第2話 「再会」

*二度目の恋 君に逢いたくて…第2話


隆に別れを告げられた翌日、
このみはローリーからの質問攻めを避けるように教室の隅で授業を受けていた。
何と言えばいいのだろう?
プロポーズが一転して振られたなんて絶対に笑われそうだ。



(嫌だな…。知らんぷりして帰っちゃおうか?でもダメだ。どっちみちバイトで会っちゃうし)
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(はあ…なんとか見逃してくんないかな…?)
 


隆との別れが辛くなかった訳ではない。
一年も付き合ったのだ。それなりに淋しさはある。
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だが、ジーンに恋した時のように隆を繋ぎとめようとは思わなかった。
夕べ気がついたように、熱くなれない自分がいる。



そう、隆と付き合った理由も今なら分かる。
私は恋なんかしていなかった、ただ淋しかったのだ。
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絵をやりたいと意気込んで出て来ては見たが、ちっともうまく行かない。
自分より上手な人がわんさかいる事に驚いた。



それでもなんとか自分を振るい立たせ、必死に絵を書き上げてもどこか違う。
幼い頃、画用紙に向かって書いたような純粋な絵がどうしても書けない。
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何もかもを放り出して故郷に帰りたかった。
仲間がいるサンセットバレーに帰りたい…。



彼と出会ったのはちょうどそんな時だったのだ。
私は…彼に逃げていただけだ…。
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「振られるのも当然よね…」
と、彼女は小さなため息をついた。



「こ・の・み♪」
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「うふふふ…」



「ローリー…」
「なに朝から逃げてんのよ?」
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「逃げてなんかいないわよ…」
「幸せを一人占めしようってわけ?」



「ローリー…あのね…」
「はいはい、言わなくても結構。で、結婚式はいつですか?」
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「だから違うの…」
「何が?まさか結婚式はしないとか?それは絶対にダメよ!」



「だから…」
「あのね、このみ!よく聞きなさい。
友達の結婚式は私にとって最高の出会いの場なのよ!それを取り上げる気?!」
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「そうじゃなくて…結婚は出来ないの、振られたから…」
「そうよ、結婚は……って…」



「え?」
「振られちゃったの…。…隆君に好きな子が出来たんだって」
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「嘘…」
「ほんと…」



「なにそれ…」
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「しょうがないよ…こればっかりはさ…」



「って、あんた!隆君にバージンまであげた…」
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「ローリー!声がデカイ!」



「だってさ…あんた、隆君と寝たって言ってたじゃないっ!
バージンまであげたのよ!これじゃやり逃げじゃないの!」
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「そんな言い方やめてよ!私はもう子供じゃないのよ!
ちゃんと私は自分の意思で隆君とそういう風になったんだからっ」



「そうだけどさ…」
「もういいわ。それに、私も悪かったから」
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「なんであんたが悪いのよ?悪いのは浮気した隆君じゃない!?」
「浮気なんかじゃないってば。
隆君はちゃんと誠意を持って私に正直に話してくれたもの」



「私ね…勘違いしてたの…」
「どう言う事よ?」
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「隆君に別れてくれって言われた時にさ、正直仕方がないって思ったんだよね」
「何で?」



「私ね、隆君に言われたの、何を考えてるのか分からない時があるって…。
自分の事を好きなのかどうか分からなくて会社の女の子に相談したって」
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「それを言われた時に分かったの…。彼が不安に思うのも無理ないって。
だって私…本当は隆君に恋なんてしていなかった…」



「もちろん、一緒にいて楽しかったし、ドキドキもしたりもしたわ…。ただね…」
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「何て言うかな…切ないって言うかさ…恋しくてどうしようもないって言うかさ…
そんな風に感じた事が一度もなかったの…」



「だから悪いのは私なの。隆君が違う子を好きになるのも当然よ」
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「最低でしょ?私って」
「このみ…」



「でも…何となく分かるな、それ…」
「分かる?」
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「うん、分かる。狂おしいほどの切ない恋をしてみたいんでしょ?
胸が締め付けられるような恋をさ…。確かに、隆君とじゃ無理かもね。彼はおだやかだもん」
「ローリー…」



「私だって思うもの。女に生まれたからには嵐のように突然素敵な男性が現れて、
情熱的な恋をしてみたいって!」
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「嵐ってほどでもないわよ(笑)」



