俺の罪な魅力が女を惑わせるって言うの?」
「何言ってんだよ…」



「俺さ…沙織ちゃんに告られちゃった…」
「は?」
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「だから沙織ちゃんが俺にホの字なの!」
「沙織ちゃんって……鈴之介の?」



「そう…鈴之介の沙織ちゃん…。俺にメロメロらしくてさ…」
「いやいや、何かの間違いでしょ?」
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「間違いじゃないって!」
「いやいやいや…」



「だから間違いじゃないの!
彼女がさ、俺が好きで好きでどうしようもなくて飯も食えないんだって」
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「んで夢にも毎晩出て来て夜も眠れないからいっその事、好きにしてくれって言いにきたもん」
と、大袈裟なゴルゴ。



「いやいやいやいや…絶対に何かの間違いでしょ?」
「ほんとなの!何気に失礼な奴だな!」
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「嘘くせー…」
「嘘じゃねーし」←ちょっと嘘。



「ふ~ん…。で、どうすんの?」
「もちろん断ったさ…。だけど…ゴニョ…何故か又会って飯食う事になったって言うか…
沙織ちゃんが大きくなっておっかなくなったと言うか…」
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「いいんじゃね?だってお前は今は誰も惚れた女もいねーんだろ?
ローリーとかローリーとかローリーとかも好きじゃねんだよな?」
「お前…なんでそう言う意地悪言うの?」



「意地悪?本当の事だろ?
この間そう言ってたじゃねーか。あ、それとも何?もしや気づいちゃったとか?」
「何がだよ…」
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「例えば、ローリーが好きで好きでどうしようもなくて飯も食えなくて
夢にも毎晩出て来て夜も眠れないからいっその事、好きにしてくれって感じ?」



ガバッ!
「め、飯は食える…」
「夢はほんと?」
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ゴニョ…ほんと…」
「ふーん…」と、ニヤリ



「だったらちゃんと断れよ。気を持たせる真似なんかしねーで」
「だから断ろうと思って呼び出したんだけど…」
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「四の五の言わずにきっぱりと断れ。んでローリーにちゃんと言え」
「それは無理…」



「なんで?」
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「カンベンしろよ~何て言うんだよ!あのローリーだぜ?夢にも毎晩出て来て、
特に乳が大、大、大活躍で、だからすぐにでも一発やらせてって言うのか?」



「お前…素直に好きって言えねーのかよ…」
「言えない」←キッパリ
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「じゃあれだ、あれ。例え話とかで告るとか?」
「どんな風に?」



「例えばだな…ローリー…俺は空気がなければ生きていけない…
お前は空気だ。俺は空気がなければ死ぬ…」
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「つまり俺には君が必要なんだ…。
ローリー!俺はお前なしじゃ生きていけない!生きて行けないんだ!」



「とかは?」
「亮…」
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「何だよ?」
「いつからそんなロマンチックなキャラに?」



「おかしい?いかにもお前が言いそうだろ?」
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「俺はそんな事は絶対に言わない。俺が言うとしたらこうだな」



「ローリー、お前は俺の晩御飯のおかずだ。
俺はおかずがなければご飯が食えない(発射しない)」
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「飯が食えなければ俺は死ぬ(もだえ死ぬ)だから俺におかず(乳)を提供してくれ」



「………」
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「素敵…」



―アパート―



ドンッ!
「キャッ!」
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「おっと…!」



「あ…ごめんなさい!私ったらボ~っとしてて!」
「いや、俺もボ~っとしてたから…。こっちこそすみません…」
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「いえ、そんな…私の方こそ本当にごめんなさい…」



「そんなお気になさらず。本当に大丈夫ですので。君こそ大丈夫?」
「ええ、私も大丈夫です。前を向いて歩かないからこんな事になるんですね」
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「それは俺も一緒です。おたがい、ちゃんと前を向いて歩かなければなりませんね」
「そうですね(笑)」



「では私はこれで失礼いたします」
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「ええ」



「って…あれ?君もここのアパート?」
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「え…」



「な~んだ、俺もなんだ。その真ん中の部屋だよ」
「真ん中…?でもそこはローリーさんの…」
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「あ、ローリー知ってる?」
「ええ…知ってますが…」



「そのローリーと一緒に住んでんの」
「ローリーさんと…?」
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「そう。居候の身だけどね。いや~ここは中々いい所だね。
静かだし町にも意外と近いし。ここにずっと住んじゃおうかな~」



(ずっと…?それはもちろん、ローリーさんと一緒にと言う事よね…。
どう言う事なのかしら…。一緒にと言う事はローリーさんの恋人なのかしら?)
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(けどローリーさんに恋人がいてもおかしくないわ…。
だって彼女はゴルゴさんを好きな訳でもないし…。それとも彼女も…)



「俺はシルヴァー、よろしく♪」
「あ…はい…私は沙織です。よろしく…」
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「じゃ又」
「あの…差し出がましいようですが…あの…ローリーさんとは…」



「シルヴァー!帰ったの?早かったじゃん。今日はどうだった?仕事は見つか…」
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「あ……」



「沙織…」
「ローリーさん…こんにちわ…」
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「うん…こんにちわ…」
「ローリー、彼女もここのアパートだったんだな。さっきそこでさ…」


「シルヴァー、先に家に入ってて」
「え…」
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「いいから先に入って…」
「あ…ああ…分かった…」



「あの…ローリーさん…私知らなくて…その…シルヴァーさんと…」
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「うん…」



