第41話 「運命の別れ道」

*二度目の恋 君に逢いたくて…第41話


ついに沙織に爆発した鈴之介。
彼女に母のようだと言われた瞬間、頭にカッと血が昇ってしまったのだ。



そしてそんな風に思われてもまだ、
彼女への未練を断ち切れない自分が腹立たしくもあり、情けなくもあった。
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幼い頃、彼女を見た瞬間に恋をし、ドキドキした自分が情けない。
その彼女への思いを、何年も色あせる事なく思い続けた自分が情けない。



やがていつの日か、彼女も自分に恋をしてくれるのならば…
そんな幻のような夢物語を胸に秘めていた自分が情けなかった。
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所詮、すべては夢だったのだ。
現実は恋どころか、彼女は僕を男として見ていなかったのだから。



ああ…もっと早く気づくべきだった。
彼女が僕以外の男性に惹かれた時点で、きっぱりと諦めるべきだった!
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けれどそれはまだ遅くはない。今からきっぱりと断ち切ればいいのだ。
そして自分も、彼女以外に愛する人を見つけなければ。そう…



いま…すぐに!



「沙織さん…もう僕達は婚約者同士ではないのです。
ですからこんな風にあなたにしょっちゅう抱きつかれたりされるのは正直言って迷惑です…」
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「迷惑…?」
「ええ、迷惑です…」



「さき程の……あんな乱暴な言い方をしたのは謝ります…。
ですが僕も男だと言う事をあなたに知って欲しかったのです…」
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「僕はあなたの母なんかじゃありません…」



「ご…ごめんなさい…私…そんなつもりでは…」
「それに僕にも最近、気になる方がいます…」
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「あなたには信じられないかも知れませんが…
僕を素敵だと言って下さる女性がいるんです…僕をとてもセクシーだと…」



「鈴之介さんを…?」
「ええ、つい最近出会ったばかりですが、とても素敵な女性です。僕はその女性と…」
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「その……女性と…?」



「ホップ…ステップ…ジャ~~ンプ…」
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「って感じ…」



「そう…その女性と…ホップしてステップしてジャ~~~ンプしようかと…」
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「ホップ…ステップ……ジャ~~~ンプ…?」



「ですからあなたとこんな風に抱き合うのは、もうやめたいんです」
「鈴之介さん…」
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「冷たいようですが、もう僕に泣きつくのはやめて下さい!」
鈴之介はぴしゃりと言った。



「私…」
「僕とあなたはもう他人です。婚約を解消したあの日から、
僕達は違う道を歩み始めたと…僕はあなたにそう言ったはずです。覚えていますか?」
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「え…ええ…それは覚えていますが…。でも…」
「もう帰って下さい…」



「鈴…」
「帰って下さい!」
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「お願いですから…もう…」
「鈴之介さん…」



「分かりました、帰ります…」
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「帰ります!」
ダッ!



「そう…これでいい…」
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「さようなら…沙織さん…」



沙織は逃げるように自分の部屋へ向かって駆け出した。
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あんな鈴之介を見たのは初めてだった。
彼はいつも優しく、物腰が柔らかで紳士な男性だ。



ましてやあんな事を女性に言うような男性では断じてない!
それなのに…どうして…
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どうして突然あんな言い方をしたの?あんな…犯すだなんて…



パタン!
彼女は家に入ったとたん、胸がドキドキして苦しくなった。
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いいえ、あれはいつもの彼ではない。いったいどうしてしまったのか…。
あんな風に突然怒鳴ったりなんかして…。



それに…気になる人…。
気になる人?鈴之介さんに?彼に…気になる…人…
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そう思ったとたん、沙織の心臓はキューっとなり、もの凄い勢いで動き出していた。
それは母のように思っていた彼が、急に遠くに行ってしまうと感じたからだろうか。



それとも…
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彼が妙に男らしく、そして逞しく見えたせいなのだろうか…
そのどちらなのかは、沙織にも分からなかった…。



-翌日-



コンコン…コンコン…
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「ローリー…いる?私…このみよ…」



「ローリー…?」
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カチャ
「なに…?」



「ローリー…」
「なによ?」
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「うん……」



「入れば?」
「いいの…?」
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「いいよ…」



「座って。お茶でも入れるよ」
「ローリー!」
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「うん?」
「夕べはごめん…」



「まったくだよ…」
「ほんとにごめん…。私、言い過ぎたわ…」
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「確かに、言いすぎ」
「わ、分かってる…。だから私…」



「ぷっ」
「え?」
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「すっごい顔(笑)」
「な、なによ…」



「だって(笑)今にも泣きそうな顔してんだもん(笑)」
「そ、そりゃ当たり前でしょ?私…」
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「もういいよ。こうやって謝りに来てくれたから許す」
「ローリー…」



「それにあんたの言う事も一理あるからね」
「え……」
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「このみ…私さ、自分に嘘ついてた…。
ゴルゴの事でさ…口では私なんかより沙織の方がいいに決まってる…」



「な~んて言ってたくせに、ほんとはそう思ってなかった…。嫌だったんだ。
もしアイツが沙織とほんとに付き合ったらどうしようってずっと思ってた」
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「で、いざ沙織の口から付き合ってる…なんて聞いたらさ…
ゴルゴに腹が立って仕方がなかった。沙織にもイラついた…。矛盾してるよね…」



「え?ちょっと待って。ゴルゴさんと沙織ちゃん…付き合ってるの?」
「そう言ってたよ、沙織は」
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「それは嘘よ…」
「なんで?」



「なんでって…」
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(だってあの時…)



「どっちなんですか?!誰を好きで誰と一番やりたいのか、
自分の気持が分からないんですか?!」
「こ、このみちゃん…だからちょっと過激…」
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どっち!



ローリー!
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キッパリ!



「と、とにかく、私はゴルゴさんは沙織ちゃんと付き合ってないと思うわ」
「でももういいの…。もういいんだ、このみ…」
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「ローリー…そんな投げやりな…」



「勘違いしないで。私が言ってるのは付き合ってても関係ないって意味。
私、ゴルゴに飛び込んで見る」
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「嘘…」
「やってみる」



「ローリー!」
「うわっ!」
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「よく言った!」
「なによ、急に」



「それでこそローリーよ!」
「そうかな?」
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「うん……うん!」



「でもその前に…沙織にちゃんと言うよ。私もアイツに惚れてるって事、ちゃんと言わないと。
フェアじゃないのは好きじゃないんだ…」
「そうだね…」
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「なに泣いてんのよ(笑)」
「だって…」



「ところで、あんたは何があったの?」
「え…」
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「何かあったんでしょ?」
「私…?  私は何も…」



「嘘よ」
「ほんとに何もな…」
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「絶対に嘘。亮さんと何かあったんでしょ?」
「ローリー…」



「ほら…何があったのか言ってごらん?………ん?」
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「言ってごらんって」



「私…亮さんが好きよ…」
「知ってるわよ(笑)」
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「ほんとうに大好きなの…」
「だからぁ~知ってるってばっ(笑)」



「でもね……」
「このみ?」
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「でも……ね…」



一方、鈴之介は夕べの沙織に対して言い放ったあの言葉に、
意外にもスッキリしたものを感じていた。
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もちろん、彼女を傷つけた事に少しの後悔もなかったと言ったら嘘になる。
その証拠に、彼は夕べほとんど一睡も出来なかった。



だがしかし、母と思われているのだけはどうしても我慢がならなかった。
仮にも一時は婚約していた男に対し、それはあんまりではないか。
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いくらなんでもそれは情けなさ過ぎる。



それに彼女は僕が言った言葉はすぐに忘れ、今日も愛しい彼を思っているに違いない。
母と思ってるような男の言葉なんて気にもしないだろう…。
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そうさ…。僕達はもう、違う道を歩み始めたんだ。
幼い頃の夢は所詮、幻。あの少年時代の恋はもう卒業するのだ。



やがて、鈴之介は大きく深呼吸した。
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そして受話器を取り、男になるための一歩を踏み出した。



ツルルルルルル♪
ツルルルルルル♪



「あ…突然、電話してすみません…」
「あの…僕を覚えていますか…?えと…少し前に一緒に食事した…」
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そう…彼はゴルゴと同様、動き出したのだ。



幼い頃から続いた恋の魔法を解き放つために。
幼い頃から夢に見た幻を闇に放り投げるために。
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そしてもちろん!
新しい未来へ向かってホップしてステップしてジャ~~~ンプ するために、だ!



だが、一つだけ鈴之介は間違っていた。
それは沙織が自分の言葉なんて気にもしないだろうと思っていた事だ。
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実際には、沙織は大いに気にしていた。ビックリしたと言う方が正解だろうか。



あんな風に彼が言うなんて夢にも思わなかった。
出会った時から彼は温厚で、声を荒げると言う事が一度もなかったのだ。
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しかも彼は私を『犯す』と言った。あんな野蛮な事を彼が言うなんて信じられない…。



「鈴之介さんが私を おかず…?…こかす…犯す…?」
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「まあ…」
そして彼女は夕べからその言葉がグルグルと頭を回っていた。



あんな事を言った彼を野蛮に思うが、しかしその反面、一瞬ドキッとした。
彼が突然、逞しい男に見えたのだ。
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それに彼が私以外に素敵な人と出会ったと言っていた事も引っかかる。
どんな人なんだろう?どこで出会ったの?



今まで私に向けられたあの優しい笑みも、そして柔らかい声も、
これからはすべてその女性に向けられる。
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もちろん、私達は婚約解消したのだから、私にはもう関係ない事だ。
なのに何故こんなにも気になるの?



いいえ、気にする必要なんてない。それは間違いだ。
それに、彼はあんな野蛮な事を言う男性だったんだわ…。
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あんな…犯すなんて…犯す……



突然彼女は立ち上がり、本棚へと向かった。手に取ったのはもちろん、辞書だ。
そう、彼女の次の行動は、「お」の頭文字のページを開く事だろう。
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そして改めて「犯す」を言う言葉を調べる事は間違いない(笑)



「その考え、間違ってる」
「分かってる…。だけど仕方が…」
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ローリーにすべてを話したこのみ。
ローリーの優しい問いに、ついに崩れ落ちてしまったのだ。



「このみ…あんたの気持も分かるけどさ…でもそれはおかしいよ…」
「じゃどうすればいいの!
このまま黙ってルビーちゃんを見殺しにすればいいって言うの!?」
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「落ち着きなって…。誰もそんな事は言ってないでしょ?だけど…」



「けれど私が亮さんとこのまま結婚したらそう言う事になるわ!
ローリー……本当にもう時間がないのよ…。ルビーちゃんはもう…」
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「このみ…」



「もし私達が結婚したとして…その後彼女に万が一の事があったら私…耐えられない…」
「だけどさ…じゃルビーちゃんが大人になってその事を知ったらどうすんの?
大好きな亮さんとあんたが自分のために別れたと知ったら…」
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「そんな先の事なんて考えられないわ。今は移植を優先に…」



「あんた、神様?」
「え…」
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「神様なのかって聞いてるの」
「ローリー…なにいって…」



「私はね、このみ…。人の命はさ…神様が決めてると思うんだよ…。
彼女にもし万が一の事があったとしても、それは神が定めた彼女の運命だよ…」
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「それを彼女が違法な手段で移植を受けて命を長らえたら、きっと神の怒りに触れる。
そしてきっとその代償は必ずやって来る」



「だからね…移植が間に合うも間に合わないも…すべて定めだよ。
悲しいけど、それが彼女のさ。違う?あんたと亮さんが別れて、無理に移植を早めても…」
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「もういい…」
「このみ…」



「ローリーは当事者じゃないからそんな事が言えるのよ…。確かに運命かも知れない。
けど、だからって仕方がないわねって笑って過ごせる?」
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「亮さんと二人、幸せそうに何食わぬ顔で過ごせると思う?」



「無理よ…無理だわ…。
ローリーはあのルビーちゃんの諦めた顔を見てないからそんな事を言えるの…」
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「彼女はもう…生きる事を諦めてる…。あんなに幼いのに…」
「このみ…だから落ちつい…」



「昨日、ルビーちゃんが倒れた時に言ったのよ!私はもういいって!
もういいって父親に向かって言ったのよ!」
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「それを聞いた時の父親の顔と…亮さんの絶望の顔!あの時の顔は忘れられないわ!
それを見てないからローリーはそんな事が言えるのよ!」



言えるのよ!
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このみ!



