第45話 「空回りする粉雪」
*二度目の恋 君に逢いたくて…第45話
-翌朝-

コンコン…
「おはようございます」
コンコン…
「亮様、起きていらっしゃいますでしょうか。朝食の準備が出来ております」

「亮様?」
このみから突然の別れを言い出された亮。
まだ信じられない、彼女があんな事を言うなんて。

夕べは一睡も出来ずに、ただ呆然と冷え切った部屋の中で固まっていた。
心も体も動かない。時間の感覚さえ分からなくなっていた。
カチャ
「おはよう、起きてるよ。悪いけど食欲がないんだ。朝食はいらない」
「ですが…」

「ごめん、本当に食いたくないんだ」
「そうですか…かしこまりました…」
彼女が言った事は本当なのだろうか?
今までの俺への気持ちは憧れだったと?前の男と別れたせいで淋しかっただけだと?

挙句の果て、その男からプロポーズされたからヨリを戻すと?
今まで俺と二人で過ごした日々は何だったのか。すべて偽りだったのか?
いいや、違う!彼女の俺へ向けたあの眼差しには愛が感じ取れた。
偽りなんかじゃない、本物の愛が確かにそこにあった。

何か事情があるのかも知れない。
俺がサンセットバレーで一からやり直す事に不安を感じていたのだろうか…。
そうだ、ルビーの事で全財産を投げ打とうとしてる事に不安があってもおかしくはない。
俺は一人で突っ走り過ぎてしまったのかもしれない…。

いずれにしろ、何らかの理由があってあんな事を言い出したに違いない。いったい何なんだ?
それとも…まさか本当に彼女はあの男と…?
ああ…結局そこにたどり着いてしまう。何度考えても行き止まりだ…。
亮の頭に繰り返し同じ事が消えては浮かんでいた。

結局最後には一番認めたくない答えに行き着くのに、
自分でも呆れる程、考える事をやめられない。息が詰まりそうだ。
もう分からないよ…。何故、突然あんな事を言いだしたのか…。

俺には君が分からないよ…。
ツルルルルル…
ツルルルルル…

「ただいま出かけております。発信音の後に…」
(電話……亮さんかな……)

なんて…まさかね…。あんな事言ったんだもん…。彼から電話がくるなんてありえない…。
一方、亮に別れを告げ、やっとの事で家に帰り着いたこのみ。
このみも亮と同じように、夕べは一睡も出来ないでいた。

寝たら最悪な夢を見る事は分かっていたからだ。
もっとも、ベットに入ったところで睡魔がやって来るとは到底思えなかったが。
目を閉じると、夕べの彼の悲しそうな顔ばかりが目に浮かぶ。
彼のあの、驚きと衝撃の顔。

そして「お先に…」と言った時の失望の声。その事を思い出すと自分が許せなくなる。
ああ…彼を傷つけた自分をこの世から無くしてしまいたい。
だが…いくらそう思っても、ああするしかなかったと思っている。
彼を納得させるためにはあの方法しかなかったからだ。

普通の理由じゃ彼は絶対に引き下がらない。
そう、もし時間が戻って、また同じ場面に差し掛かっても同じ事をしたに違いない。
もうすべてが終わったのだ。この先、前の男へ走った私を彼は決して許しはしないし、
そしてあの力強い腕に私を抱き寄せる事も二度とない…。


ツルルルル…
ツルルルル…
「………」

「雪が止まないな…」
「変だな…」


「なんだ?どうした?」
「このみよ…この間から何回電話しても電話に出ないって言ったでしょ?
あんまりにもおかしくない?携帯も家の電話も出ないのよ?」

「そうだな…。だけど彼氏でも出来てデートとかで忙しんじゃねーのか?」
「まさか。彼が出来たなら私に真っ先に言うはずよ…」
「あ、分かった。お前、絶交されてっとか?」
「なんで私が絶交されんのよ?」

「俺のせいでさ。まだ俺を忘れられなくて、お前と話したくないわ~みたいな?」
「あ~~それはないない、ありえない。ジーンの事なんてと~っくに忘れてるわよ」
「へいへい、さいですか…。 なあ、ところでさ…今月……あった?」
「何が?」

「何がってお前……毎晩頑張ってる証だよ。俺らのベイビーさ♪」
「残念でした。いま、まさにそれ」
「げ~っ…」がっくり
「なにその大袈裟な肩の落としよう」

「だってしたら今晩…」
「なにが今晩よ、ジーンの頭にはそれしかないの?」

「だってだって俺朝っぱらから…
うなぎとスッポンと山芋と納豆、もりもり食べちゃった…元気いっぱいなの…」
「ばっかね~(笑)」
「ふ、風呂でやる…?」

「ば~か(笑)」
「と言うかさ、ジーン、なんか間違えてんじゃない?」
「あ?」

「放出する場所よ!」
「ば、ばか!いくらなんでも間違えるか!」
「だってさ~こ~んなに頑張ってるのにさ~」
「ま、まさか…いくらなんでも…」

「な~んて冗談よ(笑)ジーンったら本気にしちゃって(笑)」
「な、なんだ…冗談かよ…り、リンダちゃんたらぁ~あはは…はは…は…」
「さて、お昼の買い物でも行って来るわね」
「お、おう…」


「………」
ピッ


「もしもし唐沢?俺…ジーン…。あのさ…医学的にちょっと聞きたい事が…」
「うん…その…あ、穴の位置関係…につい…て…ゴニョ…」
「位置関係?ってなんだ今更。ピーチボーイでもあるまいし(笑)」