「彼と……一緒に暮らしているのですか?」
「暮らしてるって言うか…まあ…ほんのちょっとの間だけね…」
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「そうですか…」
「勘違いしないで。だからといってアイツとはそんなんじゃないから。
アイツはたんなる友達だよ」



「友達…?」
「今はね…。けど…昔は恋人だった…」
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「昔…」
「あくまでも昔よ…」



何故沙織に言い訳しているのだろう。別にどう思われたっていいはずなのに…。
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誰にどう思われたって関係ない事だ。
なのに何故言い訳してるの…



「じゃ…またね…」
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「あ…はい…」



「………」
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「………」



カチャ…
「なに?あの娘となんかある訳?」
「別に…何もないよ…。ところで今日はどうだった?仕事は見つかった?」
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「それが中々な…」
「家は?家も見つかんない?」



「それがさ…いい物件があったんだけど家賃が高くてな…。
とてもじゃないが今の俺には払えない。分かるだろ?その…仕事がさ…」
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「そう…。しょうがないね…又明日探しなよ…」
「ああ…」



(ローリーさんの昔の彼?ローリーさんはそんなんじゃないって言ってたけど…
けどいくら昔の彼でも一緒に住んだりなんかするかしら…)
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(例えどんな事情があっても一緒に住んだりなんか…)



(そうよ…きっと二人は恋人同士なんだわ。だから二人は一緒に暮らしてるのよ…。
でも…だとしたらゴルゴさんは片思いと言う事に…)
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(もし…この事を彼が知ったら彼は諦める?諦めて私を見てくれる…?)



ピっ…
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(電話をしてどうするつもり?彼に何を言うつもりなの?だけど…
そうよ、だけどこの事を知ればきっと彼はローリーさんを…)



(それに、恋人がいる人を思ってても仕方がないでしょ?そんな恋は辛いだけよ…)
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(だったら知るのは早い方がいいわ…)




そう…思いが重くなる前に早く…



「あ…ゴルゴさんですか…?」
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「私…沙織です…」



「え?アパートに?だからさ…」
「いや…それは…」
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「だけどさっきも言ったけど俺はやっぱり…ちょ…沙織ちゃん待って…沙織ちゃん!」



ツーツーツー…
「って…切れてるし…」
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「誰?」
「沙織ちゃん…」



「沙織ちゃんから?ちゃんと断ったか?」
「断る前に切られた…週末…アパートに迎えに来いってさ…」
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「なにやってんだよ…」



「だって仕方ねーだろ。それにやっぱさ、断るにしても電話って訳にも行かねーし。
俺だって困ってんだよ…」
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「まったくお前は…どうなっても知らねーぞ」
「今度はちゃんと言うって…」



― 週末 ―



「今日こそ見つかるといいね」
「そうだな…。ごめんな…」
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「いいよ、言い出したのは私だし」
「悪い…」



「いいって。今日は私も付き合ってあげる。駅前の不動産屋に行ってみようよ。
それがダメなら町外れの不動産屋にも行ってみてもいいし。仕事はその後で探そう」
「いや、俺一人で…」
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「今日は私も行くわよ。バイトも休みだしさ」
「けど…」



「おはようございます」
「沙織…」
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「お二人でお出かけですか?」
「うん…ちょっとね…。沙織もどこかへ出かけるの?」



「ええ、これからデートなんです」
「デート…?」
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「はい、ゴルゴさんと。まだデートと言う形ではありませんが、それでも私にはデートなんです(笑)」
「そっか…」



「じゃ…楽しんでね…」
「ええ、お二人も」
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「私達は別にデートって訳じゃ…。ま…いいけどね…
よかったら駅前まで一緒に行く?どうせタクシーで行くから」
「いいえ、ゴルゴさんが迎えに来ますので」



「え…」
「もうすぐ来ると思います」
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「アイツが…もうすぐ…来る…?」
「ええ…もうすぐ…」



「あ…じゃ私達はお先に…行こう、シルヴァー」
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「ああ」



沙織ちゃん!
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「ごめん、車が混んでてさ、ちょっと遅れ……た……」



「ローリー…」
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「ゴルゴ…」



(なんか今会いたくないんだけど…。特にこれから沙織ちゃんと出かけるとこなんて…。
ま、別に何しに行く訳でもねーけどよ…)
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(ってか…隣にいる男は誰?)



「すみません、わざわざ…」
「いや…いいけどさ…」
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「沙織ちゃんのお友達?」
「ええ…そうです」



「あ…あの…ゴルゴさん…ご紹介しますね」
「あ?」
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「彼はシルヴァーさん…。彼もここのアパートにいるんです」
「ここに?けどここってもう一杯なんじゃ?」



「ええ…ですから彼はローリーさんと一緒に暮らしているんです…。
お二人で………暮らしてるようです…」
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「沙織…」



「ローリーと一緒に暮らしてる…?」
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「そうですよね?ローリーさん?」



「そう……」
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「一緒に暮らしてる男…」



「へえ…」
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「そうなんだ…」



「あんた達はこれからデートなんだって?」
「やだ、ローリーさん…さっきも言いましたけど私達はまだデートと言う形では…」
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「いや、デートだ」



「ゴルゴさん…」
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「俺達はこれからデートさ」



「行こう沙織ちゃん」
「はい…」
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(ゴルゴ…)



「………」
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「………」



(へえ~…)
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(そう言う事ね…)



(そうよ…)
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(叶わぬ恋は辛いだけ…)





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