ああ…私は何を偉そうに、あんな事を言ったのだろう?
いつも大人しいあの彼女が、あんな風に声を荒げる程、パニックに陥っている。
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きっと何日も悩んでいたのだろう…。簡単に出した答えではないはずだ。
あの答えを出した経緯の裏には、相当な心の葛藤があったに違いない。



そう…それは自分が一番よく知っている…。
昔…子供を中絶した時に、自分が経験した事ではないか…。
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中絶以外に道はなかったのか?中絶するくらいなら、なぜ避妊をしなかったのか?
それは当時者以外の人間ならば、誰もがそう思う疑問だろう。



現にその当時の友人は皆、口を揃えてそう言った。
よくそんなに簡単に中絶なんて出来るわね、子供が可哀そうじゃないの?
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そもそもちゃんと避妊すればよかったのよ。結局のところ自分が悪いんじゃないの?…と。
確かに友人達が口にした言葉は正論だし、そしてそれが正解だろう。



けれどあの頃は何日も悩み、泣き、そして苦しんで出した結論だった。
決して簡単に中絶した訳じゃない!
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そしてもちろん、簡単に出した答えでもなかった。それはこのみも一緒のはずだ…。
ああ…今の私はあの頃の友人達と一緒だ。もっともらしい事しか言わない正論者達と。



それに運命などと、よく言えたものだ。
自分は運命に逆らって自分の手で我が子を殺したではないか…。
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だとしたら、私にもその代償は必ずやって来る…?



ううん、違う。あの子達は生まれて来ないのが運命だったのだ…。
だってそうでしょ?あのまま産んでもきっとどん底の生活が待っているだけだ。
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だから…この世に産まれて来ない方がよかったのだ。
けれどもう過去を振り返ってばかりいるのはやめにする。



そう、私はゴルゴに飛び込んで見ると決めたんだ。ならやる事は一つ。
今すぐシルヴァーを追い出さなくては。
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同情もやめる。情けもかけない。何を言われようと放っとけばいい。そして…
『私は可哀相』ごっこはもうやめる!」



このみは、本当はローリーの言う事はもっともだと思っていた。
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そう、私は神ではないし、こんな話、誰が聞いても間違ってる!
だけどどうしたらいいの?このまま素知らぬ顔なんて絶対に無理だ…



カチ…
そうだね、ローリー…。その代償はすぐにやって来るよ…。
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だって私は彼を一生忘れられない。彼以上の人はどこを探しても見つからないもの。
そしてもう二度と、恋なんて出来ない…。きっとそれが私への…



「もしもし…。二宮さんのお宅でしょうか…]
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大きな代償よ!



-二宮家-



「お嬢様。旦那様がお呼びでございます」
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「お嬢様…?」



「え、ええ…聞こえてるわ…。また信也さんが見えてるの?」
「はい、先ほど」
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「お父様が呼んだのね…。困ったお父様…」



「でもそうね…かえってちょうどいいかも知れないわ…」
「あの…何がですか?」
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「いいえ、こちらの話よ。すぐに降りて行くと伝えてちょうだい」
「かしこまりました」



「亮…」
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だから言ったでしょ?世の中にはお金で買える物の方がはるかに多いって。
あなたの恋人はとてもおりこうさんね…



「はっはっはっ~。ささ、信也君、もう一杯どうだね?」
「いえ、もう十分いただきましたので」
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「遠慮せんでくれたまえ。君にはいつもすまないと思っているんだよ。
麗華の奴…君との婚約を先延ばしにしおって…本当に申し訳ない…」
「そんな…」



「だが今日は決まるような気がするんだよ!わしの勘ががそう言っておる!なあ~に、
あいつも最近は大人しく家にいる事が多くなったようだ。大方、遊びにも飽きたんだろう」
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「でも僕はそんなには急いでませんので…」



「いやいや、こう言う事はさっさと決めなくてはいかんっ。善は急げだ!
そうではくては君のご両親にも面目が立たんじゃないか!」
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「おっと、それとも何か?君はうちの麗華との結婚を望んでいないとでも…?」



「まさかっ!そんな事はありません!僕は人目見た瞬間から麗華さんに恋をしました!
彼女と結婚出来るなんて夢のようです!」
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「はははっ! そうかそうか!そう言ってくれると嬉しいよ。
よし!今日にでもさっそく婚約式の日取りを決めようじゃないか」



「今日ですか!僕としては大変な光栄です!あの美しい麗華さんと婚約出来るなんて!」
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「ですが麗華さんのお気持は大丈夫なんでしょうか。僕としては彼女の気持を優先に…」



「婚約するわ」
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「え?」



「麗華…今、なんと言ったんだ…?」
「婚約すると言ったのよ」
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「そ…そうか、そうか!とうとう決めてくれたか!」
「ええ」



「信也君!ほぅ~ら、だからわしの言った通りじゃないか!
今日は絶対に決まると思っていたよ!わしの勘もたいしたもんだな!はっはっはっ~」
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「はい!さすがお父上でございます!
僕はなんと言ったらいいか…この上ない嬉しさで天にも昇るような…」



「信也さん…」
「は、はい!」
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「婚約式には出席して下さるかしら?」
「もちろんですよ!自分の婚約式に出席するのは当たり前じゃないですか!
麗華さんも冗談が上手いな~あははははは!」



「いえ…都合が悪いなら欠席して下さってもよくってよ…」
「え…で、でも僕は新郎なんだし…それにその…ひな壇には二人で並んで…」
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「あなたのお席は来賓席なの。私の隣じゃないわ。だから無理に出席しなくてもいいのよ」
「あの…だけど新郎は来賓席ではなくて…普通はお誕生日席なはずだから…その…」



「お前はさっきから何を言っておるのだ?彼の席はお前の隣に決まっておるだろう?」
「お父様、婚約パーティーの準備は私がするわ」
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「そ、それは構わんが…だが彼の席は…」
「ですから彼の席は私の隣ではありませんわ。では私はこれで失礼します」



「ごきげんよう」
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「こ、こら!麗華!なにを訳の分からん事を!麗華!」



「だ…だって…僕は新郎なんだし……お誕生日席なのは当たり前…」
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「…だよね?」





続き、第42話へ 「悲しみの午後」
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第40話 「怒りの連鎖」

*二度目の恋 君に逢いたくて…第40話


隆に思いもよらない告白をされたこのみ。
隆の告白に、ただただ呆然とするばかりだ。
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いったいどう言う事なのだろう。
なぜ彼は急にそんな事を言い出したのだろうか。



もう一度付き合う?しかも今度は結婚を前提として?
それってプロポーズって事?なんで?どうして?
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まさか…結婚なんてありえない。だって私には亮さんが…
そうよ、私には亮さんがいる。もうすぐ結婚する亮さんが…



結婚……私が亮さんと結婚。結婚…?
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…ううん、それはできない。
だって小さな少女の命がかかっているのだから。



ルビーに時間がない事は火を見るより明らかだ。
何が正義で何が悪かなんて、彼女の命の前ではどうでもいい事ではないだろうか?
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いま何を優先すべきか、
自分の中ですでに出てる答えに決着をつける時がやって来たのだ。



もう迷ってる時間はない。泣いてる時間もない。幼い命を助けるために、
そして愛する彼の未来のために、私に出来る事をするだけだ。
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とても簡単な事ではないか。ただ一言、亮に別れると言えばいい。
そうよ…「さようなら」と…言うだけだもの。



この時が、彼女が亮との別れを決意した瞬間だった。



数分が経ち、隆はずっとどれだけ私を好きか、
どれだけ忘れられなかったか、などを延々と喋っていた。
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だが実のところ、さっぱり頭に入ってこない。いま彼女の頭にあるのは、
たったいま決めたばかりの亮との別れの事で頭がいっぱいだった。



どうやって言おう?いつ言おう?それとももう少し待ってから…
いいえ、それではダメだ。決めたのなら一刻も早く言った方がいい。
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けれど私はその後どうしたらいいのだろう。どうやって彼を忘れたらいいの?
忘れる?そんなの絶対に無理だ。彼を忘れるなんて出来る訳がない。



ならば一生、彼を思い続けて生きて行く事になる。
それでも仕方がない…。
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このまま亮と結婚をし、ルビーへの罪悪感と後悔を背負って生きていくよりはましだ。
そして何よりも、亮の苦しむ顔を見なくても済む…。



「僕は君と生涯を共にしたい…」
「え…」
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このみは慌てて現実に戻った。



「都合がいい話なのは分かってる。けど考えてくれないかな…」
「でも私…」
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「お願いだ…。僕にもう一度チャンスをくれないか?」
「隆君…」



「…ごめんなさい」
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「ごめんね、隆君。私は隆君と結婚出来ないわ…」
「このみちゃん…すぐに返事をしてくれなくてもいいんだ…。少し考え…」



「ううん。ダメなの。私ね…凄く大切な人がいるの…」
「大切な……?」
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「うん…」
凄く凄く大切な人…。



「だから…」
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「そ…そっか……そんな事、考えてもみなかった…。
でもそうだよね…君はこんなに可愛いんだもの…恋人がいるに決まってるよね…」



「ごめんね…」
「いいんだ…」
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「いいんだよ…」



「私…そろそろ帰るね…」
「あ、うん…分かった…また…」
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「うん…またね…。じゃ…」



フラ…



「このみちゃん!」
「ごめ……ちょっと飲み過ぎたかな…」
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「大丈夫かい?送って行こうか?」
「ううん、いいの、一人で大丈夫よ…」



「送っていくよ。いまも前のアパートに住んでるんだろ?すぐ側じゃないか」
「でもほんとに…」
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「いいから。このまま君を一人で帰らせるわけにはいかないよ。さ、行こう」
「だけど…」



「カップルばっか。酔った彼女を優しく介抱してその後は…ってか?
ん?あの男…誰かに似てるな…隆君?…え?…女は…」
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「ほら…歩けるかい?」
「うん…」



「って…このみじゃん…。なにやってんのアイツ?しかも何故隆君と一緒…?」
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一方、ローリーは偶然にも一人でこのお店にやって来ていた。
不思議と偶然とは重なるもので…



もちろん、ここにはゴルゴもいる。
なぜならここは沙織と待ち合わせをしたお店だからだ。
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「沙織ちゃん…もしかしてバックレ?マジっすか?
って言うかさ…俺としてはちゃんとはっきりしねーとローリーに…ローリーに…」



「って…ローリーじゃん…。あれ、ローリーだよな?マジ? 嘘…」
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ゴルゴは偶然、ローリーを見つけてビックリした。まさかローリーがいるなんて!
そして彼女の姿を見たとたん、つい笑みがこぼれてしまった。



どうしてもニタニタが止まらない。誰か止めてくれ。
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彼はとっても嬉しかったのだ。特に今夜は無性にローリーの顔が見たかった。
ルビーのあんな場面を見た後では、あいつの顔が無性に見たかった…。



「まったくこのみったら…なんで昔の男と一緒なわけ?しかもあんなにくっついて…
酔ってんのかな…フラフラじゃん…。連れて帰った方がいいか…」
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「あ~~もう!しょうがないな!ほんっと!世話がやけるったら!」