「いいから黙って答えろよ!あのよ…あれはやっぱさ…前…だよな?」
「あったりめ~だろ~!そんなもんおめ~前に決ま…あ、こら!そこに穴掘んな!」


「え?」
「こらこらこら!そこはダメ!
その雪の下には、せっかく俺の可愛い可愛い嫁さん(稲子)が作った花壇があるの!」


バウ?
「いいか、よく聞け。掘るなら後ろだよ!後ろ!分かったか、ボケ~~!」


「な、なんかよく聞こえないんだけど…。お前いま後ろって言った?
って…おいおい…いくらなんでもそれはちが…」
「ああーーーダメダメ!前はダメだっつーの!さっきから後ろって言ってるだろ~が!
お前は前と後ろも分かんないのか!怒るぞほんとに!」


「バウ~~」
「いや…唐沢…だからな、それは後ろじゃなくて前だろ…やっぱり…。でしょ?」


「いいや!前じゃなくて後ろ!」きっぱり
「そうそう…いいぞ~後ろだぞ~~バックだバック…カモ~ン…」

「バウ!」
「嘘…」


「わりーわりーうちのバカ犬がよ……ジーン?」
ツーツーツー
「切れちまった…」

「あれ?ひょっとしておれの出番って…これだけ?」
ヨロ…
「まさか俺…マジで間違えてた?い、医者のアイツが言うんだ…間違いねー…俺とした事が…。
と言うか俺の今までの人生ってなんだったんだ?違う場所で喜んでる俺って…」

「まいったな…後ろが正解とは。赤ん坊が出来ないはずだ。
この先、いきなり方向転換できるのか、俺! と、言いつつ、ちょっとワクワクだけど…」おいおい…
「しかしな…リンダになんて言い訳したらいいんだよ…実は今までのは間違ってて、
本当は後ろでした、な~んて言ったらアイツ、ぜってーキレそう…」

「いや、無理無理、間違ってもそんな事は言えない。しょ~がね~…
こうなったら知らんフリして後ろに転換するしかねーよな…。大丈夫だろ…きっとアイツ…」
「気付かないよね?」気付くよ、おたんこなす!(笑)


(リバービュー)
「う~~さみ~~なんだこの寒さ。凍えちまうぜ…まったく…」

「んだよ…しけってるじゃんか~~火~つけよ!このやろ~~!」
ローリーが電話に出ない事にイライラしているゴルゴ。もはやイラつくというよりはムカつきに近い。

なんで電話に出ないんだ?いくらあの時、ちょっと言い合ったからって、これはないだろう?
こんなに毎日毎日電話してるのに…
毎日酒をかっくらってベットに入ってもちっとも眠れない。無理やり寝ようとしても、
すぐにローリーとの、あの悩ましい一夜の事ばかり思い出し、かえって興奮する始末。

このままだと俺は寝不足で死んでしまう!
「くそ!」


ゴルゴは気がつけば、そこらへんにあったGパンを履き、上着も着ないで外に飛び出していた。
そしてやって来たのはもちろん、ローリーが住んでるアパートの前。
ゴルゴは直接ローリーをとっ捕まえようとタクシーを飛ばしてやって来た。

「このやろ~…さみーじゃねーか…」
よ~し…今日こそはアイツにちゃんと言うぞ。
まずは穏やかに話し合ってだな…そんで俺の気持ちを言えばいいんだよ…だろ?

こう言う時はあれだな、ごちゃごちゃ言わねーでズバリと言った方が早えーな。
そうだ…俺はお前がだな…その……す…す…す…すき…
「やき…」

ちゃうちゃう、そうじゃねーし…。じゃなくて、俺はお前が…す…す…す…
「すき…」

「ゴルゴさん!」
「わ!びくった~」
「どうしたんですか?こんな朝早くに?」

「ど、どうしたってその…さ、沙織ちゃんも早くからお出かけ?」
「ええ、私最近、ジョギングを始めたんですよ。ちょっと太り気味で(笑)」
「あ!ひょっとしてゴルゴさん、ローリーさんに会いにいらしたんですね?」
「え!?あ…えっと…まあ…その…べ、別にそういう訳じゃ…ゴニョ…」

「隠さなくてもいいですよ(笑)」
「いいですよって…(ずいぶん明るくね?)」


「上着も着ないで寒くないんですか!」
「さ、寒いね…確かに…」
「そうだ…俺さ、君に言わなければならない事があったんだ…」
「私に?」

「うん…。ほら…この前会おうって約束しただろ?あの時話そうと思ったんだけど…」
「そうだ!私ったらごめんなさい!あの時はすっぽかしてしまって…」
「いや、いいんだ、それはもう…。んでさ…その…」
「ゴルゴさん、私もういいんです」

「え?もういいって…何が?」
「私に言いたい事の内容ならもう、分かってますから。
あの日、ゴルゴさんが私に何を言おうとしてたのか、本当はとっくに察してました」

「だけどそれを受け止めるのが怖くて…」
「悪あがきしちゃったんです、私(笑)
でも もう大丈夫です。私のゴルゴさんへの恋は終わったんだと…ちゃんと分かってますから…」

「沙織ちゃん…」
「私、ゴルゴさんには感謝してるんですよ」
「俺に?」

「はい。あんな気持ち、生まれて初めてでした。とても不思議な感覚。
ドキドキして息苦しいのに、何故か体は妙に興奮しちゃって…今にも空高く飛べそうでした…」
「そして普段なら出来ない事も、全部出来そうな気がしました。
だから出来たんです、あたなに好きと伝える勇気が」

「あれが恋なんですね…。とても熱くて切なくて。
きっとこれから先、あんな感覚を味わう事は二度とないかもしれません」
「いや、そんな事はないさ。
また人を好きななれば、同じように熱くなるよ。大丈夫、俺が保障する」