「ま、いいわ。こうなったら合コンに片っ端から参加して、情熱的な恋を探すか!」
「ローリーったら(笑)合コンの前に今夜はバイトでしょ?」
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「そうだった(笑)このみも今日は入ってるよね?」
「うん、入ってる。働かなきゃね。次のコンテストに使う絵の具代を稼がなくっちゃ」



その日の夜
― パブ『ウオンテッド』 ―



カランコロン♪
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「いらっしゃいませ~」



(今日はいるかな?)
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と、彼はキョロキョロと周りを見回した。



「いらっしゃいませ、お一人様ですか?」
(あの可愛い子ちゃん、いないのか?)
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いらっしゃいませ!お一人様ですか!?



「あ、ああ…はい、お一人様です…」
「ではカウンターへどうぞ(普通、自分に様なんてつける?変な奴)」
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「はい…(この女…声がデカイんだよっ!)



(ゲー!マジいないよ…。辞めちゃったとか?)
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(嘘だろ…せっかく来たのに…)



「あの…」
「はい?」
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「ちょっとお伺いしますが、このお店に凄く可愛い娘がバイトしてるでしょ?
髪が肩ぐらいまであってちょっと幼い感じの娘」
「すんません…僕、昨日から入ったばかりで分からないんです…」



「そうですか…分かりました」
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(最悪…。どうしよう?帰ろうか?居ないんならしょうがねーもんな…)
「……うもんは…?」



(そうだな、明日また出直すか!)
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ご注文は!



「ああ、すみません、やっぱり帰ります…」
「席に座ったら必ず何か頼んで下さい。何になさいますか?」
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「…えーと…(仕方ねーな…)じゃカクテルを下さい」
「何のカクテルですか?ちゃんと言って下さらないと分かりません」



「むっ。…ボソ…それが客に対する態度か?…」
「何かおっしゃいましたか?」
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「いいや、何にも」



「そうだな…じゃ俺にお似合いの、”夜の銀狐”を一杯下さい」
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「プッ…」



(この女…今笑った?笑ったよな?何がそんなにおかしいんだ?あ?)
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「かしこまりました。お客様にお似合いの、”夜の銀狐”をすぐにお持ちします」



(何、今の女?ムカツク女だな…)
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ボソ…きっとあの日だな…



(むっ。聞こえてるってーの!
あの日ってどの日かちゃんと口で説明して見なさいよ?! え?!)
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と、ローリーは客の耳元で大声で怒鳴ってやりたいのを必死で堪えた。



「このみ~もうダメ!」
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「最悪~!!!」



「どうしたの?」
「腰が痛い…」
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「ああ…あの日か…」
って、ゴルゴ、正解じゃん(笑)



「休んでれば?後は私がやるからローリーは少し座ってなよ」
「ごめん…」
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「いいよ、もう少しすれば客足も引くから」



(あーあ…失敗したな…。
初めて会った日に思い切って電話番号とか聞いとけばよかった…)ブツブツ…
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「お客様、お飲み物をお持ちしました」



「ああ、はい。…って、え?」
「こちらをご注文されましたよね?」
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「は、はいはい!注文しました、しました!」



「ではどうぞ」
「は、はい…」
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と、『はい』しか言えないゴルゴ。



(ラッキー♪あの娘いるじゃん♪どうする?どうやって誘う?)
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(四の五の言ってねーでズバリ、名前を聞けばいいんだな!そうだ、まずは名前だ…。よし!)



そして彼はゴクリとツバを飲み、彼女を呼び止めた。



「あの…」
「はい?」
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「えーと…」
「ご注文ですか?」



「え?」
「何をお持ちしますか?」
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「あ、うん…あの…では… ”夜の銀狐” をもう一杯!」



「かしこまりました♪」
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(うっ…可愛い…。やべやべやべ…やべー!!!)



(マジ可愛い…)
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「って…」



(違うだろ~~!なに注文してんだよ!)
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(俺の意気地なし~~!)