「でけー声。なに怒ってんだよ?店中に聞こえてんぜ?」
「え……え?ゴルゴ? なんであんたがいんのよ?」
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「なんでって、飲みに来たに決まってんだろ?悪い?」
「別に…。って今はそれどころじゃなくて…私はこのみを…」



「あれ?…いないし…」
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「このみちゃん?」
「う、ううん…何でもない…」



「お前こそ何で一人なんだよ?一緒に住んでる男はどうした?」
「べ…別にいいでしょ。あんたには関係ないし」
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「へいへい、そうですか…」
「あんたこそ何で一人なのよ?可愛い可愛い沙織とデートでもすればいいじゃん」



「それこそお前には関係ねーし…」
「ああー言えばこー言う…」
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「それはこっちのセリフだ!」



(やっべ…またやっちまった…。なんでこいつの前に出るとこうなっちまうんだよ…)
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(いや、このままじゃダメだ。今日はちゃんと勇気を出して優しく…)



「ところであんた、もうすぐ引越しでしょ?」
「ああ」
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「で、沙織はどうすんの?」
「あ?」



「沙織よ。遠距離恋愛でもする訳?」
「遠距離って…なに言って…   さあな…」
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「さあなって…ちょっと…ちゃんとしなさいよ!
沙織はうぶなお嬢様なんだからね。いい加減に付き合えるような子じゃないんだから!」
「うるせー…」



「なによそれ!私はしんぱ…」
「お前に心配してもらわなくて結構ですぅ~」
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「ムッ。あ、そう!それはそれは失礼いたしました。なら勝手にすれば!」
「するよ、勝手に。お前もな、勝手にしろよ、あの男と。いい男じゃん。
ちょっといい加減そうに見えたけど、お前にはピッタリ」



「なんなのよ!さっきから!」
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「お前こそなんなんだよ、さっきから!いきなり突っかかりやがって!」



「私はなにも言ってないし何もしてないじゃない!
あんたでしょ!さっきから突っかかってくるのは!」
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「それはお前だろ!余計な事をベラベラと!何が遠距離だよ!ムカつくんだよ!」



(って…だからなぜこうなる…)
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(くっそ~…)



「だ、だいたいな~!なんで決めつけんだよ!」
「なにがよ!?」
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「俺が沙織ちゃんを好きだとか何とか、勝手に決め付けてんじゃねーよ!」
「え!じゃなに?!あんたは好きでもない女と付き合ってる訳!?」



「はあ?付き合うって…意味分かんね~~!」
「んで沙織に向かって抱きたいとか言った訳!?だからチャラ男なのよ、あんたは!」
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「それに勝手に決め付けたとか言うけど、あんただって勝手に決め付けてんじゃない!」
「なんの事だよ!」



「私と一緒に住んでる男の事よ!どうして住んでるってだけで!
私と何かあるような言い方すんのよ!あったまくる!もう帰る!」
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「なっ…!普通そう思うだろーが!そのせいで俺がどんだけ…」



「バーカ!せいぜい沙織にも『ふにゃ○○やろ~~!』なんて言われないようにね!」
「なんだとーーーーーー!」
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「じゃね~ん♪ ふにゃ○○息子によろしく~」
「ふ、ふざけんな~~~!!!いいか!耳をかっぽじてよく聞け!俺の息子はな~~!」



「鉄より硬く!うまか棒より(カレー味)ぶっといんだぁぁぁ~~!!!」
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「分かったか~~!!!」



ゼイ…ゼイ……
「あいつ…マジでむかつく!」
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「って…」



「だからどうしてこうなるんだよ!」
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「俺のバカ~~」



でも…あれ?あの男…あいつの男じゃねーの?
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あれ…?



バン!
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「お釣りは結構です!」



「あいつ!一発ぐらい、殴ってやればよかった!
好きでもないのに『抱きたい』なんて沙織に言った訳!?ほっんと!信じらんない奴!」
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「だいたい沙織にそんな事言ったらすぐにのぼせ上るに決まってるでしょ!?
どうすんのよ!沙織をあんなにメロメロにして!!!!!」



「え?私?」
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「私がどうかしましたか?」



「わっ!びっくりした~!」
「あの…私がどうかしましたか?いま私の名前を言ってたような気が…」
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「う、ううん…聞き違いだよ…聞き違い…」



「そうですか…」
「そうだよ…耳垢がたまってるんじゃないの?」
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「え?」
「いや…なんでも…」



「今夜は冷えますね…」
「う、うん…」
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「では、私はこれで…。おやすみなさい…」



「…………」
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「沙織…」



「はい?」
「あのさ……あの……ゴルゴの事なんだけどさ…」
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「ゴルゴさん…?」
「ゴ、ゴルゴとはさ……ほんとにその…真剣なの…?
ご、ごめん、急にこんな事聞いて。でもゴルゴはこの街を近々出ちゃうしさ…」



「真剣です…。もしゴルゴさんがこの街を出るなら私もついて行きます。
きっとゴルゴさんもそう言ってくれると…」
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「いえ、言われなくてもついて行きます。もし両親が反対しても構いません。
それに…ゴルゴさんと私は……」



「付き合ってるんだろ?」
「はい…」
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「でもさ…」
「ローリーさんには関係ない事です。これは私とゴルゴさんの問題ですから」



「なっ…」
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「心配してくれるのは分かりますが、ローリーさんはご自分の心配をしたらどうですか?
あのシルヴァーさん、いつも家に居ますね?」
「だから何よ…」



「シルヴァーさんとは何にも関係ないと言っておきながら、
いつまで一緒に暮らしてるんですか?私には理解出来ません」
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「それに、仕事もしないでフラフラと…。何とかしてあげた方がいいんじゃないですか?」



「それこそ沙織には関係ないから…」
「そうですか?なら私の事にも口を出さないで下さい。余計なお世話です」
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「沙織…」
「失礼します」




沙織は胸を張り、あごをツンと上げて歩き出した。
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だが歩き出したのは自分の部屋の方ではない。



それは当然…
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奴の部屋だ!



「大丈夫…?」
「迷惑掛けてごめんなさい…。
車のシートも汚しちゃって…タクシーの運転手さんに悪い事しちゃった…」
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「平気だよ。ちゃんとクリーニング代を渡したから」
「ありがとう…。後で返すね…」



「そんな事いいから。それよりだいぶ良くなった?お水を持って来ようか?」
「ううん…もう遅いから帰るわ。本当にありがとね…」
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「全然。かえって僕は君の意外な一面を見れて楽しいよ(笑)」
「隆君ったら…」



「けど君がこんなになるまで飲むなんて珍しいね。ほんとうに何かあった?」
「な…なにもないわよ。ただちょっと疲れてただけ…」
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「そう?だけど君があんなに飲むなんて…」
「ほんとうに!」



「なんでもないの…」
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「そっか…分かった。じゃ家まで送るよ。行こう」
「うん…」



「………」
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「………」



「あーあ…沙織に叱られちゃったな…」
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「余計なお世話か…確かにそうだ…。だけどこの性格は直りそうもないよ…」



バンッ!
「鈴之介さん!」
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ギクッ…



「鈴之介さん…鈴之介さん…ヒック…」
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「あの…ぼ、僕は何も見てないし何も想像してません!
て、テレビの前に釘付けなのは字がよく見えなくて…け…決して変な妄想では…」



「最低です…」
「さ…最低…ですよね…で…でも全部丸見えではなくて…中身は想像して…あわわ…
そうではなくて…中身と言っても微妙にスケて…でもそれがかえって刺激的…あわわ…」
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「私、最低な女です!」
「え?私?」



「鈴之介さん……鈴之介さん…」
「沙織さん…どうされたのですか…?」
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「私…私……!!」
「は、はい?」



(来る…?)
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(もしやまた…彼女が僕に…)



「鈴之介さん!」
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(来たーーーーーー!)



「隆君…。今夜は迷惑かけて本当にごめんね…」
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「だから迷惑だなんて思ってないって。気にしないで」
「うん…」



「そうだ!そう言えば君に借りてたCDがあったんだ。
返そうと思って忘れてたよ。今度持って来ようか?」
「送ってくれればいいわよ」
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「いいよ、仕事でよくこの辺を通るし。今度持って来るよ」
「分かったわ」



「じゃ僕は行くよ。今夜は君に会えて嬉しかった。ほんとだ…」
「私も嬉しかったわ…」
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「もう休んだ方がいいよ、おやすみ…」
「おやすみなさい」



「………」
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(私…何やってんの…)



(ほんっと…最低…。それに頭も痛いしすっごいお酒臭いし…)
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「なんで隆君と一緒なの?」
「ローリー…」



「あんた、なにやってんの?亮さんはどうしたの?」
「亮さんとは病院で別れた…。た、隆君とは偶然会ったのよ…」
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「偶然って…あの店で?」
「え…ローリーもいたの、あのお店に?」



「いたよ。あんた達がちょうど帰る時に見かけたんだよ。
それより、なんで一人でなんか飲みに行ってんのよ?亮さんは知ってるの?」
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「ローリー、うるさいよ…私いま頭が痛くて…」



「このみ!あんたもうすぐ結婚するんでしょ?それなのに昔の男とって、どういう訳?」
「なによ…ローリーだって昔の男と一緒にいるじゃない。
それに私はローリーと違って隆君と同じ家に住んでる訳じゃないわ」
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「ムッ。なにそれ?私に対する嫌味?」
「そう聞こえた?ならそうじゃない?」



「ちょっと~~!なんなのよ!
この間の事まだ怒ってるわけ?根に持ち過ぎじゃない?性格悪いよ、あんた!」
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「なによ!ローリーに言われたくなんかないわよ!」
「なにその言い方!私はあんたが心配…」



「だいたいローリーはさ、そうやって私の心配ばかりしてるけど、
自分の事を心配したらどうなの!?ゴルゴさんの事好きなくせに!」
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「いい加減、素直になりなさいよ!意気地なし!」



「な、なんで私が意気地なしなのよ!」
「意気地なしよ、ローリーは!意気地なしで根性なし!」
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「だってそうでしょ?昔に色々あったのは分かるけど、
でもローリーはそれにこだわり過ぎて全然前に進めてないじゃない!」
「なに言ってんのよ…」



「ローリーはね、ゴルゴさんを自分の複雑な人生に巻き込みたくないって言ってるけど、
ほんとはそうじゃない、怖いのよ!」
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「また昔のように捨てられるのが怖いんでしょ!?
だからゴルゴさんに飛ぶ込むのが怖いんだわ!だから素直になるのが怖いんだわ!」



「なっ…」
「ローリーは彼と別れた時から一歩も動き出してない!今もその頃のままよ。
ちっとも傷が癒えてない!動き出してない!人を愛する事にビビってる!」
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「このみ!いい加減にしなさいよ!」
「いい加減にするのはそっちよ!もう『私は可哀相』ごっこはやめたら?!」



「どう言う意味よ!」
「まんまの意味よ!」
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「このみ…あんたマジで…」
「いつまでシルヴァーさんに捨てられた可哀想な自分を演じてるつもり!?
もうあの頃の自分を乗り越えて成長したらどうなのよ!」



「このみ…」
「なんの障害もなく一緒にいられるなんて…そんな幸せな事なんてないのに…。
ローリーはバカよ…。いいえ、ローリーもゴルゴさんも…二人とも大バカ者だわ…」
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「そんなガキ臭い恋愛には付き合っていられない…」



「もううんざりよ!」
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「このみ!」



バタン!
「はあ…はあ…はあ…」
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「やっちゃった……どうしよう…」



このみはすぐに言い過ぎに気づいたが後の祭りだった。
けれど二人に素直になって欲しかったのだ。
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思いあってる二人が離れる事なんてない。愛し合ってる二人は一緒にいるべきだ。
だって離れる事はとても辛い事なのだから…。