「ほんとですか(笑)
なら私、ゴルゴさんが保障してくれる事ですし、もう一度 恋をしてみようかな(笑)」
「うん(笑)」
「わ!大変!ゴルゴさん、早くローリーさんのお部屋に行ったらどうですか。凍えちゃいますよ!」
「あ…ああ…まあ、そうだな…うん…じゃ…ローリーのところへ…」

「早く行ってあげて下さい(笑)」
「う、うん…」
「あれ?お二人とも、こんな朝早くからどうしたんですか?」


「よう、鈴之介じゃねーか」
「ゴルゴさん…寒くないんですか…そんな半袖で…」
「うるせーよ…」

「風邪ひきますよ?」
「お、ちょうどいいや。
お前のそのマフラー…さぞかしぬくいんだろうね…俺にちょっとそのマフ…」
「あ!分かりました!」
「聞けよ…。だからちょっくらそのマフラー…」

「ゴルゴさんは沙織さんに会いにいらっしゃったんですね!」
「はい?」
「僕は野暮だな~~(笑)すみません、お邪魔してしまって」
「何言ってんだよ…とんちんかんな事言ってんじゃねーよ…。だいたい、俺と沙織ちゃんはだな…」

「隠さなくてもいいじゃないですか!もしや照れてるんですか?(笑)」
「そうじゃなくって…」
「ええ、そうなんです!ゴルゴさんったら私に会いに朝早くから来てくれたみたいなんですよ!」


「あ?」
「いや~うらやましいな~!銀世界の中でのデートとは、なんとロマンチック!」
「なにがロマンチック…。お前ね、さっきから言ってる事がおかしいんだよ…。あんな…」

「ええ!ゴルゴさんったら本当に素敵ですよね!」
「さ、沙織ちゃん…?」
「そうだわ!これから私、パンケーキを焼こうと思ってたんです!
よかったらお二人ともいかがですか?」

「そんな!お二人のお邪魔するほど僕も野暮じゃありませんよ(笑)」
「まあ、何をおっしゃってるんですか!遠慮なさらず!」
「ゴルゴさんも中へどうぞお入りになって!」

「あの…もしもし?沙織ちゃん…俺はね、ローリーの所へ…」
「沙織さん、お気持ちは嬉しいですが、僕はほんとうに…」

「いいえ、鈴之介さんもどうぞ中へ。私達の事ならお気になさらないで下さい。
そんな事で気を悪くするゴルゴさんではありませんので」
「そうですよね!ゴルゴさん!」

「え?あ…はい…」
(じゃなくて…何言ってんだ…俺…)

(な…なんかこれ…おかしくね?)
「さあ、どうぞ召し上がって下さいね♪」


(これって何かの罰ゲーム?)
「申し訳ありません…せっかくのお二人の時間をお邪魔してしまって…」
「いや…だから俺と彼女は…」

「でもお二人は結局うまくいったようですね!
こうしてゴルゴさんが訪ねて来られるぐらいですから。僕も安心いたしました」
「ちょっと俺の話聞けって…だからな、鈴…」
「はい、うまくいってます」

「うふふ…。ゴルゴさんってとっても優しいんですよ。私…とっても嬉しいです…」
こらこら…何言っちゃってんの?

「さ、沙織ちゃん…あのさ…さっき…たった今…その…言ったよね…?」
「ゴルゴさん、又二人でデートしたいですね♪」

「ねっ言われても…。そう言う話じゃなくてね…ほら…さっき君…言ってたよね?俺との恋は…」
「デートと言えば…」
「って…俺の話聞いてる?ね、聞いてる?」


「鈴之介さんもつい先日、素敵な女性とデートしたんですよね?」
「え…」
「この間嬉しそうに出かけていったじゃありませんか…。前にお会いした方とデートすると…」

「あ、ああ…ええ…まあ…」
「え?鈴之介、そんな女いたの?」
「ええ…一応…」

「へ~~なんだよ、案外やる事やっちゃってんじゃん」
「ぼ、僕はやる事なんて…」
「ええ、そうですね。やる事やっちゃってますね」

「さぞかし素敵なデートだったんだろうと思いますわ…」
「で、どこ行ったの?あ、お前の事だから、公園でお弁当広げて~てか?」
「いいえ、きっとお花がいっぱいある、素敵なレストランに行かれたのでは?」

「いやいや、鈴之介だもん。ぜって~公園でお子ちゃまデー…」
「いいえ、絶対にお花がたくさん、たくさんあるレストランに行かれたと私は思いますわ!」

「そしてその後はお二人でクスクス笑ったりクスクス笑ったりクスクス笑ったりなさったのでは!?」
「な、何故それを…」

「女の第六感ですわ!」キッパリ
「ほ…ほ~お前にしては中々じゃん…」

(なんだか沙織ちゃん…前よりも数段に迫力が増してると思うのは俺だけ?)
「ま、まあ…中々楽しいデートでした…。あ、あの…僕の話しはもうこのへんで…」
「その後はどうなさったのですか?」

「え…」
「その後です。どこへ行かれたのですか?」
「え、えーと…そ、その後は…そのまま公園を歩いて…」

と、トボケル鈴之介
「ま、いいじゃん。お前のデートコースを聞いてもな~」


「そういえば…]
「最近、町の外れでどピンク色の建物を見かけました。ゴルゴさんはご存知ですか?」
「どピンク色?そんな建物あったっけ?」

「ええ、あります。と~っても派手でケバイ建物なんですよ!」
「派手でケバイか…。としたらその建物はアレっしょ?」
「そうアレですね」
「え?沙織ちゃん、あれって分かってんの?ね、分かってんの?」