「お待たせいたしました」
「ありがとうございます。次は ”君の瞳にノックアウト”を一杯下さい」
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と、意気地なしのゴルゴは結局この行動を何回も繰り返した(笑)



そうなると当然、アルコールは体内にグルグルと回り出す。
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7回目ぐらいまでは覚えていたが、その後の記憶はほとんどない。



― 数時間後 ―



「ちょっと…」
「ん…」
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「ちょっと!」
「…ん…」



「起きなさいよ!」
「んん…」
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「もう店は終わりよ!とっとと帰ってちょうだい!」



「ローリー…もうちょっと小さい声で言いなよ…」
「だってデカイ声でも出さなきゃ起きやしないじゃん!」
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「……うるせー…」
「うるせーじゃないわよ!店はもう終わったの!早くお勘定を払って帰ってよ!」



「うるせー女だな!耳元で怒鳴んなよ!」
「だったら早く起きて帰んなさいよ!」
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「言われなくても帰るよ!いくら?」
「300シムオリオンでございます」



「300?高くねーか?」
「あんた、いったい何杯飲んだと思ってんの?え?」
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「分かった、払うよ!ったくよ…」ブツブツ…
「つべこべ言わないで早く払いなさいよ!」



「まじムカツク……払えばいんだろ、払えば。いま…払…」
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「あれ?」



「なによ?」
ない
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「は?」
「ズボンのポッケにいれてあった財布が…ない!



「ちょっと~!最初から飲み逃げしようとしてたわね!このみ、警察を呼んで!」
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(このみ…?あの娘、このみちゃんて言うのか…ってそうじゃなくて…)



「ちょっと待てよ!何が警察だよ!俺はちゃんと財布を持って来たぞ!」
「ほんと~?」
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「ほんとだよ!ちゃんとズボンの後ろに入ってた!」



「嘘くさ~い」
「むっ。何が嘘なんだよ!だいたい、俺はここまでタクシーで来たんだ!
タクシー代だってちゃんと払ったんだかんな!」
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「そんな事知らな~い。私、見てないも~ん」
「このアマー…」



「ロ、ローリー、信じてあげようよ…。きっと本当だと思うよ…」
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「信じてくれる?君はいい娘だな~♪ ボソ…この女と大違い…



「むっ。聞こえてんだけど?」
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「俺は何も言ってないけど?」



「あの…じゃ明日にもお金を持って来てもらえますか?それまで私が立て替えておきますから…」
「必ず、必ず持ってくるよ!」
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「このみ!あんたがそんな事する必要ないよ!」



「ローリー、そんなたいした金額じゃないんだからいいわよ。
明日は必ず持って来てくれるって言ってくれてんだから…」
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「ダーメ。私はそんなに甘くないわよ!」
「ローリーったら!」



「分かったよ。今すぐ俺の知り合いに持って来てもらう。
俺もこのままだと気が収まらねーぜ!」
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「なんだ、じゃすぐに持って来てもらってよ!」
「分かったよ!」



(ったく…本当にムカツク女だな…)ブツブツ…
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(亮、いるかな?)



ヒソ…ローリーったら…いいじゃない…
「このみは人が良過ぎるのよっ。それでなくても私達は貧乏なんだからっ。
それにもし明日持って来なかったらどうすんのよ!バカを見るのはアンタなんだかんね!」
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「でもそんな人には見えないよ…」
「いいから、立替なんてダメよ。いいじゃない、知り合いが持って来てくれるって言ってるんだから」



「すぐに来るよ。もう少しだけ待ってくれ」
「10分よ、10分。それを過ぎたら警察ね」
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「おー!警察でもどこでも突き出せよ!」
「ふんっ」



― 10分後 ―



「10分経ったけど本当に来るの?嘘ついてんじゃないの?」
「後50秒残ってる」
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「41秒よ」
「43秒だ」



(なんかこの二人…凄く似てない?)
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(性格が似てるって言うか…)



バタン
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「ゴルゴ!」



「な?ちゃんと来ただろ?」
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「俺は嘘なんか言ってねーよ」



「あら、残念。今夜は留置場のふわふわのベットで眠れるはずだったのにね~」
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「それはそれは残念。俺もふわふわのベットで寝たかったな~」



「ゴルゴ、どうしたんだ?財布をなくしたのか?」
「悪いな、亮。どっかに落としちまったらしい」
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「バカな奴(笑)いくら?」
「300シムオリオン」



「ちょっとこのみ…」
「ん?」
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「あの人さ…有名なサッカー選手に似てない?」
「あの人って?」



「あのバカな男にお金を持って来てくれた人よ。ほら有名なイケメンの選手がいるじゃない…」
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「イケメンって…」



(あれ?)
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(え?)



「このみちゃん?」
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「亮さん!」



二人は二年ぶりの再会だった。




続き、第3話へ 「故郷の匂い」
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