そしてローリーはこのみの言った言葉に衝撃を受けていた。
何もかもが図星だったからだ。
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そう、私は一歩も動き出していない…。
あの頃のまま…一歩も…。



「ゴ…ゴルゴさんには気になる方がいると…以前、鈴之介さんに言いましたよね?」
「え…」
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「彼は……彼は私よりその方を…」
「そ…そう言えばそうおっしゃってましたよね…。
すみません…うっかり(妄想のせいで)忘れてました…」



「私…頭が真っ白になって…ついその方にひどい嘘を…私…私…」
「さ…沙織さん…あのですね…いつも言うようですが…ちょっと離れた方が…」
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「鈴之介さん!私、今夜はとても鈴之介に会いたかったんです…。
何故かあなたに会いたくて……」
「僕に…?」



「鈴之介さんといると…そう…まるで母と一緒にいるようで安心するんです…」
「は……母…?」
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「はい……とてもあったかくって癒されます…」
「母…ですか…」



「母のようにすべてを包み込んでくれるような……そんな感じで…」
「母…」
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「不思議です…。以前、婚約していた時よりも、あなたが近く感じます…」
「母…」



「それもそのはずですわ。だって鈴之介さんは母のよ…」
「……加減にして……さい…」
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「え?」
「僕から離れて下さい…」



「沙織さん…もう僕を惑わすのはやめていただけませんか?
こんな風にいつもいつも抱きつかれたら僕は…僕は…」
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「鈴之介さん…?」
「それに…僕はあなたの…母……んか…じゃ……」



「どうされたのですか?」
「どうされたもクソもありません…」
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「ク…?まあ…」
「あなたは何にも分かってない…」



「私が…ですか…?」
「ええ、あなたが!です。あなたはなんにも分かっていません…」
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「何の事でしょうか…」
「あなたがやってる事は罪だと言う事をご存知ですか?
ええ、僕にとっては空恐ろしい程の甘味な罪なんです!」



「甘味な罪…ですか…?あの…私…何の事なのかさっぱり…」
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「………じゃ…ねーよ…………け~…」
「あの…?鈴之介さん?」



やがて彼は大きく息を吸い、目をカッと見開いた。
そして…



「だ、誰が母ちゃんだ!僕はあなたを生んだ覚えはない!」
「あ、あの…」
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「僕は立派な男です!!!!」
「す…鈴之介さん?」



「いつもいつも僕の脳を刺激しやがって!」
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「す、好きでもない男にベタベタ抱きつくんじゃねーよ…ポ、…ポケ~!
お…おか…おかす…オカズ…こかすぞ…このヤロ~!」




「こかす?」
「犯すです!」
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「犯す…ですか…?…誰を?」
「あなたをです!」



「え…私…?」
「そうです…」
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「私を……」
「ええ、僕があなたを! です…」



「鈴之介さんが私を……」
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「まあ…」



「まあじゃないよ、ポケ~……」
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続き、第41話へ 「運命の分かれ道」
二度目の恋…タイトル一覧は 「こちら」   
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第39話 「突然の告白」

*二度目の恋 君に逢いたくて…第39話



一方、ルビーの厳しい現実を目の当たりにし、病院を後にしたゴルゴ。
つい少し前まで、あんなに元気にはしゃいでいたのに…。
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ゴルゴは自分が当たり前のように生き、当たり前のように明日を迎える事が、
どれだけありがたい事なのか改めて実感させられた。



そしてルビーに比べたら、自分はなんてちっぽけな事で悩んでいるのだろう…
いまこの瞬間を、もっと大事に生きるべきではないのか?
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いつまでも意地を張り、無駄な時間を過ごしてなんになる?
ゴルゴは苦々しく思いながら自分にそう、問いかけていた。



そう、意地を張ってる場合ではない。もう子供ではないのだから。
振られたっていいじゃないか。バカにされたっていいじゃないか。
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あいつに好きだと…いま言わなければいつ言うんだ?
そうさ、男がいたって構うもんか。あたって砕けろ…だ!



だがその前に、けじめをつけなければならない。
沙織にきっぱりと断り、それから行動に移したい。
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冷たいと言われようが泣かれようが、あやふやな態度に終止符を打たなければ。
彼はゆっくりと携帯を手に取った。



(ルビー…お前との約束を守れるかどうか分からないけど…やってみるよ。
あんなムカツク女…冗談じゃねーけど…しょうがねーよな…惚れちまったもんは…)
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(けどその前に、きちんとけじめをつけるぜ。俺は男だ。やる時はやるんだ。
お前との約束を守れるように…応援してくれよな…)



やがてゴルゴは電話をギュッと握り締め、意を決したようにダイヤルを回した。


そして…
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「遅くにごめん…。俺…ゴルゴ…。悪いんだけどこれからさ…」



ようやくゴルゴは動き出そうとしていた。
ルビーとの約束を守るために。ちっぽけな悩みにケリをつけるために。
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そして何よりも、ムカツク女をゲットするために!



1時間後、ゴルゴに呼び出された沙織は待ち合わせの店の前でウロウロしていた。
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どうしてもこの扉を開ける事が出来ない。
何故なら、この扉をあける事の意味を知っていたからだ。



私に会いたいと言う彼の口調は、どこか毅然としていた。
そう、きっと彼は答えを見つけたのだろう…。
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今までのような、私の無理やりなゴリ押しはもうきかない。
そして…この扉を開けたら恋が終わる。私の初めての恋が…。



恋の終わりは何故こんなにも苦しくて切ないのだろう。
恋の終わり?いいえ、それは自分の中では終わりでない。
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沙織の胸の中ではゴルゴと出会い、彼の熱い腕の中を知り、
ドキドキした瞬間が今でも瑞々しく鮮明に残っている。



そのトキメキを、どうやって忘れたらいいのだろう。
私と同じ経験をした人は、それをどうやって乗り越えてるの?
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私は……私は……




著作権者様から許可を得て、お借りしているBGMです。
よろしかったらお流し下さい。音量にご注意ください。







「キャッ!」
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「おい!」



「ちゃんと下を見ろよ!石がいっぱい落ちてるだろ!顔面からすっ転ぶとこだったぜ!」
「す…すみません…」
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「大丈夫か?走らないで歩けよ!」
「はい…」



「だいたい山に来くんのになんでヒールなんだよ?
運動靴かなんか履いて来なくちゃダメだろ!?」

「そ、そうですよね…本当にごめんなさい…」トクン…トクン…
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「別に謝らなくていいって」
「はい…」



「てか君さ、違う人と間違えてんじゃないの?」
「間違えてませんよ(笑)」
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「ほんとかよ?俺と似たような髪形の奴が何人かいるからな。
そいつを見て、あれがゴルゴさんね…とか思って見てたんだろ?」

「違いますよ(笑)」



「怪しい」
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「絶対に間違ってません(笑)」



「わーほんとだ!凄く気持ちいい!」
「だろ?なんだかあの空を見てると吸い込まれそうだよな」
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「ほんと…。なんだかスーっと飲み込まれて行くみたい…」
「ああ…スーッとな…」



(ほ、ほんの少しだけ…)
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(少しだけ…)



「なんだよ、元気がねー よっ!だな~」
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「あっ!ご、ごめんなさい…私までつられて…よっ…なんて…」
「別にいいよ(笑)」



「いいえ、大丈夫でした(笑)」
「マジで?本当は俺のイビキがうるさくて先に帰ったんだろ?」
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「違いますよ~(笑)」
「嘘くせー」



「こらこらこらこら!酔ってんじゃねーの?フラついてんで?」
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「私…ごめ……」



「絶~対っ酔ってんね~(笑)そうだろ?な?」
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「ご、ごめんなさい…」かーーーーー!
「いいって(笑)」



「ゴルゴさん…私はあなたに恋をしています…。私はあなたが好きです…」
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「え…」



「あの!」
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「又デートをしてもらえますか?!」



「沙織ちゃん…」
「今日はほんの少ししか一緒にいられませんでしたが…
でもこれはデートでしょ?あなたがさっきそう言ったじゃないですか…」

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「確かにそう言った…。だけどあれは…」
「なら又デートをしていただけますよね?」



「だけどお願いです…。私…またゴルゴさんに会いたい…ヒック…会いたい…」
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ヒック…どこにも行かなくていいです…会ってくれるだけで…それだけで……」



「…れだけで…」
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「…とても嬉しかった…」



「とても…」
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「幸せだったんです…」





突然、沙織はきびすを返し、来た道を走って戻り出した。
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涙が溢れて前が見えない。
つまづき、転びそうになったが それでも沙織は走り続けた。



やがて沙織は立ち止まり、しゃくりあげるように泣き出した。
涙を拭っても拭っても、壊れたポンプのように後から後から溢れてくる。
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初めての恋だった。初めてのざわめきだった。
あの、ガッシリとした胸に包まれる事は二度とない。



そう思ったとたん、彼女の心臓はドクドクと早鐘を打ち、千々に乱れた。
胸を貫くこの痛みを、どうやって拭ったらいいのだろう。
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誰か……誰か…



この時ふと…沙織は何故か無性に鈴之介に会いたくなった。
彼に会いたい…。
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理由は分からない。ただ彼の、春の風のような優しい声が聞きたい。
そしていつものように、大丈夫ですか?と言って欲しい。



満点の星空の下、彼女は背を丸めて泣きじゃくった。
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やがて、幼い迷子になった子供が母親の名を呼ぶように…「鈴之介さん……鈴之介さん…」
と、いつまでも鈴之介の名を呼んでいた…。



結局、待ち合わせから1時間が過ぎたが沙織は現れなかった。
もちろん、電話も通じない。
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ゴルゴはその場で立ち尽くし、大袈裟に肩を落とした。



-病院-



数時間後、
亮は病院を出ようとしたが、このみの姿が見当たらない事に気がついた。
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どこへ行ったのだろう?
帰った?俺に何も言わずに?まさか…



ツルルルルルルル…
ツルルルルルルル…



「亮さん…」
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このみは麗華が去った後、すぐに自分も病院を後にした。
どうしてもあの場にはいられなかったのだ。



監督の、あの悲しげな叫び声を聞くのが耐えられなかった。
亮の、罪悪感に襲われたあの姿を見る事が耐えられなかった。
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あれ以上、あの場所にいたら自分がどうにかなってしまいそうだった。



カチ…
「はい…」
「ご…ごめんなさい。私…あの場にいれなくて…ルビーちゃんがあまりにも…」
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そして何よりも、麗華のあの問いかけが頭から離れなかった。
あなた達はそれでも幸せになれるのか…と…あの言葉が離れない。



「いいえ、もうすぐ自宅に着きますので…」
「ええ…ええ…引越しの準備が出来たらすぐに電話します…はい…おやすみなさい…」
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このみは恐怖に近いものを感じ、逃げるように病院を出て来てしまったのだ。



こんな事で逃げ出すなんて、私はなんて弱い人間なのだろうか。
ルビーは息を切らして苦痛に耐えていた瞬間でさえ、親を思っていたと言うのに…
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「強めのお酒を下さい…」



あんな…私はもういいのなんて…どうして言えるのだろう…
まだほんの8才の子供ではないか…。
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どうして自分の事より、人を思いやれるのか…



そんなあの子を私は助る事が出来る?ほんとに?
私が一言、彼と別れると…そう言えばいいの…?
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私が…一言…



「このみちゃん?」
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「このみちゃんじゃないか?」



「嘘…」
「やっぱり君だった…。君に似た人がいるなと思ってたんだ…」
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「隆君…」



「久しぶり…元気だった?」
「隆君こそ…元気だった?」
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「僕か……僕はあまり元気ないな…」
「そうなの…?」



「一緒に座っていい?」
「え…」
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「隣、いい?」
「あ…うん…いいわよ…」