「あんなピカピカしてていやらしい…」
「いやらしいって…あ、知ってんだ?ね、知ってんだ?てかさ、俺の話し聞いてる?」
「あれは何をするところなんでしょうね?鈴之介さん?」←聞いちゃいねー
「え!」ギクリとする鈴之介


「ぼ、僕に聞かれても…」
「あ~ダメダメ。鈴之介に聞いても無理ってもんよ。絶対に鈴之介は利用しそうにない所だもん」
「そうでしょうか?そう決め付けるのは失礼じゃありません?」

「失礼?いや…だけどさ…あの建物は…だから沙織ちゃん、あの建物の意味は…」
「ゴルゴさん、あなたも利用した事があるんじゃありません?」
「お、俺はあるって言うか…昔の事って言うか…
で…でもでも俺はそんな趣味の悪い、どピンク色でいかにもっつーラブホは…ゴニョ…」
「あるんですか!ないんですか!」

「あります!」何故か敬語のゴルゴ(笑)
「それなら鈴之介さんだって利用しますよ」
「そうですよね?鈴之介さん?」
「ぼ、僕は!」

「僕は、何ですか?」
「ぼ、僕は…なんの事か…」
「沙織ちゃん、鈴之介は何の事か分かんねーって。聞いても無理っしょ?」
「ゴルゴさんは黙ってて下さい!」

「でもさ…」
「シャーラップ!」
「はい…」

(なんかおかしくね?これってどういう状況なんだろ…?さっぱり分かんねーし…
つうかなんか俺だけ仲間外れっぽいと思うのは気のせい…?)
「でもそうですよね、まさか鈴之助さんがあんな野蛮な場所へなんか行きませんよね。
私ったらなに変な事聞いてるのかしら(笑)あらやだ、冷めちゃったわ」

「だけどあんな場所へ行く人の気が知れませんわ~
まあ、鈴之介さんは絶対に絶対に絶対に行かないでしょうけど!」
「でも案外分かりませんよね。男なんて所詮、優しくて紳士そうなツラしてても、
お色気ムンムンのアッパらパーの女性に誘われたりなんかしたら…」

「ああ汚らわしい!」
「いまツラっていったよね…アッパラパーっていったよね…」

(沙織ちゃんがなんかおかしい…)
「やだ!私ったら(笑)鈴之介さんはそんな訳は絶対に絶対に絶対にないのに!」

「そうですよね、鈴之介さん?」
「え…ええ…まあ……」
「まあ、私ったらお茶もお出ししないで、ごめんなさい(笑)つい話に花が咲いてしまいましたわ!
喉が乾きましたわよね」

「そう言えば美味しい紅茶があるんだったわ!私大好きですの!まだまだお喋りしたいし、
お二人共もちろん、飲みますよね?」
「いいえ…」


「結構です…」しろ目(笑)
「はあ…なんか息がつまった…。それにしても沙織ちゃん、なんか変じゃね?
怒ってるって言うかさ。前にも増して迫力あったよな。いったいどうしたんだ?」

「それにいやにピンク色の建物の事も気にしてたしよ~なんでだろうな…。
おい…鈴之介?俺の話聞いてる?」
「おい…お前顔面蒼白だぜ?大丈夫か?」
「だ、大丈夫です…ちょっと寒くて…」

「それにしてもお前がデートとはな。で、どこで捕まえたの?」
「え…」
「お見合いとか?」
「い、いえ…そんなんじゃありません…。か、彼女とはその…前に街で会って…食事を一緒に…」

「え?まさかナンパ?まっじ~~」
「ナ、ナンパなんてそんな軽薄な…」
「だってその女とは初めて会ったんだろ?」
「まあ…そうですが…」

「それをナンパって言うんだよ」
「で、ですから…させ子さんとは…そんな…」
「させ…子?もしかしてその女の名前、させ子って言うのか?」
「はい、そうですが?」


「ぶーーーーーーーーーーー!させ子だってよ、させ子!
マジかよ~!親もよくそんな名前つけたよな(笑)どんな女か見てみて~~」←お前は見てる
「な、何がそんなにおかしいのですか?」
「だってお前、させ子だぜ?いや~~笑った(笑)」

「べ、別におかしくないのでは?」
「本気で言ってんの?どうみてもおかしいだろ~よ~(笑)」
「まあ、いいや。ところでさ、沙織ちゃんも言ってたけど、そのピンク色の建物?
お前、ほんとに知らないの?」

「え!?」
「はは~~ん…お前実は知ってんだろ?ムッツリスケベだもんな、お前」
「し、しっけいな!ぼ、僕は…」
「あ、もしかしてデートの後、その女とそこへご休憩に行っちゃったりなんかしちゃって?」

「な、なななな 何を言うのですか!?」
「うわ~~~マジかよ~~」
「ゴ、ゴルゴさん!な、なにを根拠にそんな事を言うのですか!僕は不愉快です!」
「だってお前のその態度、どう見ても変だろ?」

「なあ、別にいいじゃん、行ったって。お前だって健康な男子なんだしさ。で、行ったんだろ?」
「ぼぼぼぼぼぼ、僕はそんな場所へは!」
「ぶは!ぜって~行ったね。賭けてもいい」
「ぼ、ぼくは…僕は…」

「行ったんだろ?」
「ぼ、僕は行って…行って…」
「そ、そんな派手なベットがある所へなんか行ってましぇん!不愉快だ!失礼します!」
「ぶは!」


「ぷぷっ……しぇんだってよ、しぇん…」
「益々相手の女、見てみてーよな…。どんな女だよ?」


「ビ~~ン~~ゴ!」
ゾク…
「いま一瞬…寒気が…」

「気のせい…?」
続き、第46話へ 「通り過ぎる過去」
二度目の恋…タイトル一覧は 「こちら」
ストーリー別一覧は 「こちら」
-翌朝-

コンコン…
「おはようございます」
コンコン…
「亮様、起きていらっしゃいますでしょうか。朝食の準備が出来ております」

「亮様?」
このみから突然の別れを言い出された亮。
まだ信じられない、彼女があんな事を言うなんて。

夕べは一睡も出来ずに、ただ呆然と冷え切った部屋の中で固まっていた。
心も体も動かない。時間の感覚さえ分からなくなっていた。
カチャ
「おはよう、起きてるよ。悪いけど食欲がないんだ。朝食はいらない」
「ですが…」

「ごめん、本当に食いたくないんだ」
「そうですか…かしこまりました…」
彼女が言った事は本当なのだろうか?
今までの俺への気持ちは憧れだったと?前の男と別れたせいで淋しかっただけだと?

挙句の果て、その男からプロポーズされたからヨリを戻すと?
今まで俺と二人で過ごした日々は何だったのか。すべて偽りだったのか?
いいや、違う!彼女の俺へ向けたあの眼差しには愛が感じ取れた。
偽りなんかじゃない、本物の愛が確かにそこにあった。

何か事情があるのかも知れない。
俺がサンセットバレーで一からやり直す事に不安を感じていたのだろうか…。
そうだ、ルビーの事で全財産を投げ打とうとしてる事に不安があってもおかしくはない。
俺は一人で突っ走り過ぎてしまったのかもしれない…。

いずれにしろ、何らかの理由があってあんな事を言い出したに違いない。いったい何なんだ?
それとも…まさか本当に彼女はあの男と…?
ああ…結局そこにたどり着いてしまう。何度考えても行き止まりだ…。
亮の頭に繰り返し同じ事が消えては浮かんでいた。

結局最後には一番認めたくない答えに行き着くのに、
自分でも呆れる程、考える事をやめられない。息が詰まりそうだ。
もう分からないよ…。何故、突然あんな事を言いだしたのか…。

俺には君が分からないよ…。
ツルルルルル…
ツルルルルル…

「ただいま出かけております。発信音の後に…」
(電話……亮さんかな……)

なんて…まさかね…。あんな事言ったんだもん…。彼から電話がくるなんてありえない…。
一方、亮に別れを告げ、やっとの事で家に帰り着いたこのみ。
このみも亮と同じように、夕べは一睡も出来ないでいた。

寝たら最悪な夢を見る事は分かっていたからだ。
もっとも、ベットに入ったところで睡魔がやって来るとは到底思えなかったが。
目を閉じると、夕べの彼の悲しそうな顔ばかりが目に浮かぶ。
彼のあの、驚きと衝撃の顔。

そして「お先に…」と言った時の失望の声。その事を思い出すと自分が許せなくなる。
ああ…彼を傷つけた自分をこの世から無くしてしまいたい。
だが…いくらそう思っても、ああするしかなかったと思っている。
彼を納得させるためにはあの方法しかなかったからだ。

普通の理由じゃ彼は絶対に引き下がらない。
そう、もし時間が戻って、また同じ場面に差し掛かっても同じ事をしたに違いない。
もうすべてが終わったのだ。この先、前の男へ走った私を彼は決して許しはしないし、
そしてあの力強い腕に私を抱き寄せる事も二度とない…。


ツルルルル…
ツルルルル…
「………」

「雪が止まないな…」
「変だな…」


「なんだ?どうした?」
「このみよ…この間から何回電話しても電話に出ないって言ったでしょ?
あんまりにもおかしくない?携帯も家の電話も出ないのよ?」

「そうだな…。だけど彼氏でも出来てデートとかで忙しんじゃねーのか?」
「まさか。彼が出来たなら私に真っ先に言うはずよ…」
「あ、分かった。お前、絶交されてっとか?」
「なんで私が絶交されんのよ?」

「俺のせいでさ。まだ俺を忘れられなくて、お前と話したくないわ~みたいな?」
「あ~~それはないない、ありえない。ジーンの事なんてと~っくに忘れてるわよ」
「へいへい、さいですか…。 なあ、ところでさ…今月……あった?」
「何が?」

「何がってお前……毎晩頑張ってる証だよ。俺らのベイビーさ♪」
「残念でした。いま、まさにそれ」
「げ~っ…」がっくり
「なにその大袈裟な肩の落としよう」

「だってしたら今晩…」
「なにが今晩よ、ジーンの頭にはそれしかないの?」

「だってだって俺朝っぱらから…
うなぎとスッポンと山芋と納豆、もりもり食べちゃった…元気いっぱいなの…」
「ばっかね~(笑)」
「ふ、風呂でやる…?」

「ば~か(笑)」
「と言うかさ、ジーン、なんか間違えてんじゃない?」
「あ?」

「放出する場所よ!」
「ば、ばか!いくらなんでも間違えるか!」
「だってさ~こ~んなに頑張ってるのにさ~」
「ま、まさか…いくらなんでも…」

「な~んて冗談よ(笑)ジーンったら本気にしちゃって(笑)」
「な、なんだ…冗談かよ…り、リンダちゃんたらぁ~あはは…はは…は…」
「さて、お昼の買い物でも行って来るわね」
「お、おう…」


「………」
ピッ


「もしもし唐沢?俺…ジーン…。あのさ…医学的にちょっと聞きたい事が…」
「うん…その…あ、穴の位置関係…につい…て…ゴニョ…」
「位置関係?ってなんだ今更。ピーチボーイでもあるまいし(笑)」