「君にここで会えるなんて思わなかったな…」
「私も…本当に偶然ね。
ところで隆君はどうして元気がないの?彼女とラブラブで幸せなんじゃないの?」
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「彼女とは別れた」
「嘘…」



「とっくに別れたよ…」
「そ、そうだったの…なんて言ったらいいか…残念ね…」
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「残念か……。残念なのは僕の間違った行動さ…」
「隆君の行動?何か悪さでもしたの?」



「いや…そうじゃない。そうじゃなくて…僕は間違っていたんだ…」
「隆君ったらさっきから変な事ばっかり(笑)何を間違っていたの?」
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「全部さ…。目の前の幸せに気がつかなかったんだ…」
「隆君…?」



「それより、君こそ元気がないね?今にも泣きそうな顔してたけど?」
「そんな事ないわよ…。ちょっと疲れてただけよ」
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「そっか…ならいいけど。てっきり失恋でもしたのかと思った(笑)なんてね、冗談さ」
「失恋か……。そんなようなものかな?」



「そうなの?僕は冗談で言ったのに(笑)ほんとに?」
「さあ、どうかな…」
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「その言い方、あやしいな~」
「うそうそ、冗談よ(笑)」



「よし!今夜は飲もうか?久しぶりの再会を祝してさ♪」
「いいわよ。私も今夜は飲みたい気分だし」
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「あれ?な~んか君、性格変わった?前は酒なんてあまり飲まなかっただろ?」
「私、大人になりましたのぉ~」



「ぜ~~ったいに変わった!さては君、僕に隠してたな~~?」
「あ、バレた?(笑)」
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「隆君こそいっつも真面目くさった顔してたけどぉ~たまにはハメを外したら~?」
「言ったな~~」



「言ったわよ~~(笑)」
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このみは意外にも隆との再会が嬉しかった。
少しでも亮を知らなかった頃に戻れたようで、懐かしかったのだ。



けれど、亮を知らなかった頃に戻りたいとは思わなかった。
もう彼がいない世界なんて考えられないからだ。
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あんなセクシーでゴージャスな男はどこにもいない…。



あんな…あんな素敵な人はどこにも……
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「………のみちゃん」



「…このみちゃん!」
「あ…」
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「ボ~としちゃって(笑)もう酔っちゃった?」
「う、ううん…まだ全然平気よ…」



「それならいいけど…。ところでさ…あの…さっきの話なんだけど…」
「さっきの話?何?」
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「僕がさっき目の前の幸せに気づかなかったって言ったよね…。間違ってたって。
あれは君の事なんだ…」
「え?それはどう言う…」



「君と別れる時に言ったろ…その…会社の女の子の話。
僕はその子とさ…すぐに付き合ったんだ。けど……何かが違うんだ…」
「違うって……何が…?」
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「驚かないで聞いてくれ…。だけどいま言わないと後悔しそうだから…」
「隆君…さっきから何を…」



「僕が君に別れを告げたとき、僕はその子を好きだと思ってた。
彼女に相談しているうちに、彼女が気になって…あの時はそう思ってた。けど…」
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「はっきり言うよ。僕は君が僕の事を好きかどうか分からなくてイラついていた。
いや、君が憎らしかった…」



「僕が会社の女の子と食事に行っても嫉妬の一つもしない。
君とキスをしても君はどこか上の空だった。その事に僕はイラついていたんだ…」
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「それは…。ごめんなさい…私が悪いの…」
「君が謝る事じゃないよ。ただ僕の我慢が足りなかっただけなんだ」



「それは違うわ…」
「違わないよ。君はあまり感情を表に出すようなタイプじゃないと分かってたくせに…
それでも僕はそれ以上が欲しかった…」
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「…がうの」
「このみちゃん…本当に君のせいじゃ…」



違う!………違うのよ…」
「このみちゃん…?」
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「隆君の言う通りよ、あの頃の私は確かに上の空だった…。
隆君が会社の女の子を好きになるのも無理はないわ…」



「僕の方こそ違うんだ…」
「も…もういいわよ…終わった話なんだし…」
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「いや、聞いてくれ…。虫がいい話だとは思うだろうけど…僕は…」
「隆君…もう…」



「僕は君がいまだに忘れられない。本当は君と別れてすぐに気がついたんだ…。
気がついたけど…もう後には引けなくなってしまって…」
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「付き合った会社の女の子もすぐに僕の気持に気がついた。何故なら僕は…」



「僕は………いつも君の事を考えていたから…」
「隆君…」
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「ずっと君に会って伝えたかった…」



「も…もう本当にやめよう…。昔の話は終わりよ…ね?私…そろそろ…」
「さっき言ったろ?昔の話じゃない、今の話だ。今日、君と会えた偶然に感謝してる…」
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「このみちゃん…。僕を許してくれるなら…もう一度僕と……」
「隆君!」



「後悔してるんだ!」
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「たか………」
「お願いだ…僕ともう一度付き合…………いや…」



「今度は結婚を前提に…」
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「僕ともう一度付き合ってくれないか?」



 

続き、第40話へ 「怒りの連鎖」
二度目の恋…タイトル一覧は 「こちら」   
ストーリー別一覧は       「こちら」

第38話 「突きつけられた現実」

*二度目の恋 君に逢いたくて…第38話



数時間後、鈴之介は空想にふけり、気がつけば夜になっていた。
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そして先程の、どんぐりころころを唄う可愛らしい子供の歌声も、
いつの間にかニュースを読むアナウンサーの声に変わっていた。



あの悩ましげな姿で現れた沙織はもういない…。
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「はあ…」



ああ…毎日毎日…僕はどんどん落ちて行くような気がする。
何故気がつけばあんな事ばかり考えてしまうのだろう。
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あんな…あんなスケスケの衣装で沙織さんが僕の前に現れるなんて…
あんな姿を思い浮かべたら、どんなに紳士で誠実な僕だって…僕だって…



ボ~~…
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と、どうみても紳士で誠実とは思えない想像をする鈴之介。
 


その時、ドアを小さくノックする音が聞こえた。



コンコン…
「鈴之介さん、いらっしゃいますか?」
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「あの…沙織です…」



ギクッ…
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「沙…織…ひゃん…?」ひゃん?(笑)



「鈴之介さん、あの…少しよろしいでしょうか?」
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「…鈴之介さん?」



カチャ…
「ああ、よかった、いらしたんですね。ごめんなさい…遅くに…」
「いえ…」
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「あら?鈴之介さん、どうなさったのですか?なんだか元気がないようですが…」
「え…」



「大丈夫ですか?お顔が真っ青ですよ…。どこかお体の具合でも?」
「い、いえ!全然…全然…元気…すごく元気……」
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確かに、元気は有り余るほどある。もちろん、下半身に限っての事だが…



「でもお顔の色が…大丈夫ですか?」
「ほ、本当に大丈夫です!ええ…大丈夫ですとも!本当に…」
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「そうですか…」
「あの…沙織さん?沙織さんこそ元気がないように思えますが…?」



「鈴之介さん…私って凄く嫌な女ですよね…」
「え…?」
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「私…私……凄く自分が嫌なんです…」
「ぼ…僕にはなんの事だかさっぱり…」



「でも…私は後悔なんかしていない…」
「あの…?」
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「だって……私は諦めたくないんです…。どうしても彼を…」



カバッ!
鈴之介さん!私怖い!
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「え!?…いや…あの…さ、沙織さん…」



「私、自分のやってる事が凄く怖いんです…ヒック
どんどん嫌な女になって…鈴之介さんもそう思いますよね?こんな私、最低ですよね…?」
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「で…でもその…僕には事情が読み込めませんし…それにあの…もう少し離れ…」
「鈴之介さん…鈴之介さん…」



「で、ですから沙織さん…少し落ち着いてですね…」
「少しだけ………こうしていて下さい。
今は鈴之介さんの胸をお借りしたいのです…ほんの少しだけ…お願いします…」
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「そ…それはその……でもそれは…あの……」
と、しどろもどろな鈴之介



(ああ…困った…とても困ったぞ!こんなに彼女が近くては僕は又変な妄想を…)
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(いいや!そんな事は考えちゃダメだ!彼女は僕に信頼を寄せてこうしているのだから!
もう決して変な妄想は絶対…絶対…)



(だけど彼女はなんだか……とてもいい匂いがする…。とても爽やかで甘くて…)
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鈴之介は彼女のジャスミンのような爽やかな香りを吸い込み、
ひと時…その香りに酔いしれた…



くんくん…くんくん…
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うっとり…



数分が過ぎ、やがて沙織は『ごめんなさい…』と小さくつぶやくと帰っていったが、
鈴之介はその時の事はあまり覚えていなかった。
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覚えているのはジャスミンのかぐわしい香りだけ…



「はあ…」
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「なんて素敵な香りなんだ……」



-翌日-



ピンポ~ン♪
「入るよ~」
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「鈴之介、悪いけど赤い絵の具、貸してくんない?切らしちゃってさ。
私ってなんでか赤い絵の具が無くなるのが早いんだよね」



「後で新しいのを買って返すから…ね、聞いてんの?ちょっと…」
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鈴之介!



は、はい!
「って…あんた…その顔…」
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「顔がどうかしましたか?」
「どうしたも…こうしたも…」



「あんたのその目の下のクマはなに?怖いんだけど…」
「怖い?そうですか?僕は全然怖くありませんが…?」
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「あんたじゃなくて私が怖いんだっつーの…。なんかあった?」
「まあ…あったと言えばありましたが…」



「なによ?言ってみなよ。なにがあったの?」
「それが…」
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「なんなのよ、言ってみなって」
「ローリーさん…僕…もうどうしたらいいのか…」



「イラつくな~。だからどうした?」
「沙織さんの事です…。僕はもうこれ以上、彼女と一緒にはいられないような気がするんです…」
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「なんで?」
「体がもたないと申しますか…何と申しますか…」



「どう言う意味?」
「ええ…実はその…沙織さんといると僕は…モゴモゴ…」
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「何?!はっきり言いなさいよ!」
「で、ですからその…沙織さんといると僕は……僕は……」



「へえ~…じゃ何?
これ以上沙織に抱きつかれたりすると、野獣のように沙織を襲っちゃいそうって事?」
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「そ、そこまでは言ってませんよ!」
「言ってるっつーの…」



「って言うかさ、そもそもあんた達はもう別れたんだろ?婚約解消したんだろ?
なのにその『お友達ごっこ?』それ自体がおかしいんだよ」
「そうでしょうか…」
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「当たり前でしょ。男と女が別れた後も今までと同じようになんて、無理があるし」
「そうですよね…」



「だいたい、沙織も沙織だよ。あの娘、いがいとカマトトぶってんじゃないの~?
あ、ありえる~絶対にそうだよ。あんたの気持ちを知っててわざとからかってるとか?」
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「私に言わせれば悪気があってやってるとしか思えないね。悪女のような女だわ~怖い女~」



「沙織さんの悪口は言わないで下さい!」
「別に悪口じゃないじゃん…」
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「さ、沙織さんはわざとなんてそんな…そんな事は絶対にありません!
あの天使のような彼女が悪気があってやる訳はないのです!」



「バッカじゃない?悪気がなければ何をしてもいい訳?それ、おかしいから」
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「ど、どこがおかしいんですか?どこもかしこも全然おかしくありませんよ!
ローリーさんこそいい加減な事を言わないで下さい!そちらこそおかしいですよ!」



「逆切れしてんじゃないわよ!」
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「って言うかあんたさ、いま私に言ったように沙織に声を荒げた事ってある?」
「そんな事は一度もありません!」キッパリ!