「いいから黙って答えろよ!あのよ…あれはやっぱさ…前…だよな?」
「あったりめ~だろ~!そんなもんおめ~前に決ま…あ、こら!そこに穴掘んな!」


「え?」
「こらこらこら!そこはダメ!
その雪の下には、せっかく俺の可愛い可愛い嫁さん(稲子)が作った花壇があるの!」


バウ?
「いいか、よく聞け。掘るなら後ろだよ!後ろ!分かったか、ボケ~~!」


「な、なんかよく聞こえないんだけど…。お前いま後ろって言った?
って…おいおい…いくらなんでもそれはちが…」
「ああーーーダメダメ!前はダメだっつーの!さっきから後ろって言ってるだろ~が!
お前は前と後ろも分かんないのか!怒るぞほんとに!」


「バウ~~」
「いや…唐沢…だからな、それは後ろじゃなくて前だろ…やっぱり…。でしょ?」


「いいや!前じゃなくて後ろ!」きっぱり
「そうそう…いいぞ~後ろだぞ~~バックだバック…カモ~ン…」

「バウ!」
「嘘…」


「わりーわりーうちのバカ犬がよ……ジーン?」
ツーツーツー
「切れちまった…」

「あれ?ひょっとしておれの出番って…これだけ?」
ヨロ…
「まさか俺…マジで間違えてた?い、医者のアイツが言うんだ…間違いねー…俺とした事が…。
と言うか俺の今までの人生ってなんだったんだ?違う場所で喜んでる俺って…」

「まいったな…後ろが正解とは。赤ん坊が出来ないはずだ。
この先、いきなり方向転換できるのか、俺! と、言いつつ、ちょっとワクワクだけど…」おいおい…
「しかしな…リンダになんて言い訳したらいいんだよ…実は今までのは間違ってて、
本当は後ろでした、な~んて言ったらアイツ、ぜってーキレそう…」

「いや、無理無理、間違ってもそんな事は言えない。しょ~がね~…
こうなったら知らんフリして後ろに転換するしかねーよな…。大丈夫だろ…きっとアイツ…」
「気付かないよね?」気付くよ、おたんこなす!(笑)


(リバービュー)
「う~~さみ~~なんだこの寒さ。凍えちまうぜ…まったく…」

「んだよ…しけってるじゃんか~~火~つけよ!このやろ~~!」
ローリーが電話に出ない事にイライラしているゴルゴ。もはやイラつくというよりはムカつきに近い。

なんで電話に出ないんだ?いくらあの時、ちょっと言い合ったからって、これはないだろう?
こんなに毎日毎日電話してるのに…
毎日酒をかっくらってベットに入ってもちっとも眠れない。無理やり寝ようとしても、
すぐにローリーとの、あの悩ましい一夜の事ばかり思い出し、かえって興奮する始末。

このままだと俺は寝不足で死んでしまう!
「くそ!」


ゴルゴは気がつけば、そこらへんにあったGパンを履き、上着も着ないで外に飛び出していた。
そしてやって来たのはもちろん、ローリーが住んでるアパートの前。
ゴルゴは直接ローリーをとっ捕まえようとタクシーを飛ばしてやって来た。

「このやろ~…さみーじゃねーか…」
よ~し…今日こそはアイツにちゃんと言うぞ。
まずは穏やかに話し合ってだな…そんで俺の気持ちを言えばいいんだよ…だろ?

こう言う時はあれだな、ごちゃごちゃ言わねーでズバリと言った方が早えーな。
そうだ…俺はお前がだな…その……す…す…す…すき…
「やき…」

ちゃうちゃう、そうじゃねーし…。じゃなくて、俺はお前が…す…す…す…
「すき…」

「ゴルゴさん!」
「わ!びくった~」
「どうしたんですか?こんな朝早くに?」

「ど、どうしたってその…さ、沙織ちゃんも早くからお出かけ?」
「ええ、私最近、ジョギングを始めたんですよ。ちょっと太り気味で(笑)」
「あ!ひょっとしてゴルゴさん、ローリーさんに会いにいらしたんですね?」
「え!?あ…えっと…まあ…その…べ、別にそういう訳じゃ…ゴニョ…」

「隠さなくてもいいですよ(笑)」
「いいですよって…(ずいぶん明るくね?)」


「上着も着ないで寒くないんですか!」
「さ、寒いね…確かに…」
「そうだ…俺さ、君に言わなければならない事があったんだ…」
「私に?」

「うん…。ほら…この前会おうって約束しただろ?あの時話そうと思ったんだけど…」
「そうだ!私ったらごめんなさい!あの時はすっぽかしてしまって…」
「いや、いいんだ、それはもう…。んでさ…その…」
「ゴルゴさん、私もういいんです」

「え?もういいって…何が?」
「私に言いたい事の内容ならもう、分かってますから。
あの日、ゴルゴさんが私に何を言おうとしてたのか、本当はとっくに察してました」

「だけどそれを受け止めるのが怖くて…」
「悪あがきしちゃったんです、私(笑)
でも もう大丈夫です。私のゴルゴさんへの恋は終わったんだと…ちゃんと分かってますから…」

「沙織ちゃん…」
「私、ゴルゴさんには感謝してるんですよ」
「俺に?」

「はい。あんな気持ち、生まれて初めてでした。とても不思議な感覚。
ドキドキして息苦しいのに、何故か体は妙に興奮しちゃって…今にも空高く飛べそうでした…」
「そして普段なら出来ない事も、全部出来そうな気がしました。
だから出来たんです、あたなに好きと伝える勇気が」

「あれが恋なんですね…。とても熱くて切なくて。
きっとこれから先、あんな感覚を味わう事は二度とないかもしれません」
「いや、そんな事はないさ。
また人を好きななれば、同じように熱くなるよ。大丈夫、俺が保障する」

「ほんとですか(笑)
なら私、ゴルゴさんが保障してくれる事ですし、もう一度 恋をしてみようかな(笑)」
「うん(笑)」
「わ!大変!ゴルゴさん、早くローリーさんのお部屋に行ったらどうですか。凍えちゃいますよ!」
「あ…ああ…まあ、そうだな…うん…じゃ…ローリーのところへ…」

「早く行ってあげて下さい(笑)」
「う、うん…」
「あれ?お二人とも、こんな朝早くからどうしたんですか?」


「よう、鈴之介じゃねーか」
「ゴルゴさん…寒くないんですか…そんな半袖で…」
「うるせーよ…」

「風邪ひきますよ?」
「お、ちょうどいいや。
お前のそのマフラー…さぞかしぬくいんだろうね…俺にちょっとそのマフ…」
「あ!分かりました!」
「聞けよ…。だからちょっくらそのマフラー…」

「ゴルゴさんは沙織さんに会いにいらっしゃったんですね!」
「はい?」
「僕は野暮だな~~(笑)すみません、お邪魔してしまって」
「何言ってんだよ…とんちんかんな事言ってんじゃねーよ…。だいたい、俺と沙織ちゃんはだな…」

「隠さなくてもいいじゃないですか!もしや照れてるんですか?(笑)」
「そうじゃなくって…」
「ええ、そうなんです!ゴルゴさんったら私に会いに朝早くから来てくれたみたいなんですよ!」


「あ?」
「いや~うらやましいな~!銀世界の中でのデートとは、なんとロマンチック!」
「なにがロマンチック…。お前ね、さっきから言ってる事がおかしいんだよ…。あんな…」

「ええ!ゴルゴさんったら本当に素敵ですよね!」
「さ、沙織ちゃん…?」
「そうだわ!これから私、パンケーキを焼こうと思ってたんです!
よかったらお二人ともいかがですか?」

「そんな!お二人のお邪魔するほど僕も野暮じゃありませんよ(笑)」
「まあ、何をおっしゃってるんですか!遠慮なさらず!」
「ゴルゴさんも中へどうぞお入りになって!」

「あの…もしもし?沙織ちゃん…俺はね、ローリーの所へ…」
「沙織さん、お気持ちは嬉しいですが、僕はほんとうに…」

「いいえ、鈴之介さんもどうぞ中へ。私達の事ならお気になさらないで下さい。
そんな事で気を悪くするゴルゴさんではありませんので」
「そうですよね!ゴルゴさん!」

「え?あ…はい…」
(じゃなくて…何言ってんだ…俺…)

(な…なんかこれ…おかしくね?)
「さあ、どうぞ召し上がって下さいね♪」


(これって何かの罰ゲーム?)
「申し訳ありません…せっかくのお二人の時間をお邪魔してしまって…」
「いや…だから俺と彼女は…」

「でもお二人は結局うまくいったようですね!
こうしてゴルゴさんが訪ねて来られるぐらいですから。僕も安心いたしました」
「ちょっと俺の話聞けって…だからな、鈴…」
「はい、うまくいってます」

「うふふ…。ゴルゴさんってとっても優しいんですよ。私…とっても嬉しいです…」
こらこら…何言っちゃってんの?

「さ、沙織ちゃん…あのさ…さっき…たった今…その…言ったよね…?」
「ゴルゴさん、又二人でデートしたいですね♪」

「ねっ言われても…。そう言う話じゃなくてね…ほら…さっき君…言ってたよね?俺との恋は…」
「デートと言えば…」
「って…俺の話聞いてる?ね、聞いてる?」


「鈴之介さんもつい先日、素敵な女性とデートしたんですよね?」
「え…」
「この間嬉しそうに出かけていったじゃありませんか…。前にお会いした方とデートすると…」

「あ、ああ…ええ…まあ…」
「え?鈴之介、そんな女いたの?」
「ええ…一応…」

「へ~~なんだよ、案外やる事やっちゃってんじゃん」
「ぼ、僕はやる事なんて…」
「ええ、そうですね。やる事やっちゃってますね」

「さぞかし素敵なデートだったんだろうと思いますわ…」
「で、どこ行ったの?あ、お前の事だから、公園でお弁当広げて~てか?」
「いいえ、きっとお花がいっぱいある、素敵なレストランに行かれたのでは?」

「いやいや、鈴之介だもん。ぜって~公園でお子ちゃまデー…」
「いいえ、絶対にお花がたくさん、たくさんあるレストランに行かれたと私は思いますわ!」

「そしてその後はお二人でクスクス笑ったりクスクス笑ったりクスクス笑ったりなさったのでは!?」
「な、何故それを…」

「女の第六感ですわ!」キッパリ
「ほ…ほ~お前にしては中々じゃん…」

(なんだか沙織ちゃん…前よりも数段に迫力が増してると思うのは俺だけ?)
「ま、まあ…中々楽しいデートでした…。あ、あの…僕の話しはもうこのへんで…」
「その後はどうなさったのですか?」

「え…」
「その後です。どこへ行かれたのですか?」
「え、えーと…そ、その後は…そのまま公園を歩いて…」

と、トボケル鈴之介
「ま、いいじゃん。お前のデートコースを聞いてもな~」


「そういえば…]
「最近、町の外れでどピンク色の建物を見かけました。ゴルゴさんはご存知ですか?」
「どピンク色?そんな建物あったっけ?」

「ええ、あります。と~っても派手でケバイ建物なんですよ!」
「派手でケバイか…。としたらその建物はアレっしょ?」
「そうアレですね」
「え?沙織ちゃん、あれって分かってんの?ね、分かってんの?」