「なに威張ってんのよ…。
いい?あんたがいっつもそんな風に甘やかすから沙織もつけあがるんだよ!」
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「男ならビシッと言ってやんな!ビシッと!」



「ビシッ…?どうやって?」
「だ・か・らぁ~!ガッツリと言ってやったらいいのよ!」
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「ガッツリ…?」
「そう、ガッツリ!沙織の顔をキッとひと睨みしてさ…」



好きでもねー男にベタベタ抱きつくんじゃねーよ!ボケ~~!
犯すぞ、このやろ~!

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「てな感じ?」



「おか…おか……侵す?オカス?おかず?」
「犯す!」
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「む…無理……とても無理です…」
「無理でも何でもちゃんとそう言いな!」



「でも…そ…そんな事…ぼ、僕の口からは…お…犯すなんて…犯すなんて…
お…犯すと言う事は彼女の洋服をむりやり剥ぎ取ったりすると言う行為であって…」
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「洋服を剥ぎ取ると言う事は彼女の美しい裸体があらわになる訳で…
美しい裸体があらわになると言う事はこの上ない喜びな訳であって…」



「喜びなんだ…あんたの本性見たりだね…」
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「まあ…今のは大袈裟としてもさ…
でもそう言う事されたら男は変な気分になるんだって事を分からせないと…だろ?」



「変な気分って…僕言いましたっけ…?」
「言ってないけどそうなんだろ?どうみてもそうなんだろ?誰が見てもそうなんだろ?」
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「まあ…変と言いますか…興奮すると言いますか…鼻血が錯乱すると言いますか…」



「鼻血…あんたは赤い絵の具を切らす心配はないね…」
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「ローリー…うらやましー…」



-週末-



「こ・の・み♪ どこ行くの?」
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「ローリー…」



「病院よ。
あれ?なに気軽に声かけてんの?私とはしばらく口聞かないんじゃなかったっけ?」
「ガキ臭い事言ってんじゃないわよ…」
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「ふんっ」



「病院って事は監督の娘さんのお見舞いに行くんだ?」
「うん…」
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「ずいぶん歯切れが悪いじゃん。あ…そっか…容態があまり良くないんだ?」
「それもある…」



「それもって…意味深な言い方ね。なにかあった?もしかして亮さんと何か?」
「ううん…そうじゃないけど…」
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「ふ~ん…」
「ローリー…悪いけどルビーちゃんが待ってるから行くね…」



「行ってらっしゃ~い…」
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(なんかおかしいわね…マジでなにかあったな…。亮さんとケンカしたとか?
あーあ…このみも一人で考え込むタイプだからな…。大丈夫だといいけど…)



このみは病院へ向かう途中、このまま理由をつけて引き返そうと何度も思った。
ルビーの顔を見たら、また余計な事を考えてしまいそうになると思ったからだ。
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けれどルビーのあの夜の電話の事を思うと、それも残酷な事だと思った。



「亮さん!」
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「よう。俺もちょうどいま来たとこ」



「…ん?どうした?元気がないな?」
「いいえ…そんな事はありません…」
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「そうか?ならいいけど。引越しの準備で疲れちゃった?」
「ほんとに大丈夫です。ただルビーちゃんを思うとなんとなく…」



「ああ…それは俺も同じ気持だ…。
でも考えてもしょうがないよ…。俺達にはどうにも出来ないんだし」
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「ええ…それは分かってます…」
「じゃ行くぞ。ルビーが待ってるから」



(私達にはどうにも出来ない?
いいえ…一つだけ出来る事があります…。そうすればルビーちゃんは…)
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(ああ…又だ…。
結局そこに戻ってしまう。どうすればその考えを吹っ切る事が出来るのだろう…)



「あれ?ゴルゴだ。何やってんの?あいつ?」
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「おい!ゴルゴ!」



「よう!お~このみちゃんも一緒か♪」
「ゴルゴさん、こんにちわ~」
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「久しぶり~相変わらず可愛いニャン♪ 食べちゃいたいぐらい♪」
「お前はいちいち一言余計なんだよ…。つーか…人の女捕まえて何が食べちゃ…」



「さあ、スイートハート!久しぶりの再開だ。僕の胸へ思いっきり飛び込んでおいで♪」
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「何がスイートハートだよ!俺の話聞けよ!」



「亮…なに一人でわめいてんの?
ってゆーか亮に言ってないし。別にいいだろ?減るもんじゃなし」
「減るんだよ!」
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「ケチな男だね~」
「ああ、俺はケチな男だ。絶対にお前には触らせない」



「聞いた?このみちゃん。この男、器が小せーと思わね?
こんなのやめて早いとこ俺のとこに来た方がいいって!今すぐ別れちゃいなさい♪」
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「別れねーよ!このみ、ゴルゴの話なんか聞くなよ!」



「呼び捨て?いつから呼び捨て?俺の許可なしに呼び捨て?じゃ俺も呼び捨てにする」
「なんでお前の許可が?それにこのみは俺の女だ。お前こそ俺の許可がいるだろ?」
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「ふ~ん…。じゃ、いい?あ、そう。サンキュ」



「このみ~~会いたかった~~♪」ムギュウ~~
「ひっつくな!」
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「このみ…ラブ…」
「ラブじゃねーよ!」
と、どうみても亮の敗北(笑)



「ところでゴルゴ、お前もルビーに会いに来たのか?」
「ああ。監督がたまにはルビーの顔見に来てくれって言ってたから…」
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「何で入んねーの?」
「ん~ルビーの顔を見たいは見たいけど…俺、泣いちゃいそうで…」



「は?」
「だってこの間変な事を耳にしたんだよ…。久しぶりにチームのメンバーと会ったらさ…その…」
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「なんだよ?」
「ルビーがさ…かなりヤバイとか何とか。だから俺…ルビーの顔見る自信がなくて…」



「バーカ!ルビーなら大丈夫だよ、心配すんな!」
「そう…だよな?うん…だよな!」
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「ほら、行くぞ」



(まさか…そんな事には絶対にならない)
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(間違っても…)



カチャ
「ウイーッス」
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「あ!亮お兄ちゃんだ!このみお姉ちゃんも一緒だ~♪ 会いに来てくれたのね!」



「お~!我が姫!今日も一段とお美しい!」
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「クスクス!よくぞまいったぞ!皆の衆!」



「わ!ゴルゴお兄ちゃんも!お兄ちゃんも会いに来てくれたなんて!久しぶりね!」
「おうよ!俺はお前に振られてから放浪の旅に出て先ほど戻ったばかりだ」
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「そうだったの!?だから眉毛も一段と伸びたのね!」
「このガキ…放浪の旅と眉毛とどう関係あんだよ…」



「関係あるの!それよりゴルゴお兄ちゃん、彼女は出来たぁ~?」
「あったぼうよ!いっぱいいすぎて困ってるぐらいだ。モテる男はつらいんだぜ?」
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「うっそだ~~!絶~対にうそだもんね~!ゴルゴお兄ちゃんのうそつきィ~!ベ~だ!」
「嘘なもんか!俺はな~…」



「このみお姉ちゃん!この間の続きの絵本、持ってきてくれた?」
「もちろんよ!」
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「聞けよ!」



ルビーはとても嬉しそうだった。ただ、気になったのは青白い顔だ。
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亮はいつにも増して白く、透き通ったようなルビーの顔色に不安を感じでいた。



「おう、来てくれたのか。悪いな」
「監督…」
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「ありがとな…」
「なに言ってるんですか。俺もルビーの顔を見たかったんです」



「ところで監督…ちょっといいですか?」
「ん?」
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「ちょっと話が…」



「ルビーの状態なんですが……大丈夫なんですか…?」
「その事か…」
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「監督…?」



「いいとは言えない…」
「移植の順番は…?」
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「まだなんだ…。だがもう厳しい状況だ。ルビーの体力がどんどん落ちている。
このままでは手術に耐えられるかどうかも分からないんだ…」
「そんな…」



「たぶん…もう覚悟はしといた方がいいだろう…」
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「なに諦めてるんですか!今日にでも移植の順番が回ってくるかも知れないのに!
監督らしくありませんよ…」



「俺らしくか…」
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「監督…」



「亮…」
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「ルビーがな…あいつ……たぶん………自分がもう長くない事を知ってるんだ…」
「まさか…」



「俺もずっと自分を励まして諦めないようにして来たつもりだ…。
だがな……ルビーが……ルビーが…俺に……俺にな…」
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「監督…?」



「俺に…パパの子供に生まれて来てよかったって言ったんだ…。パパとママの子供に…。
ルビーはそれだけで幸せだって……だからもう泣くなって…」
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「あいつは…俺とママが笑ってる顔を見るのが一番幸せなんだとさ…。
それさえあれば、人形もゲームも…大好きな絵本も何もいらないと…」



「だからパパ……元気出してって…。ママと二人でいつも笑ってて…。そう言ったんだ…。
あれがまだ8才の子供が言う言葉か?俺は…娘に励まされてる情けない父親なんだ…」
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「亮…俺はな…諦めたんじゃない、受け入れる事にしたんだ…。ルビーが言ったように、
泣いてばかりの毎日を終わりにしたい。これからは娘とは笑って過ごそうと…」



「だがもし…もしもルビーが俺より先に逝く事になっても、それがあいつの運命だと…
それがあいつの人生だと…そう…受け入れる事にしたんだ…」
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「もう娘に励まされるような父親はやめなくちゃな…
お前にも無茶な事を言ったりして、ずいぶん悪あがきをして困らせて本当に悪かった…」



「その事はもう…」
亮は監督にかける言葉が見つからなかった。
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愛する娘の死を受け入れなければならないなんて、
どんな慰めの言葉でも癒す事など出来ないだろう。



そして思った。神は、何故こんなにも過酷な運命を強いるのか。
まだ小さいあの子に…
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大人の気持を汲み取らなければならないような運命に何故したのか…。
亮は、胸の奥にどんよりと広がった曇を散らすかのように静かに息を吐いた。



「またな!次までには絶対に彼女を連れてくるかんな!」
「うそつきィ~~」
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「このやろ~~!」
「クスクスクス!」



「あーよかった!なあ、亮、ルビーが思ったより元気そうで安心したな~」
「ああ、まあな…」
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「さ~てと、ルビーと約束した事だし~~彼女でも見つけに街に繰り出すかな~」



「あれ?いるじゃん、彼女」
「あ?」
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「いるだろ?可愛い子ちゃんが………な?」
「なんだよ…」



「え?ゴルゴさん、彼女いるの!?」
「いるいる。ロ…リー…お~っとと…じゃなくて…沙…織ちゃ…お~っとと…」
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「てめー…」



「えーと……二人とも彼女?ありえるね…」
「こ、このみちゃん…そう言う冗談はさ…。
え?ちょっと待って…って言うかさ…このみちゃん…もしかして知ってる?」
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「知ってると言えば知ってるけど…」
「やっぱり?じゃさ…その…さ、沙織ちゃんの事とかさ…それとかさ…その…
ローリーと俺が…えーと…ゴニョゴニョ…やっ…ちゃった…事…とか…も…?」



「は?」
「だからさ…俺と…ローリーが……やっ……ちゃっ…た…事…とか」
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「は?」
「だから…」



「嘘!」
「え?聞いてないの!? え?じゃ何を知ってんの?」
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「それはだからローリーのきも…じゃなくて……その…沙織ちゃんの気持の事の方を…」
「あ、な~んだ!それしか知らないのね。びっくりした~~
俺はてっきりローリーと俺が一発…じゃなくて、二発?…ん~~四発はやっ…」



「あ…」
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(ばーか)



「えーーーーーーー!ローリーと一発やっちゃったの~~!!!!!!!?」
「こらこら…ゴルゴの真似して一発って言うのはよしなさい…」
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「亮…どうしよう…」
「知るかっ」



「ビックリ~~~!って言うか亮さんはどうして驚かないの?あ、知ってたんだ?」
「偶然にもローリーとゴルゴの熱~い一夜の出来事を立ち聞きしてね…」
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「ま、まあ…俺とローリーも大人の男子と女子だし…。
それにほら…たまにはそう言う事もあるよな? 亮、…分かるだろ?」



「で、ゴルゴさんは誰を好きなんですか?」
「はい?」
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「好きじゃないんですか?ローリーも沙織ちゃんも?だとしたら、
ローリーの事は好きでもないのにやっちゃったんですか?しかも一発も二発も三発も?」
「ず、ずいぶん過激ね…ヒ…ヒーハー…なんちゃって…これ…もう古い?ね、古い?」



「どっちなんですか?!
誰を好きで誰と一番やりたいのか、自分の気持が分からないんですか?!」
「こ、このみちゃん…だからちょっと過激…」
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どっち!



ローリー!
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キッパリ!



「ほんとにヒーハー…」
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「な~んちゃって…」



「あ、でもだからと言ってあいつに余計な事は言っちゃダメだよ?」
「どうしょう…」
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「知ってるだろ?あいつには一緒に住んでる男がいるって事。
それに俺は好きと言ってもたぶん、一時の気まぐれっつーかそんな感じで…」
「どうしよう…」



「ね?だからさ…間違ってもローリーには…」
「ね、亮さん…どうしよう…」
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「どうした?」
「って言うかこのみちゃん…俺の話、聞いてる?ね、聞いてる?」



「ほんとにどうしよう…」
「だから何が?」
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「実はね………ヒソ……ローリーもゴルゴさんの事を…」
「え…」



「マジ?」
「マジです。この場でゴルゴさんに言った方がいいかな…」
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「けど…ローリーには男がいるんだろ?」
ヒソ……あれはそんなんじゃないんです。ちょっとした事情があるんですよ…。
それにローリーもなんだか色んな事を気にしてるって言うか…」



「そうか…。ならその事は言わない方がいいと思う。二人に任せた方がいいよ。
二人ともガキじゃないんだし。…って言うかガキより始末が悪いけどな」
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「ほんと。ガキより始末が悪い…」



「何二人でゴチャゴチャ言ってんだよ!とにかくあいつには余計な事は言わなくていいの!
これは立派な大人の男女の、ちょっとしたよくある話なんだから!」
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「ガキだな……」
「ガキですね…」



バタバタバタ……
「急いで!」



「え?…なに…?亮さん…なんだか様子が…」
「ああ…ルビーの病室だ…」
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「担架が運ばれてるぜ…。おい、亮…誰かに様子を聞いた方がいいんじゃねーか?」



「ちょっとすみません、何かあったんですか?あそこの患者の知人ですが…」
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「ああ、いつもお見舞いに来て下さる方ね。それが…ルビーちゃんが突然倒れたんです。
それでいま集中治療室に運ぶところですが…すみません、急いでますので…」
「そんな…」



ダッ!
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「ルビー!」



「お母さん、どいて下さい!」
「ルビー!ルビー!」
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「和子…和子どきなさい…和子!」



「ルビー!」
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「………」



「ハア…ハア……パパ……恐い顔……」
「ルビー…喋るな…すぐに良くなるからな…もうすぐだから…」
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「パパ…今日は楽しかったね…みんなにも会えたし…ルビー…とっても嬉しかった…。
だからね……だから…」
「喋っちゃダメだ、ルビー!」



「パパ…ママ…ルビーはもういいの…もういいの…」
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「ルビー…喋るんじゃない…」



「パパ……ママと仲良くね……」
「なに言ってるんだ…当たり前だろ…」
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「パパ……ママ……大好きよ…」
「ルビー…分かってる…分かってるよ…パパとママもお前が大好きだ…」



「お父さん、すみません…もうそろそろ…」
「ルビー…パパもママもずっと側にいる。だから大丈夫だから…な?
元気になったらお前の好きなケーキを買ってやる…大っきいケーキだぞ~…だから…」
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「お父さん!」



「監督!」
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「嘘なんだ……受け入れるなんて嘘だ…そんな事は絶対に出来ない…
嫌だ…嫌だ……パパはお前を絶対に逝かせやしない……絶対に……」



「監督…」
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「………」



-数時間後-



「じゃ…容態は安定したようだし、俺は先に帰るわ…。君達は?」
「うん…亮さんがまだ居ると思うから…」
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「分かった…」



「このみちゃん…」
「え…」
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「こんなのあんまりだよな……ふざけんじゃねーよな…」
「うん…」



「俺…あいつは…ルビーは絶対に大丈夫だって信じてるから…」
「もちろんよ…絶対に大丈夫よ…」
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「早くあいつとの約束を守らなきゃな。
また馬鹿にされないように、真剣に彼女でも作るか…。じゃな…」
「うん…」



(絶対に大丈夫よ…。そうよね?そうでしょ…?)
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(嘘よ…大丈夫ですって?これのどこが大丈夫なの!)



カタ…
「亮か…。帰ったんじゃなかったのか…?」
「ええ、ルビーの容態が安定するまでは心配で…」
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「悪いな…。…ルビーはとりあえずは安定した。けど…もう……」
「監督…」



「亮…受け入れるなんて……俺には出来ない…やっぱり出来ないよ…」
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「なんでルビーなんだ?なんであいつなんだ?
世界中には何十億って数の人間がいるのに…なんて俺の娘が……」



「監督…」
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ほんとうに何故なのだろう…。あんなにもいい子が、どうして…



(亮…さん…)
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「大変そうね…」



「麗華さん…どうしてここに…」
「あなた…あの子を助けたくない?」
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「あの幼い子を助けたいでしょ?」




著作権者様から許可を得て、お借りしているBGMです。
よろしかったらお流し下さい。音量にご注意ください。







「なんですか…いきなり…」
「私ならあの子を助ける方法を知っていると言っているのよ…」
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卑劣な条件付の方法を! ですか?!」
「あなた…知っているのね?」



「私は…」
「そう…知っているのね、私が何を言っているのか…。亮から聞いたのかしら?」
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「いいえ…」
「そう。いずれにしろ、私の言っている意味は分かってるって事ね?」



「りょ…亮さんはすぐに監督に断りました…。あんな話、受け入れる方がおかしいわ。
それに私と彼はもうすぐ結婚します…。だから…」
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「あなた…本当に亮とこのまま一緒になって幸せになれると思ってるの?
もしあの子に何かあったら…それでもあなた達は幸せになれるのかしら?」



「どうして私達は幸せになれないんですか?あの子の事と私達の事は関係ないわ!」
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「けど…そう簡単に割り切れるの?
あの子を犠牲にしてまで手に入れた幸せに…心から喜べるのかしら?」
犠牲になんかしていない!



「でも結果的にそうなるわ。
あの子を助けることが出来たのに…そう思わずにはいられない日々を送る事になる」
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「そんな事にはならないわ…」
「いいえ、なるわ。少なくとも亮はそう思うはず。そして彼はきっと苦しむわ…」



「亮さんが…苦しむ…?」
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「お願い…あなたの協力が必要なのよ…あの小さな命を助けられるのはあなたよ。
あなたが一言、亮に別れると…そう言ってくれればいいだけ…」
「バカバカしい…」



「そのバカバカしい事で幸せになれる人間がたくさんいるわ。あの子も、あの子の両親も…」
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「そして亮も苦しみから解放される…。それに彼はいずれは二宮家の当主になれるのよ…。
彼の将来を考えたら何が一番いいか分かるでしょ?」



「あなた…私を脅してるの?」
「脅してるんじゃなくて提案しているのよ…何をすれば亮にとって一番いいのか…」
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「あなたは悪魔のような人だわ…最低よっ!」



私だってここまで最低な事をしたくなかったのよ!
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私が何の考えもなしにこんな事をする人間だと思ってるの?
あなたは何の苦労もなしに亮の心を手に入れた。私が一番欲しいものをあなたは!




この時このみは、麗華の本心を垣間見たような気がした。
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ああ…きっと彼女は亮を心底欲してるのだ…。
彼を欲し、そして愛してる…。そう…私と同じように…。



「とにかく…あなたはあの光景を見てなんとも思わないの?亮のあの顔を見ても?
亮はいま苦しんでるわ。あの子を助けたいと……苦しんでる…」
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「それを解決出来るはあなたよ。
あなたが鍵を握ってるの…。すべての人の苦しみを取り除けるのはあなただけ…」



「それじゃ…いい返事を待ってるわね。早くしないと時間がないわよ…」
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「これで失礼するわ」



私が鍵を握っている…?
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このみは、以前もその事が頭をよぎった事を思い出していた。
自分が鍵を握っていると…。



突然、このみは病院の白い壁が急に目の前に迫って来るように感じた。
早く逃げなければ…早く…
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ここから逃げるためには鍵を差し込めばいい…。
そして後はカチリを回すだけだ…。



だけどそれをしたら…
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私は彼を失う…




続き、第39話へ 「突然の告白」
二度目の恋…タイトル一覧は 「こちら」   
ストーリー別一覧は       「こちら」 
 

第37話 「童心に帰りたい」

*二度目の恋 君に逢いたくて…第37話


-翌日-


ルビーの電話で心に疑問が生じ、眠れない夜を過ごしたこのみ。
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いや、ルビーの電話のせいではない、
それは監督と亮の話を立ち聞きしたあの日からすでに感じていた事だ。



このままでいいのだろうか。このまま亮と何事もなかったように結婚をし、
それで二人は幸せになれるのだろうか。
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あんなバカげた話は到底受け入れられないとは言え、
それでもルビーを犠牲にしてしまうと感じるのは拭いきれない。



だが、何もかも麗華の思い通りになるような事には絶対にしたくない。
したくないけれど……事はもう動いているように思える。
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何故なら、すでに亮との結婚を素直に喜べない自分がいる。
そしてある考えばかりが頭をよぎる。



私がこのまま……そう、一番いいのはこのまま私が諦めれば……
夕べと同じように、その事ばかりが頭に何度もよぎり、このみは目をギュッと閉じた。
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やがて彼女はそれを振り払うかのように大きく息を吸い、
携帯電話の短縮ボタンを押した。



「こんにちわ…このみです…」
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「よう♪ デートの誘い?それならすぐにでもOKだけど?」



「いえ…あの…亮さん…私、ルビーちゃんの所へ行きたいんですけど…時間あります?
よければ一緒に行ってもらえないかと思って…」
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「実は俺も君を誘おうと思ってた。向こうに行く前に一度、会いに行こうか?」
「分かった、じゃ週末にでも迎えに行く」



「ところで、引越しの準備は出来た?」
「そっか、じゃ後は行くだけだな…」
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「はい…後は行くだけです…」
「ええ…じゃその時に…」



カチ…
亮もこのみと同様、眠れない夜を過ごしていた。
だが、亮はこのみと別れようとは夢にも思ってはいない。
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亮の頭には麗華と結婚すると言う考えはみじんたりともないのだ。
むしろあんな残酷な話で監督を期待させたのかと思うと、麗華には心底腹が立つ。



そして自分にも腹が立っていた。
どうして麗華と関係を持ってしまったのか。
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元はと言えば、自分が麗華と関係を持ってしまった事から生じた事だ。
あんな冷酷極まりない女性と関係を持った自分が許せない。



もちろん、あの時の自分は淋しかったとか、どうかしてたとか、
そんな事が理由にならないのも分かっている。
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どんな理由があるにしろ、麗華の本質はすぐに気づいていたのだから…



亮は気持ちを切り替え、やらなければならない事に意識を集中した。
だが、それでもすべての心配事を心から追い払う事などはできやしない。
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そのせいだろうか、彼は重要な事を見逃していた。
そう、このみの心の不安を彼は見逃していたのだ。