「あんなピカピカしてていやらしい…」
「いやらしいって…あ、知ってんだ?ね、知ってんだ?てかさ、俺の話し聞いてる?」
「あれは何をするところなんでしょうね?鈴之介さん?」←聞いちゃいねー
「え!」ギクリとする鈴之介


「ぼ、僕に聞かれても…」
「あ~ダメダメ。鈴之介に聞いても無理ってもんよ。絶対に鈴之介は利用しそうにない所だもん」
「そうでしょうか?そう決め付けるのは失礼じゃありません?」

「失礼?いや…だけどさ…あの建物は…だから沙織ちゃん、あの建物の意味は…」
「ゴルゴさん、あなたも利用した事があるんじゃありません?」
「お、俺はあるって言うか…昔の事って言うか…
で…でもでも俺はそんな趣味の悪い、どピンク色でいかにもっつーラブホは…ゴニョ…」
「あるんですか!ないんですか!」

「あります!」何故か敬語のゴルゴ(笑)
「それなら鈴之介さんだって利用しますよ」
「そうですよね?鈴之介さん?」
「ぼ、僕は!」

「僕は、何ですか?」
「ぼ、僕は…なんの事か…」
「沙織ちゃん、鈴之介は何の事か分かんねーって。聞いても無理っしょ?」
「ゴルゴさんは黙ってて下さい!」

「でもさ…」
「シャーラップ!」
「はい…」

(なんかおかしくね?これってどういう状況なんだろ…?さっぱり分かんねーし…
つうかなんか俺だけ仲間外れっぽいと思うのは気のせい…?)
「でもそうですよね、まさか鈴之助さんがあんな野蛮な場所へなんか行きませんよね。
私ったらなに変な事聞いてるのかしら(笑)あらやだ、冷めちゃったわ」

「だけどあんな場所へ行く人の気が知れませんわ~
まあ、鈴之介さんは絶対に絶対に絶対に行かないでしょうけど!」
「でも案外分かりませんよね。男なんて所詮、優しくて紳士そうなツラしてても、
お色気ムンムンのアッパらパーの女性に誘われたりなんかしたら…」

「ああ汚らわしい!」
「いまツラっていったよね…アッパラパーっていったよね…」

(沙織ちゃんがなんかおかしい…)
「やだ!私ったら(笑)鈴之介さんはそんな訳は絶対に絶対に絶対にないのに!」

「そうですよね、鈴之介さん?」
「え…ええ…まあ……」
「まあ、私ったらお茶もお出ししないで、ごめんなさい(笑)つい話に花が咲いてしまいましたわ!
喉が乾きましたわよね」

「そう言えば美味しい紅茶があるんだったわ!私大好きですの!まだまだお喋りしたいし、
お二人共もちろん、飲みますよね?」
「いいえ…」


「結構です…」しろ目(笑)
「はあ…なんか息がつまった…。それにしても沙織ちゃん、なんか変じゃね?
怒ってるって言うかさ。前にも増して迫力あったよな。いったいどうしたんだ?」

「それにいやにピンク色の建物の事も気にしてたしよ~なんでだろうな…。
おい…鈴之介?俺の話聞いてる?」
「おい…お前顔面蒼白だぜ?大丈夫か?」
「だ、大丈夫です…ちょっと寒くて…」

「それにしてもお前がデートとはな。で、どこで捕まえたの?」
「え…」
「お見合いとか?」
「い、いえ…そんなんじゃありません…。か、彼女とはその…前に街で会って…食事を一緒に…」

「え?まさかナンパ?まっじ~~」
「ナ、ナンパなんてそんな軽薄な…」
「だってその女とは初めて会ったんだろ?」
「まあ…そうですが…」

「それをナンパって言うんだよ」
「で、ですから…させ子さんとは…そんな…」
「させ…子?もしかしてその女の名前、させ子って言うのか?」
「はい、そうですが?」


「ぶーーーーーーーーーーー!させ子だってよ、させ子!
マジかよ~!親もよくそんな名前つけたよな(笑)どんな女か見てみて~~」←お前は見てる
「な、何がそんなにおかしいのですか?」
「だってお前、させ子だぜ?いや~~笑った(笑)」

「べ、別におかしくないのでは?」
「本気で言ってんの?どうみてもおかしいだろ~よ~(笑)」
「まあ、いいや。ところでさ、沙織ちゃんも言ってたけど、そのピンク色の建物?
お前、ほんとに知らないの?」

「え!?」
「はは~~ん…お前実は知ってんだろ?ムッツリスケベだもんな、お前」
「し、しっけいな!ぼ、僕は…」
「あ、もしかしてデートの後、その女とそこへご休憩に行っちゃったりなんかしちゃって?」

「な、なななな 何を言うのですか!?」
「うわ~~~マジかよ~~」
「ゴ、ゴルゴさん!な、なにを根拠にそんな事を言うのですか!僕は不愉快です!」
「だってお前のその態度、どう見ても変だろ?」

「なあ、別にいいじゃん、行ったって。お前だって健康な男子なんだしさ。で、行ったんだろ?」
「ぼぼぼぼぼぼ、僕はそんな場所へは!」
「ぶは!ぜって~行ったね。賭けてもいい」
「ぼ、ぼくは…僕は…」

「行ったんだろ?」
「ぼ、僕は行って…行って…」
「そ、そんな派手なベットがある所へなんか行ってましぇん!不愉快だ!失礼します!」
「ぶは!」


「ぷぷっ……しぇんだってよ、しぇん…」
「益々相手の女、見てみてーよな…。どんな女だよ?」


「ビ~~ン~~ゴ!」
ゾク…
「いま一瞬…寒気が…」

「気のせい…?」
続き、第46話へ 「通り過ぎる過去」
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