彼女の沈みがちな声、会話中のため息、それらを亮は見逃していた。
そんな事は彼らしくない、普段の彼ならすぐに気づいたはずだ。
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悲しいかな…残念な事に、今の彼はそこまでは気が回らなかった…。


-アパート-


「あはははは!くだらないな~(笑)」
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「………」



「シルヴァー…仕事、まだ見つからないの?」
「あ…ああ…まだなんだ…ごめん…」
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「家は?家もまだ?」
「そうなんだ。中々いい物件が見つからないんだ。
時期が悪いのかも知れない。お前には迷惑ばかりかけて悪いと思ってる」



「いいけどさ…」
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彼女は日増しに我が物顔でソファーにくつろぐシルヴァーを見てイライラしていた。
もう同じ家の中にいるのさえ息がつまる。そろそろいい加減にして欲しい。



これじゃあ一緒に暮らしていた頃と何も変わらないじゃないか。
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あの、後悔しか残らなかった苦痛の日々と一緒だ…。
私はまたバカな事をしてしまったのだろうか。



とは言え…すでに受け入れてしまった事だ。いまシルヴァーを追い出せば、
彼は怒り狂って私を罵倒するだろう。あの頃と同じように。
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ローリーは彼の内面のモロさも知っていたが、同時に凶暴性も知っていた。
それを知っていたのに、つい情にほだされて甘い顔を見せてしまったのだ。



ああ…やはり私はどうしようもないバカだ…。
今はせめて、早く彼が仕事をみつけ、家を出て行ってくれるのを祈るばかりだ。
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なんだか何もかもがうまく行かない…



すべてにイラつき、仕事もやる気が起きなければ絵にも意欲が湧かない。
挙句の果て、生きていくのさえかったるくなる。
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ローリーは一刻も早くこの状況を脱出したかった。
だがそう思えば思うほど、気持ばかりがアセってイラつくの堂々巡りだ。



そして気がつけば、いつもゴルゴの事を考えている。
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あの時、シルヴァーと一緒に住んでると言った時のゴルゴの顔が
少しだけ曇ったのは気のせいだっただろうか…。



彼の唇が一瞬ゆがみ、瞳に小さな炎を見たような気がした。
それはまるで嫉妬しているようにも見えた。
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あいつが嫉妬を…?まさか…
ローリーはその事ばかりを考えてしまうのだ。



酔った勢いでベットに転がり込んだ二人だけれど、
あの夜の熱く、我を忘れて情熱に身を任せた夜は素晴らしく最高だった。
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けれどあれが……あれが間違いの元だった。
あの夜があんなに最高でなければよかったのに…。



なまいきで、小憎らしい口とは裏腹な優しい愛撫。
自分の胸を愛しむようにすっぽりと包んでくれた大きな手。
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私がクライマックスに達する時の顔を、勝ち誇ったように見てたっけ…。
そしてその後、彼は嬉しそうに笑って私の胸に鼻をこすりつけて来た…。



ああ…あの時の子犬のような彼を忘れらない…。
あの…大好きなおやつを前に、嬉しそうに走って来るような子犬のような目…。
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あいつは守ってあげたくなるような…変な母性本能をくすぐられる…。



だけどいくらそう思っても、あいつはあの日、沙織とデートだと言った。
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シルヴァーとの事で、もしゴルゴが多少の嫉妬を感じたとしたらそれは、
一回でもベットを共にした相手への独占力からに過ぎないだろう。



それに、こんな私があいつとなんて…絶対に無理な事なんだし…
もうこれ以上、考えるのはやめなければ…やめなければならないのに…
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(まいったな…)


カタ…


「ローリーさん…」
「沙織…」
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「あの…ちょっといいですか?」
「うん…なに?」



「突然すみません…。
あの…ローリーさんにちょっとその…お尋ねしたい事がありまして…」
「尋ねたいこと?」
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「ええ…」
「なによ?」



「はい…。ローリーさんはその…今…お慕いしている男性などはその…」
「は?お慕いって…惚れてる男がいるかどうかって事?」
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「た、例えばシルヴァーさんとか…だ、だって一緒に暮らしているし、
それに以前は恋人同士だったとおっしゃっていたし…」



「沙織…」
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「だからそれはこの間も言ったけど…私とあいつはとっくに終わってるよ。
今は男と女の関係なんかじゃないし、これからもなろうとも思わない」



「そうですか…」
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私は彼女に何を言いに来たのだろう?何を聞きに来たのだろう?
沙織は自分にそう問いかけていた。



ゴルゴからあれから電話はない。もちろん、自分でもないだろうとは思っていたが…。
しかしそれでも、沙織は毎日電話の前でゴルゴからの連絡を待っていた。
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そして時間が経つにつれ、ある一つの疑問が浮かんで来たのだ。
それはあの日、ゴルゴが私とデートだと言った時のローリーの瞳だ。



ローリーの瞳に一瞬だけ悲しげな表情がよぎった事を思い出したのだ。
それはほんの一瞬の事だったが、確かにローリーは瞳を曇らせた。
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やがて二人の間に数秒、かすかに切ない時が流れたように感じた。
お互いを探るような瞳。二人にしか分からない空間。



あれは……あれはなんだっだのだろう…。
ゴルゴに気を取られてばかりいて、その事を頭の片隅に追いやっていた。
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だが、沙織はそれが一番肝心な事だと気づいたのだ。
だからそれを私はどうしても確かめたかった…。



私は、ローリーが彼に惹かれていないなどと、どうして決めつけてしまったのだろう。
もし…彼女も彼に惹かれているとしたら…?その事が頭から離れない。
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もしそうならば、私は完璧にスピンアウトだ。
そしてそうなったら私の恋は終わってしまう…。



あのがっしりとした固い胸も、からかうような茶目っ気たっぷりの瞳も、
永遠に私のものにはならない…。
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永遠に…



「座ったら?座ればいいじゃん」
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「あ…はい…」



「この間のデート…楽しかった?」
「え…」
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「あの日、ゴルゴとデートだったんだろ?」
「え、ええ…楽しかったです…」



「そっか…」
「ゴ、ゴルゴさんが面白い事ばかり言って笑わせてくれて…とても楽しかったです…」
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「よかったじゃん」
「ええ…」



「………」
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「彼が…」



「彼がまた会おうって言ってくれたんです…。また私と会いたいと…」
「ゴル…ゴが…?」
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「私……」



「彼にならすべてをあげてもいいと思っています。
いずれ近いうちに………身も心もすべてを彼にあげたいと…」
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「彼もそれを望んでいるようなので…私はなんの迷いもありません。だって私は…」



「彼を愛していますから」
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「それに、彼も私の事を…」



一瞬、ローリーは言葉が出なかった。
愛してる?彼もそれを望んでいる?
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ゴルゴが沙織に言ったの?愛してると?彼女を抱きたいと?
そう思ったとたん、ローリーの胃がよじれたようにギュッとなった。



そうか…あいつなら言うかも知れない。どうせチャラ男だ!あいつなら言うだろう。
それに、もしかしたら沙織との事を真剣に考えているのかも知れない。
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結婚と言う形を…。
彼にとって沙織と結婚する事は、プラスになれどマイナスになる事はないのだから。



だけどアイツが沙織を抱くなんて…
そして私の胸も愛でたように、彼女の胸も愛でるのだろうか…
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ああ…ムカツク…ああ…腹が立つ…ああ…あいつを殴りたい!



「ラ…ラブラブっすね…」
ローリーはそう言いながら、からかうように高い声を出した。
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だが実のところ、声が裏返っていないだろうか?顔はしかめっ面をしていないだろうか?
それだけが気になって仕方がなかった。



どうやら最近のアパートの住人はそれぞれが悩み事の真っ只中だ。
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これが青春と言えばそれまでだが、
けれど青春とは、決して楽なものではないと改めて思う。



そしてここにも一人…
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悶々と悩んでいる青年が…



鈴之介はあの夜のさせ子との一夜の事をいまだに考えていた。
あの時の事を考えると、今でも顔から火が出るほど恥ずかしい。
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だがその一方で、女性からあんな風に求められた事に、
自分にも魅力があったのかと自信のようなものがふつふつと沸いて来ていた。



彼女と連絡を取って誘って見ようか。
今度はあんな場所ではなく、もっと健全な場所でデートでもしてみようか。
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そんな事ばかりが頭の中でぐるぐると回っていた。



だが残念な事に、電話に手を伸ばそうとしても体が動かなかった。
何故なら、自分を求める相手がさせ子ではなく、沙織だったらと…
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そう思わずにはいられなかったからだ。
こんな風に、ちっとも沙織の姿が頭から出て行かない。



ふと思いをはせると、沙織のはにかんだ笑顔ばかりがチラつく。
そしてさせ子のように、もし沙織があんな風な悩ましげな姿で現れたらと…
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そう思うと…



あ~ら不思議…
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何故かさせ子の顔が沙織の顔へ取ってかわる(笑)
そして鈴之介は足と足の間が熱くなり、いつものように鼻血となって情熱が溢れ出す。



「はっ!」
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ああ…またやってしまった…。
僕はどうしてしまったのだろう…。これでは単なる獣だ…(訂正←変態野郎だ)



ああ…僕は本当にどうにかなってしまいそうだ…
こんな事ではいけない。
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少し頭の中を整理して、健全な方向へと向かわなければならない。
そうだ…健全な方向へ…



「よい子のみんな~♪ 今日はお姉さんと一緒にお歌を唄いたいと思います♪
きっとみんなも知ってる歌だぞぉ~~♪」

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「さあ!テレビの前のみんなも一緒に!どんぐりころころを唄いましょう!
準備をして待っててね~♪」




「どんぐりころころか…そう言えば僕も小さい頃よく唄ったな…
子供は純真で汚れがなくていい。あの頃の僕も確かに純真だったはずなのに…」
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「そうだ、この子供達のように、僕も少し童心に帰って邪悪な心を清めなければ…
あんな場面ばかり思い浮かべてないで童心に…どうし……」



「鈴之介さん…うふふふ…」
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「鈴之介さんったら…うふふ…」



「え?」
「鈴之介さん…こっちよ…うふふふ…」
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「さ…さおり…さん…?」



ガタッ!
「さ、沙織さん!ど、どど…どうしたんですか!し、しし…しかもそんな格好で!」
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「いや?」
「い、いい…いやとかそう言う問題では!」



「そんな事より鈴之介さん、私と気持いい事しません?」
「え!?」
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「沙織…気持いい事したいな…。二人でいい気持になるの…」
「ふ…二人で…いい気持…?」



「そう…うふふ……いい気持…」
「そ…そそそそ…それは…どう言う…どう言う…」
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「早くベットへ来て…鈴之介さん…」
「で…でも…」



「ベットへ来て…鈴之介さん…ベットへ来て…鈴之介さん…いい気持よ…うふふふ…」
「いい気持ち……」
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「そう…いい気持ち…だ・か・ら…ねっ?」
「わか…分かりました…すぐにベットへ…ベットへ…ええ…行きます…行きます…
マッハでひとっ飛びで…ゴーゴー…飛べ…ゴーゴー…」



「よい子のみんな~準備は出来たかな~?集まって~~始まるよ~♪」
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「ほらほら、そこの僕も一緒に参加して、お姉さんと一緒に!サン、はい!」



「どんぐりころころ~♪」
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「いい気持…」



「お池にはまって」
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「いい気持…」



「どじょうが出て来て」
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「いい気持…」



「ぼっちゃん、一緒に」
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「いい気持ち~…」



「さあ、もう一度元気よく~!ぼっちゃん一緒に♪」
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「いい気持~…」



いい気持~…
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夢か幻か…それは誰にも分からない…。
Wow~!





続き、第38話へ 「突きつけられた現実」
二度目の恋…タイトル一覧は 「こちら」   
ストーリー別一覧は       「こちら」
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